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第二百三十八話

「ふむ……。話を続けてもよろしいでしょうか?」


「ええ、お願いします」


 エルフ、単語を聞いて機嫌を悪くしたアルハレム達を前にコシュがやや強引に話を進めようとすると、魔物使いの青年も異論はなく頷いてみせた。


「エルフの協力により魔物に絶対の命令を下せるようになった開祖の兄は、その命令を少し前に申し上げた仲間になった魔女にも使ったのです。そしてその魔女は『相手の力を強化する』という希少かつ強力な特性を持っており、どれくらい強力かと言うと強化された相手は輝力を使った戦乙女のように飛躍的に力が強くなったそうです」


「っ!? それは……!」


『…………………………!?』


 コシュの話に出る魔女の「希少かつ強力な特性」にアルハレムが思わず驚いた声を上げ、仲間達が絶句する。今聞いた魔女の能力は、魔物使いの青年がサキュバスの魔女の種族特性を使って、男の身でありながら輝力を使う方法によく似ているように思えたからだった。


「あの……ツクモさんはこの話を知っていましたか?」


「にゃ~、申し訳ないでござるがツクモさんも初耳でござるよ。というかシン国に冒険者がいたという話自体初耳なのでござる」


「それはそうでしょうな。何しろ開祖の兄は十の試練を達成する前に命を落し、その活動の記録は成鍛寺と一部のエルフの者達が徹底的に隠蔽しましたからな」


 ヒスイがこのシン国で生まれ育ったツクモに今までの話に聞き覚えがないか聞くと、猫又の魔女は申し訳なさそうに首を横に振り、コシュがそれを当然とばかりに頷いてから話を再開した。


「開祖の兄は魔女の特性を使って従えた魔物を強化し、その力をもってクエストブックに記された試練を短期間で八つまで達成いきました。仲間にした多くの魔物が犠牲になった点を除けば開祖の兄の旅は順調でした。しかし……」


 元々話していて気持ちのいい話ではなかった為、渋い顔をしていたコシュがそこで苦い表情となって話を一旦止めて、それを見たアリスンが話の先の展開を察して口を開いた。


「ああ……。つまり『キレた』って訳ね。その話の魔女が」


 アリスンの言葉にコシュが苦い顔を更に苦くして頷く。


「……はい。いくら命令に絶対服従となっても心が死んだ操り人形になったわけではなく、開祖の兄に道具として使われる度に魔女は、憎悪や悲しみといった負の感情を溜め込んでいってついには怒りに狂い暴走してしまいました。

 暴走した魔女は自分と同じ開祖の兄に支配された魔物達を強化……いえ、『狂化』すると狂化された魔物達は、神術による支配をはね除けて開祖の兄とエルフの協力者を肉の一片も残さず食い殺したそうです」


 魔物使いの冒険者が自分の従える魔物達によって食い殺される。


 それはある意味最悪と言える最期であるが、コシュの話を聞いていたアルハレム達は「自業自得」という感想しかなかった。

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