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第二百三十五話

「ここにもあるんだね。この像……」


 アルハレムの一行は「依頼について詳しい話がしたい」というコシュに成鍛寺の本堂へと案内されると、本堂でも女神イアスの像が奉られているのを見たシレーナが呟いてウィンがそれに同意した。


「そうみたいだね。……それにこの像、外にあった像よりずっと価値がある『お宝』のようだね」


 ウィンの種族であるワイバーン、というかドラゴンに属する魔物は全て他者の欲望が集まりやすい価値のある物を集める習性と、それを正確に嗅ぎ分ける第六感とも「勘」を持っている。その彼女の勘が、この本堂に奉られている女神イアスの像がかなりの価値があるものだと言っているのだ。


 ワイバーンのドラゴンメイドの言葉にアルハレム達も興味を覚えて女神イアスの像をよく見てみる。


 本堂の女神イアスの像は大きな石を削って造られた石像で、言われてみれば全体から細かいところまで丁寧な仕事がされている製作者の熱意が伝わってきそうな像であった。


「ほほぅ。やはり分かりますか」


 コシュが女神イアスの像を「お宝」と言われて嬉しそうに顔を綻ばす。


「この女神イアス様の像はその昔、成鍛寺の開祖の元で修行をしていた一人の高弟によって造られたものなのです。その方は女神イアス様の信仰に目覚めるまでは腕のよい石工だったらしく、女神イアス様の信仰に目覚めたきっかけは……」


「あ、あのっ!」


 このままだと話が長くなると思ったアルハレムは慌ててコシュの話を遮った。


「あの……コシュさん? その話はまた後日聞きますので、そろそろ依頼についての詳しい話を聞かせてもらえませんか?」


 コシュは猫又一族の隠れ里に来た時、今回の依頼が最近シン国で起こっている魔物の凶暴化に関係していると言った。


 しかしコシュの依頼と魔物の凶暴化がどのように関係しているのか、コシュは「依頼を受けてこの場所に来るまで話せない」と言った為、アルハレム達は依頼の詳しい話を聞けなかったのだ。


「むっ……。そうでしたな。これは失礼した」


 アルハレムに言われてコシュは嬉しそうな表情から一転して真剣な表情になると、魔物使いの青年達の前で姿勢を正してまずは頭を深々と下げた。


「皆さま方。まずは拙僧のお願いを承けていただき、この様な場所までご足労頂きありがとうございます。正直な話、『詳しい話を話さずに力を貸してほしい』等という身勝手なお願いを聞いていただけるとは思ってもいませんでした。このコシュ、成鍛寺を代表して皆さま方に深い感謝を申し上げます」


「いえ、そんな事は……」


「そしてこれはまた大変身勝手な話で恐縮なのですが、ここから話す話はこの成鍛寺の恥部ゆえ、出来ることならば外での公言はしないでもらえないでしょうか?」


 コシュにそう言われたアルハレムは仲間達を見渡して、彼女達全員が頷いたのを確認してから返事をした。


「分かりました。ここで聞いたことは誰にも言いません。ですから話してもらえませんか?」


「はい……」


 アルハレムの言葉にコシュは僅かに安堵の息を吐いた後、重々しく口を開いた。

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