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第二百三十二話

 魔物使いの冒険者アルハレムとその妹アリスン、そしてリリアを初めとする彼が従える魔女達の一行は、基本的に何時でもどんな所でも全員で寝食を共にしている。


 普通、冒険者や行商人のように各地を旅をしていて街で寝泊まりするより野宿をする方が多い者達の一行は、食事や睡眠の時には獣や魔物、あるいは野盗の襲撃を防ぐために交替で見張り役を立てるものである。しかしアルハレムの一行は、メンバーのほとんどが並の獣や魔物を遥かに上回る危険察知能力と不意の襲撃にも充分対抗できる戦闘能力を持つ魔女な上、移動手段が世界に二つともない空を飛ぶ帆船という規格外な一行であるため、そのような常識はあてはまらなかった。


 そしてこの冒険者の一行で朝、最初に目覚めるのは決まって一行のリーダーである魔物使いの青年だった。


「……ん。………。……………はぁ」


 コシュの来訪の翌日。いつも通り仲間達の誰よりも先に目を覚ましたアルハレムは、少しの間をおいて寝ぼけていた頭をハッキリとさせると自分の周囲の惨状にため息を吐く。


 今アルハレムがいるのはエターナル・ゴッデス号にある彼の寝室……いや、正確に言えば「彼ら」の寝室であった。寝室は十人以上の大人が眠れる巨大な寝台が部屋の四分の三を占めていて、寝台の上には魔物使いの青年とその仲間達が全員何も身に付けていない全裸で眠っており、寝台の下には十一人分の衣服が散乱していた。


 更によく見れば寝台で眠っている十人の魔女と戦乙女は、全身を何らかの液体で汚したなんとも言えない色香を漂わせる姿で恍惚とした寝顔を浮かべている。これだけを見れば昨夜、この寝台の上でどの様な光景が広がっていたか想像に固くないだろう。


「……………はぁ」


 しかしそんな夢のような時間を独占していたアルハレムはただ疲れきった表情で二度目のため息を吐く。


「昨日は酷い目に遭った……。危うく色々な意味で干からびるところだった。全く、皆ももう少し加減をしてくれって……まあ、調子に乗った俺も悪いんだけどさ……」


「ふふっ♪ おはようございますアルハレム様♪」


「おはようございますご主人様。……あっ!?」


 アルハレムが「色々」の部分に力を込めて愚痴を言っていると、いつの間にか起きたリリアとレムが挨拶をしてきた。そしてその時にサキュバスの魔女は、魔物使いの青年の背中に自分のたわわに実った乳房を押し付けて「ふわぁ~、朝からアルハレム様に奉仕できるなんて幸せですぅ」と甘い声を出し、それを見たゴーレムの魔女が短く羨むような声を上げる。


「おっ!? ……って、リリアとレム? おはよう。もう起きたんだ? と、というかリリア? そろそろ離れろよ」


「はい♪ 嫌です♪」


 むき出しの背中に伝わってくるもはや馴染み深いと言ってもいい柔らかな感触にアルハレムが若干興奮を覚えながら言うと、言われたリリアは笑顔を浮かべて即答し、それどころか更に密着して魔物使いの青年の背中に押し付けていた巨乳を変形させる。


「嫌ですってお前……」


「それよりもアルハレム様? 先程の愚痴を聞かせてもらいましたけど加減だなんてできるはずがないじゃないですか? 私達、この一月の間ずっと欲求不満だったのですよ? それが昨日ようやく解禁になったのに我慢なんてできませんよ」


「そうですね」


 アルハレムの抗議を一切無視してリリアが自分の主にどこか咎めるように言い、それを聞いていたレムが頷いて同意する。


 この一月以上の間リリア達魔女は、使用者の【生命】を回復する猫又一族秘伝の薬草が切れたせいで一晩につき一人しかアルハレムと肌を重ねることができなかった。それが交わった異性の【生命】を吸い取る魔女共通の特性から魔物使いの青年を守るためだとは分かっているのだが、それでも自分達の主に平等に愛される生活を知ってしまったリリア達にとって今日までの一ヶ月は生殺し以外の何物でもなかったのである。


 その為、昨日ようやく新しい猫又一族の薬草を補充できたリリア達は夜、狂ったようにアルハレムを求めた。今までの欲求不満を解消するべく魔物使いの青年の上で腰を振るう魔女達の勢いはかつてないくらい激しく、その激しさは兄を思うあまり毎晩同じ寝台に入るアリスンでさえ思わず気圧されるほどであった。


「リリア。お前の言いたいことも分かるけど、それでも昨日みたいなのが続いたら俺の体もせっかく補充した薬草も持たないって」


 アルハレムが昨夜のリリア達との交わりがあまりにも激しすぎた為、昨夜の内に補充した薬草を大量に消費したことを言うと、サキュバスの魔女とゴーレムの魔女は心配しなくてもいいと首を振る。


「大丈夫ですよ。皆、溜まった欲求は解消できましたし、昨日のような無茶苦茶はしませんって。それに薬草の方も大丈夫ですから。ねぇ、レム?」


「はい。実は一月前に薬草の種を分けてもらってエターナル・ゴッデス号の空き部屋を使って栽培をしているんです。ですからこれからは薬草が切れることはないと思います」


「……え?」


 リリアに話をふられたレムが言うと、初耳だったアルハレムが驚いた顔をする。


「薬草の栽培……してるの?」


「はい」


「……前にツクモさんから聞いた話だとその薬草って決まった土地でしか育たない特別なものらしいけど?」


「そこはそれ! 当豪華客船エターナル・ゴッデス号は女神イアス様によって創造された特別なダンジョンですから、それくらい何とでもなります!」


 アルハレムの疑問にレムは両手に手を当てて胸を張り、そのリリアより若干小さいが充分実った乳房を震わせて自慢気に答える。そんなゴーレムの魔女の言葉に魔物使いの青年は、目覚めたばかりの時とは別の意味で疲れた表情となり呟いた。


「……………はぁ。本当、何でもアリだな」

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