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第二百二十話

 猫又一族の隠れ里に訪れた日から数日後。アルハレムは仲間達と一緒に隠れ里の近くにある森に来ていた。


「ふぅ……。こうしていると落ち着くな……」


 森の中にある開けた場所でアルハレムは、リリアに膝枕された状態で横になり安らいだ表情でため息を吐いた。


「アルハレム様……! 私の膝枕が落ち着く、気持ちいい、最高だ、なんて……! やっぱり私がアルハレム様と一番体の相性がいいんですね。……ふふん」


『………………………!』


 アルハレムの呟きにリリアが頬を赤らめて喜び、次に自慢気な表情となって他の仲間達を見る。そしてサキュバスの魔女の視線を受けた仲間達は明らかに不機嫌そうに表情を歪める。


「リリア、変な事を言うな。それに皆も、皆の体も最高に気持ちいいのは分かっているから怒るなって」


 挑発の言葉を口にしたサキュバスの魔女を軽く叱り、不機嫌となった仲間達を若干セクハラが入った言葉で落ち着かせたアルハレム。その様子はとても数ヶ月前まで家族以外の女性とロクに話していない青年とは思えず、大した成長具合である。


 ……最もこれを成長と言っていいのかは疑問であるが。


「それに落ち着くってのはこうして仲間達だけでいるってことだ。……猫又一族の隠れ里にいると気が休まる時なんてなかったからな」


「にゃ~、それは正直すまなかったでござる」


「猫又の皆さん、凄い積極的でしたからね」


 アルハレムの言葉にツクモが申し訳なさそうな表情を浮かべ、ヒスイが苦笑を浮かべながら頷く。


 この数日間、あの猫又一族の隠れ里にいてアルハレムの気が休まった瞬間は皆無と言ってよかった。隠れ里の猫又達はどうやら随分と魔物使いの青年を気に入ったらしく、ことあるごとに彼を誘惑しようとしてきたのだ。


 当然リリア達もそれを全力で阻止しようとするが、猫又達も負けてはおらず巧な話術と連携を持って魔女達を引き剥がし、その隙に魔物使いの青年を誘惑しようとする。その手段は単純に攻めてきたり挑発してきた時もあれば、わざと仲間割れをしたフリなどをして相手の興味を引き付けて罠にはめる等、様々であった。


 極めつけは、隠れ里ではゆっくり出来ないと考えたアルハレム達が自分達の拠点である飛行船のダンジョン、エターナル・ゴッデス号に引きこもった時に、隠れ里でも手練れの猫又が中心となった数名の猫又の集団がエターナル・ゴッデス号に忍び込んできたことだ。これには魔物使いの青年もその仲間達も、怒りや呆れを通り越して感心したぐらいである。


「猫又は逞しい『雄』の匂いには敏感な方でござるからな。そしてこう言ってはなんでござるが、アルハレム殿はこの数ヵ月でツクモさんでも嗅いだことがないくらい逞しい雄の匂いを漂わせているでござる。だから隠れ里の猫又達は是非アルハレム殿とお近づきになろうと今までの修行の成果を存分に発揮したのでござろうな」


「……そんな風に言われてもあまり嬉しくないんですけど? というか修行の成果って何ですか?」


「うむ。猫又一族は人間達から魔物退治の依頼を受けて生計を立てているでござるが、人間達からやってくる依頼には魔物退治以外にも、特定の人物の調査というのがあるのでござる。そういった依頼をこなすために、猫又一族は戦闘技術の他に相手を誘惑して情報を引き出す話術、詐術の修行もするのでござるよ」


「……なるほどね。確かにツクモさんの言う通り猫又達は色んな意味で凄かったですよ? でもその修行の成果は俺達以外の相手に発揮してほしかったですよ。……はぁ」


 リリアに膝枕をされた体勢でツクモと話をしていたアルハレムがため息をつく。彼のため息混じりの呟きは、この場にいる全員が思っている言葉だった。

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