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第二百十六話

「あの、ニタラズさんはヒスイのことを知っていたのですか?」


 一目でヒスイが自分達の待ち望んでいた霊亀の魔女だと見抜いたニタラズにアルハレムが訊ねると、白髪の猫又は笑みを浮かべて頷く。


「はい。ヒスイ様のことはツクモからの文で知らされていましたから。そしてその文によればアルハレム様達のご協力がなければヒスイ様の救出は不可能であったとか。……アルハレム様、私達猫又一族の悲願にご協力頂き、本当にありがとうございました」


「え? いえ、ツクモさん達の目的に協力するのはマスタノート家と猫又一族との昔からの契約なんだし気にしないでください」


 もう一度深々と頭を下げて礼を言うニタラズにアルハレムは戸惑いながら返事をする。そして返事をしながら魔物使いの青年は、目の前にいる白髪の猫又の様子からヒスイが猫又の一族にとって重要な存在である事を改めて理解した。


「と言うかツクモってば手紙なんか出していたの?」


「うい。当然でござるよ。何しろヒスイ殿の救出はこの隠れ里にとって一大事でござるからな」


 アルハレムの後ろでアリスンとツクモが話し、頭を上げたニタラズがその会話を聞いて頷く。


「その通りです。ツクモからヒスイ様が助け出されたという文が届いた時にはこの隠れ里中が歓喜したのですが、まさかこんなにも早くご帰還なされるとは思いもしませんでした。……これは先程空で見かけたあの不可思議な船が関係しているのですか?」


「そうでござるよ、師匠。あの空を飛ぶ船は女神イアスが創造したダンジョンの一つで、アルハレム殿がそこにいるダンジョンのコアである魔女を仲間にしたお陰でこんなにも早く帰ってこれたでござるよ」


「あっ、はい。飛行船エターナル・ゴッデス号の船長を務めているゴーレムの魔女、レムです」


「そうでしたか。それはどうもありがとうございます」


 ツクモとニタラズとの会話に名前が出てきたレムが挨拶をすると白髪の猫又は頭を僅かに下げてそれに返した。


「……さて、立ち話もこれくらいにしてそろそろ霊亀の魔女の方々の所にご案内しましょう。どうかついてきてください」


 霊亀の魔女達はこの山の山頂付近に住居を立てていると説明した先頭を歩いて案内をする。アルハレム達は白髪の猫又の後に続いて行くのだが、そんな一行を興味深く観察する視線が無数にあった。


「凄いね……」


「ああ、猫又の隠れ里だから予想していたけど、実際に見てみると凄いとしか言い様がないな」


 アリスンの呟きにアルハレムが同意する。


『………』


 周りを見回してみるとこの隠れ里で暮らしている何十人もの猫又の魔女達がアルハレム達を見ていた。マスタノート家に生まれて子供の頃から猫又のツクモを見てきたアルハレムとアリスンも、こうして何十人の猫又達を見るのは初めての体験であった。


「そういえばこれをライブが見たらどんな反応をするかしら?」


 ふと思いついたような妹の言葉にアルハレムはここにはいない友人のことを思い出す。


 ライブ・ビスト。


 獣の特徴を持った女性を「ケモノ娘」と呼んでこよなく愛するアルハレムの幼馴染。もし彼がこの隠れ里の光景を目にしたら……。


「……喜びのあまり滝のような涙と汗と流して盛大に鼻血を出して、動物のような奇声を上げながら人間とは思えない動きで躍り狂うだろうな」


「うん……。ライブならそれくらいやるよね」


 ライブがケモノ娘に関わる事になると常識を超えた行動をする事を知っているアルハレムが的確な予想を言い、同じくライブの事をよく知っているアリスンが苦笑しながら頷く。そして二人の兄妹は同じことを心の中で考えた。


(ライブはここに連れてこないようにしよう……)


 それはライブの奇行を見られて猫又達のヒューマン族への評価を下げないための判断であった。

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