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第二百十三話

「そうか……この国がヒスイの故郷か。……そう言えばツクモさん? 外輪大陸にはヒューマン族以外の種族も多くいるって話ですけど、シン国にはどんな種族が暮らしているのですか?」


「にゃ!?」


 飛行船の甲板からシン国を見下ろしていたアルハレムがふと気になったことを訊ねると、猫又の魔女は猫のような声を上げて驚いた。


「いや……、どんな種族が暮らしているか聞いただけなのに、どうしてそんなに驚くのですか?」


「あ~……。それはでござるね……」


 ツクモは目を泳がせて言葉を濁そうとするが、自分の主人であるアルハレムだけでなくこの場にいる仲間達全員の視線が自分に向けられているの感じると、観念したかのように一つ息を吐いて口を開く。


「はぁ……。ここで黙っていてもすぐに分かることだから仕方がないでござるか……。シン国では主にヒューマン族とエルフ族が暮らしているのでござるよ」


「エルフ族?」


「エルフ族……ですか?」


「………」


「エル、フ……」


「エルフねぇ……」


「え、エルフの皆さんがいるのですか?」


 シン国はヒューマン族の他にエルフ族が暮らしていると言うツクモの言葉にアルハレム、リリア、レイア、ルル、アリスン、ヒスイが一斉に表情を曇らせる。特に表情を暗くしたのはヒスイで、霊亀の魔女の表情には怯えの色が見えた。


「マスター、強い嫌悪の感情が感じられますがどうかなさいましたか?」


 アルハレムの腰に差されてあるロッド、インテリジェンスウェポンのアルマが柄尻の宝玉から疑問の声を出した。そして魔物使いの青年を初めとする五人が表情を暗くした事情を知らないレム、シレーナ、ウィン達も怪訝な表情を浮かべており、それに気づいたアルハレムは事情を知らない彼女達に説明をすることにした。


「実はな、ヒスイと俺達の家であるマスタノート家はエルフ族とちょっとした因縁みたいながあるんだよ。

 マスタノート家が治めている領地にはかつて『魔物を生み出す森』と呼ばれる場所があって、マスタノート家はそこかから現れる魔物と戦い続けてきた歴史があるんだ。

 そして魔物を生み出す森は自然にできたものじゃなくて、今から百年以上前にエルフ族が拐ってきた魔女を『核』にして造った人工のダンジョンで、その核にされた魔女がここにいるヒスイというわけだ」


「なるほど……。そういうわけですか」


「エルフ……人類がダンジョンを造るだなんて……」


「でもそれだったら確かにヒスイがエルフを嫌ってもしかたがないか」


「そうだね。百年以上もダンジョンに閉じ込められるなんてアタイだったらとても耐えられそうにないね」


 アルハレムの説明を聞いてアルマ、レム、シレーナ、ウィンが納得して思ったことを口にする。この場にいる全員が今の話からエルフ族に、そしてエルフ族が暮らすこのシン国に対して警戒心を共有し始めたのを感じて、ツクモが苦笑いを浮かべながら口を開いた。


「にゃ~、皆の気持ちも分かるでござるがそこまで警戒しなくてもいいと思うでござるよ? 百年前にヒスイ殿を拐った件でエルフ族は国中から非難されたらしく、今ではすっかり反省して霊亀の一族とも謝罪と和解をしているでござるからな。シン国でエルフ族と出会ったとしても何かされたりはしないでござるよ」


「そ、そうですか……」


 ツクモの言葉にヒスイはまだ若干の恐れを残してはいるが安堵の表情を浮かべ、そんな霊亀の魔女を見て飛行船の甲板にいる全員が警戒心を和らげた。


「……それだったらシン国で行動しても問題は無さそうですね。それでツクモさん、猫又一族の隠れ里はまだ先なんですか?」


「そうでござるね。この飛行船の速度だったら後一時間くらいで着くはずでござるよ」


 アルハレムの質問にツクモは少し考えてから答える。


 猫又一族の隠れ里。


 そこがアルハレム達の今回の旅の目的地であった。

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