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第百九十三話

「……っらぁ!」


 ウィンは気迫のこもった声を放つとともに体を一回転させると、腰に生えている尻尾を目の前の魔物の群れへと向けて横凪ぎに振るった。ワイバーンのドラゴンメイドの尻尾は輝力によって振るわれたのと同時にその長さを通常の何倍もの長さにした。


 輝力で尻尾の長さや強度を変化させて武器のように使うやり方はそれほど特殊ではなく、同じく尻尾を生やしているリリアとレイアも同様の尻尾の使い方をする。だがワイバーンのドラゴンメイドの尻尾の一撃は、サキュバスとラミアの魔女のものとは威力が桁外れに違っていた。


 ボンッ!


 と、何かが破裂する音がしたと思ったらウィンの一撃によって魔物の群れの三分の一が消し飛び、まるで黒い雲のようであった群れの形が上下の二つに分かたれた。しかしワイバーンのドラゴンメイドの攻撃はそれでは終わらなかった。


「まだまだぁ!」


 ウィンは自分が切り開いた魔物の群れと群れ隙間に飛び込むと、隙間を高速で飛びながら上下の魔物を輝力で強化した翼に脚、そして尻尾で攻撃をする。鳥に似た姿の魔物達はワイバーンのドラゴンメイドの攻撃、あるいはそれによって生じた爆風のような風圧で容易く吹き飛ばされていく。


「アタシ、出番ないかもね」


 空の戦いはすでにウィンの独壇場と化しており、すでに最初の四分の一まで数を減らした魔物の群れを見てシレーナは呟いた。


「……いや、そうでもないか」


 シレーナの視線の先ではウィンの攻撃から逃れた魔物の群れが自分達の主が乗る飛行船エターナル・ゴッデス号に向かっていた。


 ただ単にウィンに対して恐れを懐いたのか、自分達との戦闘能力の差を感じ取った合理的な判断なのかは分からなかったが、それでも魔物の群れがエターナル・ゴッデス号に向かうのはシレーナにとって好ましくなかったので、セイレーンの魔女はそれを阻止すべく行動を起こすことにした。


「ーーーーーー♪」


 セイレーンの魔女の口から旋律が紡がれた。


 それは歌詞も何もないただリズムに乗せて声を出しただけのものだけであったが、いくつもの楽器の合奏に劣らない音程を持つ人間では、いや、セイレーン以外では到底出すことができない「歌」であった。


 シレーナが自らが紡ぎ出す歌に輝力に込めて「魅了」の効果を付与すると、その歌を聞いた魔物の群れが標的をエターナル・ゴッデス号からセイレーンの魔女にと変更した。


「ウィン!」


「あいよぉ!」


 シレーナが合図をすると、他の鳥の姿をした魔物達を倒してきたウィンが威勢のよい声で返事をして魔物の群れへと再度突撃をする。


「これで、終わりさぁ!」


 ウィンは自分の両翼を輝力で巨大化させると高速で回転しながら魔物の群れの中に飛び込んでいった。輝力で強化された一対の翼は、死神の大鎌とも言える鋭さをもって鳥の姿をした魔物達を一匹残らず切り裂いていき、その後の空にいたのはセイレーンの魔女とワイバーンのドラゴンメイドだけとなっていた。

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