表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/266

第百九十二話

「数だけはいるみたいだけど大した相手じゃない。早目に片付けようじゃないか!」


「……なんか、随分とヤル気だね?」


 魔物の群れへと飛びながら獰猛な笑みを浮かべるウィンにその後ろを飛ぶシレーナが話しかけると、ワイバーンのドラゴンメイドはセイレーンの魔女に振り向いて瞳を輝かせながら答えた。


「当たり前だろ? なんせあのダンジョンを攻略したらついに念願の神力石が手に入るんだからね!」


「……ああ、そういえばそうだったね」


 ウィンに言われてシレーナは、このワイバーンのドラゴンメイドがアルハレムの仲間になる時に次のクエストを達成した、つまりあの塔のダンジョンを攻略した際に手に入る神力石を譲ってもらう約束をしていたのを思い出した。


「それにあの塔で手に入るエリクサーも神力石と同じくらいレアなお宝だからね……。そりゃあ、気合いが入るってものさ」


(あーあ、ウィンの病気が出ちゃったか……)


 極上の獲物を見つけた獣のような目で塔のダンジョンの最上階を見つめるウィンを見て、シレーナは心の中で嘆息した。


 ウィンはワイバーンのドラゴンメイド。つまりはドラゴンに属する魔物で、ドラゴンに属する魔物は財宝や稀少な代物といった他者の欲望の対象となりやすいものを集める習性を持つ。


 そしてシレーナが見たところウィンはそのドラゴンの習性に忠実で、財宝や稀少な代物に対する執着心は他のドラゴンよりも強いように(と言ってもシレーナは他のドラゴンに会ったことはないのだが)思えた。


「……ねぇ、ウィンがエリクサーに興味を持つのは勝手だけどさ、エリクサーを手にいれるのはアルハレムだよ?」


「分かってるよ。だけどアルハレムの目的はダンジョンの攻略であって、エリクサーじゃないだろ? だったらダンジョンを攻略した後で頼めば貰えるかもしれないだろ……って、そろそろ来たようだよ」


 シレーナの言葉にウィンが答えている間に魔物の群れは、アルハレム達が乗っているエターナル・ゴッデス号より先に、近くにいた二人を標的にして向かってきていた。しかしその事に対してセイレーンの魔女は焦りも恐怖も懐いておらず、ワイバーンのドラゴンメイドにいたっては手間が省けた、とばかりに笑みを浮かべていた。


「先に行かせてもらうよ!」


 ウィンはそう言うと輝力で身体能力を強化して、次の瞬間には青白い光を放つ姿を閃光に変えて魔物の群れに突撃していった。


「……速い!」


 空を翔るウィンの姿を目で捉えられなかったシレーナが思わず呟く。


(世界で最強の魔物の種族、ドラゴン。下位のドラゴンであるワイバーンでさえ輝力で強化した魔女と同等以上の身体能力を持つ。それを輝力で更に強化できるだなんて、改めて考えるとウィンって本当の怪物だよね?)


 ウィンとはそれなりに付き合いの長いシレーナだったが、今こうしてワイバーンのドラゴンメイドの本気、その一端を見て思わず胸中で呟くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ