第百九十一話
「なんだか鳥みたいなのが沢山出てきたな」
バドラックがダンジョンの窓から見た空に浮かぶ巨大な船、飛行船エターナル・ゴッデス号の甲板でアルハレムは鳥に似た魔物の群れを見ながら言った。
「レム。あの鳥みたいなのって、やっぱり塔のダンジョンに出現する魔物なのか?」
「ええ、恐らくそうだと思います。私が作り出す骸骨の人形達と同じものかと」
アルハレムに聞かれてエターナル・ゴッデス号を動かすゴーレムの魔女、レムが答える。
アルハレム達を乗せたエターナル・ゴッデス号が近づいた途端に塔のダンジョンから群れで出てきた鳥に似た魔物達は、インクを固めて鳥の形にしたような姿をしていて、その全てが魔物使いの青年が乗る飛行船に向かってきていた。
「……やっぱりあの鳥みたいな魔物の群れって俺達を標的にしているよな?」
「それは当然です。私だってこんなズルをされたら率先して攻撃したくなりますよ」
レムはやや不機嫌そうな顔でアルハレムに答えてから明後日の方向に顔をそらしているシレーナを見る。
レムが言うズル、アルハレム達がエターナル・ゴッデス号に乗って塔のダンジョンを目指しているのは、シレーナの「エリクサーがダンジョンの最上階にあるのだったら、エターナル・ゴッデス号に乗って最上階に行けばいい」という意見を仲間達が採用したからだった。
アルハレムの仲間になるまではダンジョンを支配する存在、ダンジョンマスターであったレムはこのシレーナが考えた作戦に「そんなズルは認められません!」と大反対したのだが、結局は自分の主と仲間達の説得により協力をすることになったのだ。
「ズルを許さないってことは、あの塔の最上階にはレムと同じようなダンジョンマスターがいるということですか?」
アルハレムとレムの会話を聞いていたリリアが聞くとゴーレムの魔女は少し考えてから首を横に振った。
「……いいえ、それはないと思います。実体を持ったダンジョンマスター私を含めても数体しかいないはずですし、いたら感覚で分かるはずです」
「なるほど。……ということはあの魔物の群れはダンジョンの精一杯の抵抗で、あれさえ突破できれば最上階までの障害はないということですね」
「何だ、それなら話は簡単じゃない」
「そうだね。そうと分かればさっさと終わらせようじゃないか」
レムの答えにリリアが頷きながら言うと、シレーナとウィンがサキュバスの魔女の言葉に同意して甲板の縁に立った。
「シレーナ? ウィン? 一体何をするつもりだ?」
「何をするつもりって決まっているでしょ?」
「あの鳥みたいな魔物達を叩き潰してくるだけさ。まあ、見てなって」
シレーナとウィンの突然の行動にアルハレムが聞くと、セイレーンの魔女とワイバーンのドラゴンメイドは何でもないように言って空に飛び立った。




