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第百八十七話

「それを言われると困っちまうな……」


「そうですね……」


 アリスンの質問にバドラックは返す言葉もないとばかりに渋い顔をして、マルコも苦笑いを浮かべて頷き、それにアニーが顔を真っ赤にして怒鳴る。


「何でそこで頷くのよ! そこは『エルージョの勇者に相応しい冒険者はアニー様しかいない』って反論するところでしょ! 貴方達、それでも私の下僕なの!?」


「俺らはお前の護衛役だが下僕じゃねぇよ。というかな、俺らも前から何でお前がエルージョの勇者に選ばれたのか疑問だったんだよ。なあ、マルコ?」


「え? ……ああ、そうですね。アニーさんは王族の強い推薦で勇者に選ばれたんでしたっけ? 一体どこで王族の方々と知り合ったのか謎だったんですよね」


 不機嫌な顔でアニーに答えるバドラックに話を振られてマルコも以前から気になっていた疑問を口にする。


「え? 言ってなかった? 私、旅の途中で王族の子供を魔物から助けたことがあったのよ。……あれは忘れもしない、そこの魔物使いとサキュバスの魔女に戦いを挑まれた上に卑怯な手を使われて屈辱的な敗北を受けてしばらくした後だったわ」


 マルコの疑問にアニーは思い出すようにして答える。サキュバスの魔女は「戦いを仕掛けてきたのは貴女ですし、魔物使いのアルハレム様が私の力を使って何が悪いのですか」と憎々しげな顔で言うのだが、戦乙女の勇者は全く聞いておらず自分の話を続ける。


「あの後私は、森でクエストブックに記された魔物を倒すってクエストをしていたの。そしたらその途中でピクニックに来ていた王族の子供が一匹のゴブリンに襲われているところに出くわしてね、それを助けたらその子供と子供の親に気に入られて、後は王族の家族の推薦で勇者になれたのよ」


「そ、そうだったんですか……」


「ゴブリン一匹倒しただけで王族のピンチを救えて恩を売れるって、スゲェ幸運だな。オイ?」


 アニーの話にマルコとバドラックが呆然として呟き、それに戦乙女の勇者が胸を張る。


「当然よ。何せ運が良いのが私の固有特性だからね」


「運が良いのが固有特性?」


 それまで黙って聞いていたアルハレムが首を傾げる。


「そうよ。私の固有特性は『悪運』。悪い状況になると強い幸運を呼び寄せる特性。……あの時は本当に危なかったわ。何せ、所持金もすでにそこを尽きていて、クエストを達成して神力石を売らないと行き倒れていたかもしれなかったからね」


「大人しく行き倒れていたらよかったのに」


「ツクモさんの故郷に『憎まれっ子世にはばかる』という言葉があるでござるが、その言葉を見事に体現しているお方でござるな。この勇者は」


 どこか遠い目をして言うアニーの言葉にアリスンがジト目で言い放ち、それに続くようにツクモが呟いた。

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