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第百八十六話

「え? ……あっ! 貴方達!?」


 マルコの不自然なまでに大きな声によってアルハレム達に気づいたアニーは驚いた顔をすると彼らに近づいていく。その姿を見て魔物使いの青年とその仲間達は奇しくも全員同じ表情を、疲れたような諦めたような表情を浮かべてため息をついた。


「あー……。やっぱりこっちに向かってきたか。こうなると思ったから避けていたんだがな……」


「全くです。あの人間、やってくれましたね」


 アルハレムが呟き、横に立つリリアがそれに相槌を打ちながらマルコを睨む。サキュバスの魔女だけでなく他の仲間達全員も今までの努力を無駄にしてくれたエルージョの騎士を怒りの視線を持って睨むのだが、当の本人はそれを気にしておらず嬉しそうな笑顔を浮かべており、その後ろではバドラックがすまなさそうに頭を下げていた。


「ふん! こそこそと私に隠れて先を越そうだなんて随分と必死ね!」


 そうしている間にアニーがアルハレム達の前にやって来て話しかけてきた。


「でもそれも仕方がないわね。最初は私に無様に負けて、その次はそこの生意気なサキュバスの力を使ってようやく私に勝てた貴方だったらそれが当然かもね」


(……コイツのこの自信は一体どこからくるんだ?)


 一切の臆面もなく胸を張って自分を挑発する言葉を言うアニーに、アルハレムは苛立ちを覚えるより先に疑問を覚えた。そして魔物使いの青年の後ろにいる魔女の仲間達は、戦乙女の勇者の言葉をを不快に思っていたが関わり合いになりたくないという気持ちが勝っていたため、対応を自分達の主に任せて無言でいた。


(というかアニーって自分の立場、勇者の意味を理解できているのか?)


 勇者というのは国に認められた冒険者のことで、その存在は他国に自国の力を宣伝する「国の顔」という役割もある。


 それなのにさっきのように自国の名前を出して周りに威張り散らしては自国の印象を悪くするだけだ。最悪、アニーが余所で起こした騒ぎが原因でエルージョと他国の関係が悪化したとしても、それは決してあり得ない話ではない。


(どう考えても人選を間違っているだろ? エルージョは一体どういうつもりでアニーを勇者に選んだんだ?)


 今も自分に投げつけられているアニーの挑発の言葉を聞き流しながらアルハレムは心の中で首を傾げる。


 そしてそう考えたのはアルハレムだけでなく、いつもであれば兄に暴言を吐いた相手には問答無用でハルバードを叩き込むアリスンですら、アニーを無視してバドラックとマルコに話しかけた。


「ねえ? 何でアレ、エルージョの勇者に選ばれたの? アレ以外にも勇者に相応しい冒険者がいたんじゃないの? それともエルージョってアレしか冒険者がいないの?」


「ちょっと!? どういう意味よそれは!」


 アリスンにアレ呼ばわりされてアニーが怒声を上げた。

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