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第百八十話

 夜の王都を歩く魔物使いの青年、アルハレム。その彼の後ろを三人の魔女達がついてきていた。


「へえ、ここが人間達の街なんだ」


「………」


「人間、達、いっぱい。人間、大勢、いる所、街も、戦場も、賑やか、で、楽しい」


 アルハレムの後ろを歩くのは最初に彼と一緒に行くと言ったシレーナと、くじ引きで護衛役を引き受けたレイアとルルであった。ちなみにレイアは種族特性を使って人間の姿に変身している。


 いつも無口で無表情のレイアはともかく、ルルとシレーナは興味深そうに辺りを見回しておりその姿は住民達の視線を集めていたのだが、それでも仲間のほとんどが集まっていた時程ではない。なのでアルハレムも初めて来た外輪大陸の街並みを、正確にはそこを歩く住民達を興味深く観察していた。


「凄いな。ヒューマン族以外の種族も普通に街を歩いている」


「ヒューマン族以外の種族がそんなに珍しいのですか?」


 アルハレムの呟きに彼の腰に差してあるインテリジェンスウェポンのロッド、アルマが聞く。


「そうだな。俺がいた中央大陸は住民のほとんどがヒューマン族だったから、こうして多種族を間近で見るのは初めてなんだ。……なあ、皆? 何処か行ってみたいところはあるか?」


「………!」


 腰に差してあるインテリジェンスウェポンのロッドに小声で答えてからアルハレムが後ろを歩く三人に行きたい所がないか聞くと、それまで表情を変えなかったレイアが急に真剣な表情(それでも彼女の顔に見馴れた者じゃないと気づけないくらい僅かな変化であるが)となって街のある大きめの酒場を指差した。


「やっぱり酒場か……。行きたいのか?」


「………! ………!」


 アルハレムの質問にレイアは無表情だがその目を輝かせて何度も大きく頷くことで答えた。


 レイアの種族であるラミアはその全てが大の酒好きで、そんな彼女が異国の酒を口にできる機会を逃すなどあり得ないことであった。


 アルハレム達が酒場の中に入るとそこはヒューマン族だけでなくドワーフ族やバンパイア族、マーメイド族と言った様々な種族の客が大勢で賑わっていて、その中には先程出会ったばかりの一人の男の姿もあった。


「ん? お前達は?」


 酒場で一人酒を飲んでいたヒューマン族の男は、アニーの護衛であるエルージョの騎士バドラックであった。


「こんな所で会うとは奇遇じゃねえか? まぁ、こっちに来て飲めよ」


 アルハレム達の姿を見つけたバドラックは手招きをして彼らを呼び、特に断る理由もない魔物使いの青年と三人の魔女達はエルージョの騎士と同じテーブルの席に座った。


「貴方は……バドラックさんでしたよね? こんな所で一人で飲んで、アニーの護衛はいいんですか?」


「けっ、酒を飲む時ぐらい別に一人でいてもいいだろ? いつまでもあのワガママ娘の側にいたら気が変になっちまうぜ」


 アルハレムが聞くとバドラックはアニーの顔を思い出したのか嫌そうな顔をして答える。そしてそれは魔物使いの青年にとっても全くの同感であった。

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