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第百七十一話

「うう……」


 ミナルの街から旅立った次の日。アルハレムはうめき声を出しながら目を覚ました。


 アルハレムが眠っていたのは実家の自分の部屋にあるベッドより二倍以上大きいベッドで、そこには自分の他に仲間の魔女達も横になっていた。ベッドの上にいる者達は全員一糸纏わぬ裸で、その姿から魔物使いの青年と魔女達が昨夜肌を重ね合わせたことは容易に想像できた。


「い、生きてる、よな……俺? ……はあ、本当によく生き残ったよ。うん、頑張ったよな俺」


 魔女と肌を重ねた男性は大量の生命力を搾り取られる。


 昨夜の天国のようで地獄のようでもあった一夜を思い出してアルハレムは、九人の魔女達に生命力を初めとした色々なものを限界まで搾り取られても生きている自分を素直に褒めた。


「……朝から何ブツブツ言っているの? もうちょっと寝かせてよ」


「そうだね……。昨日は激しかったから結局寝たのは夜明けごろだったからね。それにしても人間の雄があれほど逞しいとは初めて知ったよ」


 アルハレムの呟きを聞いて目を覚ましたセイレーンの魔女が眠そうな顔で抗議すると、同じく目を覚ましたワイバーンのドラゴンメイドが頷く。


「おはよう。シレーナ、ウィン」


 目を覚ました二人の魔女に魔物使いの青年は自分が名付けた名前を呼んで挨拶をする。


 シレーナ、というのはセイレーンの魔女の名前で、


 ウィン、というのはワイバーンのドラゴンメイドの名前である。


 魔物使いの青年がセイレーンの魔女とワイバーンのドラゴンメイドに挨拶をしていると他の仲間達も目を覚ましていき、やがてベッドの上で一人の女性がすすり泣く声が聞こえてきた。


「アリスン……」


 アルハレムはベッドの上ですすり泣く自分の妹を見る。彼女はシーツを被っていたが、わずかな隙間から素肌が見えて、そのシーツの下には何も纏っていないのが分かった。


「見ないでお兄様……。汚れた私を……汚されたアリスンを見ないでください……」


 アルハレムに背を向けて震える声を出すアリスン。昨夜、彼女はいつものように魔女達と肌を重ねる兄を監視(本人は覗きではなく監視だと主張)していたのだが、そこをレンとウィンに捕まって同じベッドに連れ込まれたのだ。


 同じベッドに上がったからといっても、兄妹であるアルハレムとアリスンは当然肌を重ねていない。しかし魔物使いの兄が魔女達と肌を重ねている横で、戦乙女の妹は順番待ちの魔女達によって愛撫され、何度も絶頂する姿をさらしてしまったのだ。


「汚されたなんて大袈裟ですね。別に純潔を奪った訳じゃないのに」


「ふざけんじゃないわよ! お兄様の前で何度もあんなことをして! もう私、お嫁にいけないじゃない!」


 昨夜、一番多くアリスンを絶頂させたリリアの言葉に戦乙女の少女は火を吹かんばかりの表情で怒鳴る。それを聞いてサキュバスの魔女はからかう表情で追い打ちをかけようとする。


「あら? お嫁ってことは貴女はいつかアルハレム様から離れて別の殿方のところに行くつもりだったのですか?」


「はぁ? 何言ってるのよ貴女? 私がお兄様から離れるわけないじゃない?」


「……貴女、その一点だけはブレませんね」


 怒りの表情から一転して呆れた表情となるアリスンを見て、思わず感心してしまうリリアであった。

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