表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/266

第百四十一話

「……何だか戦う気がなくなってきたんだけど」


「何を呑気なことを言っているのよ?」


「マスター。前を」


 ダンジョンマスターの涙ぐましい努力を聞いたアルハレムは脱力したように言い、そんな魔物使いの青年をセイレーンの魔女とインテリジェンスウェポンの魔女が注意する。


 アルマに言われて見ると、広間にいた十数体の骸骨の人形達が歓迎の旗を投げ捨てて本来の役目、侵入者の撃退を実行しようと武器を片手にアルハレム達の所に迫ろうとしていた。


「分かっているよ」


 アルハレムが短く答える。常在戦場を家訓の一つとしているマスタノート家の人間が戦場で気を抜くことなんてあり得るはずもなく、マスタノート家の青年は一見脱力したように見える姿でも鋭い目で迫り来る敵達を観察していた。


(さてどう戦おうか……。こちらは実質一人で向こうは多数。囲まれる前に一体ずつ早目に倒さないとな)


 アルハレムが腰に収めていたインテリジェンスウェポンのロッド、アルマを引き抜いて最初に狙う敵を探していると、その背中にセイレーンの魔女の

声が聞こえてきた。


「あー、流石に一人であの数はキツいかもね。それじゃー、アドバイスそのいち。アイツらの弱点は頭だから。骨でできた頭をブッ壊したら、アイツらそれで動かなくなるよ」


 セイレーンの魔女による最初のアドバイスを聞いて骸骨の人形達を見ると、確かに彼女の言う通り骸骨の人形達は体は金属でできているが、頭部だけは本物の頭蓋骨(中には人間の頭蓋骨以外にも動物の頭蓋骨を使っている人形もあった)であった。


「なるほどね。……はっ!」


 骸骨の人形達の弱点を聞いたアルハレムは、一番最初に自分達の元にたどり着いた一体の骸骨の人形が突き出した剣を身を捻って避けると、そのまま体のバネを使ってアルマを勢いよく振るい骸骨の人形の頭部を攻撃する。


 ガッ!


 手に持ったアルマを通じてアルハレムの手に軽い手応えが伝わった。


 今のアルマの姿であるロッド、鞭は元々は拷問具で相手に致命傷を与えずに痛めつけることを目的とした武器だが、それでも勢いよく叩きつければ人間の骨を砕くことなど造作もない。その為に直撃を受けた骸骨の人形の頭部は一撃で粉々に粉砕され、宙に頭蓋骨の破片が舞う。


 頭部を失った骸骨の人形はその場で膝をつき、次の瞬間には無数の金属の骨を繋いで体を構成していた「力」を失って崩れ落ち、階段の上に先程まで骸骨の人形だった無数の金属の骨が散らばった。


「よし! まずは一体!」


 骸骨の人形を倒したのを確認するとアルハレムは階段の前に陣取った。


 少人数で大人数を相手にする場合、最も有効な戦い方は相手側の戦える人数を制限すること。階段の前に陣取っていれば攻撃してこれる骸骨の人形はせいぜい一体か二体で、それぐらいならばアルハレムにとって充分対応が可能な数である。


「それじゃあ行くぞ、アルマ」


「……………今のが、敵の骨を砕く感触」


「え?」


 アルハレムはアルマに呼び掛けるが、返ってきた答えはどこか恍惚とした呟きであった。


「最初に感じたのはガツンという硬い感触。次にピキピキッと一瞬だけの頭蓋骨にヒビが入る感覚が体中に伝わって、最後にはパリンと対象が砕け散る解放感が…………………………快感♪」


「あ、アルマさん……?」


 柄尻の宝玉から聞こえてくる今まで聞いたことがないアルマの声に、アルハレムは何か危険なものを感じて額に一筋の汗を流した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ