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第百三十八話

「そういえばさ、さっきから気になっていたんだけどソレって何?」


 セイレーンの魔女は右の翼を広げると、その翼の先端でアルハレムの腰にあるロッド、アルマを指す。


「普通に話に入っていたから見えない人のように話していたけど、何なのそのしゃべる棒? 何だか気持ち悪い」


「……しゃべる棒? というか今、気持ち悪いって言ったか? コラ?」


「落ち着け」


 セイレーンの魔女に「気持ち悪い」と言われてアルマがドスのきいた声を出し、アルハレムがそんなインテリジェンスウェポンの柄を軽く叩いて落ち着かせる。


「こいつはアルマ。魔女の魂を持つ武器、インテリジェンスウェポンだ」


「魂を持つ武器? インテリジェンスウェポン? ……そういえば世界にはそんな武器があるって聞いたことがあるような……? でもそれって確か凄くレアな武器じゃなかった? そんなのを持っている貴方って何者なの?」


 セイレーンの魔女に聞かれてアルハレムは今更ながら自分が名乗っていないことに気づいた。


「俺の名前はアルハレム・マスタノート。クエストブックに選ばれた冒険者だ」


「冒険者? 冒険者ってあの百のクエストをクリアーしたらどんな願いも女神様に叶えてもらえるっていうあの? ……へぇ、そうなんだ」


 アルハレムの自己紹介を聞いてセイレーンの魔女は興味深そうな笑みを浮かべた。


「『アイツ』が選んだから何かあるとは思っていたけど、やっぱりただの人間じゃなかったんだね。貴方」


「アイツ?」


「そうよ。私と一緒に貴方達を拐ったもう一人の魔女。それでそいつは相手の欲望とその行き先を知るって種族特性を持っているの」


「相手の欲望とその行き先を知る種族特性?」


 アルハレムが疑問を口にするとセイレーンの魔女が説明をする。


「ほら、人間に限らず生き物っていつも何かを求める思い、欲望を持っているものでしょ?

 食べ物を食べたいって思っている人だったら欲望は食べ物を売っている店に向かっていて、ゆっくり休みたいと思っている人だったら欲望はベッドのある自宅に向かっているのが分かるのが、アイツの種族特性なんだって。

 それで私達がこのダンジョンに誘拐する人間を探していたら、このダンジョンに欲望を向けている人間がいるってアイツが言って、その欲望の持ち主を探してみたら貴方を見つけたってわけ」


「俺がこのダンジョンに欲望を向けていた……求めていた?」


「私がダンジョンで武器として活躍したいという思い、あるいはマスターのクエスト達成のために早くダンジョンに挑戦したいという思いを欲望として感じ取ったのでは?」


 説明を受けたアルハレムとアルマの会話を聞いてセイレーンの魔女は嬉しそうな笑みを浮かべる。


「そう……、貴方のクエストってダンジョンの攻略だったんだ? それだったら丁度いいじゃない。ええっと……アルハレム、だっけ? 貴方、このダンジョンに挑戦したらどう? というかそうするしか貴方達には道はないと思うけど?」


「……そう、だな」


 セイレーンの魔女の言う通り、ここはダンジョンに挑戦する以外に地上に戻る方法はなく、アルハレムは納得できない気持ちを感じながらも頷いた。

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