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第百三十四話

 アルハレム達がミナル子爵の元を訪ねた日の夜、魔物使いの勇者の一行はミナル子爵の屋敷に泊めてもらうことになった。


 さまよえる幽霊船の噂が聞こえなくなるまで外輪大陸行きの船は出せないが、それまでの間は屋敷に滞在してもよいというミナル子爵の申し出を、アルハレム達はありがたく受けることにしたのだ。


「それにしても思わないところで足止めをくらってしまったな。まさかただの迷信だと思っているさまよえる幽霊船が実在して、それのせいで船が出ないだなんて」


「マスター。そのさまよえる幽霊船が邪魔なのでしたら私達で退治してはどうでしょうか?」


 ミナル子爵の屋敷の一室でアルハレムが呟くと、彼の腰に収まっているロッドの姿のアルマが何やら物騒な提案をしてくる。ちなみにリリア達五人の魔女は用事(酒盛り)で席をはずしていて、今この部屋にいるのは魔物使いの勇者とインテリジェンスウェポンの魔女の二人だけであった。


「いやいや、そんなことするつもり俺は全くないからな? さまよえる幽霊船がどれくらいの戦力か分からないって以前にマトモに戦うことができるかも分からないし、それどころか遭遇できたとしても空を飛ぶ船にどうやって乗り込めって言うんだよ? ミナル子爵の話では数日もすれば何処かに行くってことだから、それまでじっとしていればいいんだよ」


「……空を飛べるリリアの協力を得られたらさまよえる幽霊船にも乗り込めると思いますけど?」


 アルハレムの言葉にアルマはロッドの姿であるため表情は分からなかったが、それでも明らかに拗ねていると分かる口調で答えて、それに魔物使いの勇者は首を傾げる。


「アルマ……? お前なんでそんな戦いたがっているんだ?」


「武器とは戦場で使われている瞬間が最も光輝きます。それに私は女神イアスによって創造されて日が浅い。私は私がどれだけの性能があり、私を使ったマスターがどれだけ強いのか知りたいのです」


 アルハレムの質問に即断するアルマ。どうやらこのインテリジェンスウェポンの魔女はかなりの武闘派のようだ。


「私は早くダンジョンで戦いたいです。……そういえばマスター? ダンジョンといえば聞きたいことがあるのですが?」


 インテリジェンスウェポンの柄尻の宝石から放たれる魔女の声が、自身の主に質問をする。


「何だ?」


「クエストを達成する為に活動をしているダンジョンに挑むのは理解しましたが、何故外輪大陸のダンジョンなのですか?

 伝承等で女神イアスが創造したことが伝わっているダンジョンは二十七。その内で存在が確認されているのは二十。そして二十のダンジョンで今も活動していると推測されるのは八つで、その中の三つはこの中央大陸にあります。

 ……普通に考えれば中央大陸にある三つのダンジョンに向かった方が効率的ですのに、何故マスターは外輪大陸のダンジョンを目指すのですか?」


「アルマ、お前よく知っていたな?」


「お忘れですか? マスターが王都でダンジョンの事を調べていた時、私もマスターの腰に収まっていたのですよ?」


 アルマの言葉にアルハレムは苦笑する。


「そうだったな。……別に大した理由じゃないさ。前から外輪大陸に行こうと思っていたからな。今回のクエストは丁度いい機会だっただけだ」


「丁度いい機会、ですか。外輪大陸に行こうと思った理由を聞いてもいいですか?」


「それこそ大した理由じゃないよ。外輪大陸にはツクモさんの故郷、猫又と霊亀が暮らす隠れ里があるからな。外輪大陸に行けばヒスイを生まれ故郷に連れて行きやすいだろ?」


 ヒスイは今から百年以上昔にエルフ族に拐われて、つい最近までマスタノートの領地でダンジョンの核にされていた。だからここにはいない霊亀の魔女には生まれ故郷で暮らした記憶がない。


 そんなヒスイの為にアルハレムは彼女を生まれ故郷がある大陸に連れていこう考えて、外輪大陸のダンジョンを目指そうと考えたのだ。


「なるほど。理解しました。……正直、ヒスイが羨ましく思います」


「何を言っているんだ? とにかく今日はもう休もう。明日は皆で街を見て回ろうか」


 アルハレムは苦笑してアルマの柄を軽く叩くとベッドへ向かった。


「そうですね。今夜は珍しくリリア達に搾り取られそうにないですから、ゆっくりとお休みになった方がいいと思います。マスター」


「ははっ。それもそうだな」

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