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第百二十九話

「ここまで連れてきてくれてありがとうございました」


「いえ、これも任務ですので。それではアルハレム様、御武運をお祈りしています」


 ミナルの街に入る許可を得たアルハレムが、門の前で自分達をここまで運んでくれた馬車の御者と護衛の騎士達に礼を言うと、騎士達は一礼してからやって来た道を行って王都に戻っていった。


 アルハレムが正式にギルシュの勇者と認められて、宴の席でローレンに外輪大陸へ旅立つことを告げた日からすでに十日が過ぎていた。


 このミナルの街にアルハレム達がやって来たのは当然外輪大陸行きの船を探すためであり、ここに来るまで彼らが乗っていた馬車と護衛の騎士達は、出来るだけ早く目的地に行けるようにとギルシュの国王であるヨハン王自らが手配したものであった。


(勇者は国から色々な面で支援を受けられるって本当だったんだな。……まあでも、今回の場合は俺を早く王都から遠ざけてライザック皇子と接触させないって目的があるのだろうな)


 そこまで考えてアルハレムは王都で出会ったギルシュの第一王子ライザックのことを思い出す。


 ギルシュを更に強い国に育て上げることを目的としているライザックは、新たに勇者となったアルハレムに注目して自分の部下になるように話を持ちかけてきた。しかし父親であるヨハン王と弟のローレンは、そんな第一王子にどこか危うい面があることを感じていて、ライザックがアルハレムと接触するのを避けようと考えたのだ。


 その為、アルハレムがクエストブックの試練に挑戦するために外輪大陸へ旅立つという話は正に渡りに船と言えた。


「それでお兄様、これからどうするの?」


 馬車と護衛の騎士達を見送った後、アルハレムの隣に立つアリスンが訊ねてきた。


 結論から言えばこの戦乙女の少女は、勇者の兄の旅に同行することになった。


 アルハレムが外輪大陸へ旅立つことを言うと、当然のようにアリスンは同行すると言い出し、全員がマスタノート領に戻るように言っても全く聞く耳を持たなかった。最愛の兄も説得に参加したのだがそれでも戦乙女の少女は首を縦に振らず、最後にはマスタノート家当主であり母親でもあるアストライアが折れた。


『アリスンの手綱を取れるのはアルハレム、お前だけだ。お前抜きでこの娘を領地に連れて帰っても逆に領地が危険になる。……大変だとは思うが、アリスンがこうなったのはある意味お前にも多少は責任があるはずだから最後まで面倒を見てやってくれ。……頼む』


 大国ギルシュでも五本の指に入る軍人で「神速の名将」とまで呼ばれた母親が、初めて見るような疲れきった表情をして頭まで下げて頼んできては断るわけにもいかず、アルハレムはアリスンの旅の同行を認めたのだった。


「そうだな……。ヨハン王からこの街の領主に当てた手紙を預かっているから、まずは領主の所へ……」


 そこまで言ったところでアルハレムは言葉を切ると、仲間達の姿を見てから自分の姿を見る。それから少し考えて口を開いた。


「……いや、それより先に行くところがあるな」

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