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第百二十八話

 ギルシュの南部にミナルの街という大きな街がある。


 ミナルの街は中央大陸と外輪大陸を隔てる大河を移動する船が多く集まるギルシュ屈指の港であり、外輪大陸にある国々との貿易で栄えていた。そして大きく栄えた街というのは、そこにある財や利権を狙う盗賊等に狙われやすいのでミナルの街は外部の敵を防ぐ防壁で囲まれており、北と東と西にある門は常に守備兵に守られていた。


 ある日、ミナルの街の北門を守る守備兵達は一台の馬車がこちらに向かって来ているのを見つけた。その馬車の回りには護衛と思われる馬に乗った騎士が数人ついていて、馬車に乗っているのがそれなりに地位が高い人物だと予想されるが、そんな人物がこの街にやって来る予定など守備兵達は聞かされていなかった。


 やがて馬車と騎士達の一団が守備兵達のすぐ近くまで到着すると、一団は動きを止めた後に馬車の扉が開いて中に乗っていた人が姿を現した。


 馬車の中には数人の乗客が乗っていて、最初に馬車から出てきたのはヒューマンの男だった。年齢は十代後半で二十代にはいっておらず、金髪を目元まで伸ばして毛皮のマントを羽織っていた。


 次に馬車から出たのはヒューマンの女性。最初に出た男より年下だが、髪の色が同じで顔立ちもよく似ていることから恐らくは兄妹なのだろう。


 馬車から出てきた二人を見てミナルの街の守備兵達は、この一団がどこかの貴族の突然の来訪なのだと考えたが、その後から馬車を出てくる者達を見て考えを撤回する。


 貴族の兄妹の後に出てきたのは五人の美しい女性達。だがよく見れば彼女達は人間ではなかったのだ。


 極細の帯で体の秘所を最低限隠しただけの裸同然の姿で、背中にコウモリのような翼を、腰には尻尾を生やした桃色の髪のサキュバス。


 馬車から降りるまでは普通の人間の姿だったが、馬車から降りた途端に上半身が人間で下半身が蛇の姿に変身したラミア。


 胸や股間の重要な部分だけを守る鉄でできた下着のような甲冑を身につけ、額に角を二本生やしているグール。


 中央大陸ではまず見かけない、外輪大陸の一部の地域で着用されている「キモノ」という服を見に纏い、頭と腰に猫の耳と尻尾を生やした猫又。


 一見すると物静かなヒューマンの女性に見えるが、耳が尖っていて首の後ろに鱗を生やしているのが見える正体不明だが、明らかに人間でない女性。


 魔女。


 輝力を使うことが可能で戦乙女と同等の力を持った高位の魔物が五人も姿を見せたことに、ミナルの街の守備兵達に動揺が走る。


「ま、待て! 貴様達は一体何者だ!」


 北門を守る守備兵達をまとめるている隊長格の兵士が、内心の恐怖を悟らせまいと手に持った武器を構えながら大声で呼びかける。すると貴族と騎士と魔女が一緒にいる奇妙な一団から、最初に馬車を降りた貴族の男が守備隊の隊長の前に進み出て、懐からあるものを取り出して隊長に見せた。


 貴族の男が取り出したのは、掌ほどの大きさの一枚のメダルで、メダルの表面にはギルシュの王家の紋章が刻まれていた。


「それは王家の紋章……?」


 守備隊の隊長の呟きを聞いた貴族の男は、次にメダルを裏返して見せた。メダルの裏側には文章が刻まれていて、それを読んだ隊長の顔色が変わる。


「こ、これは!? ではお前達……いえ、貴殿方は……!」


「俺は数日前にギルシュ王家に新しく認められた『勇者』アルハレム・マスタノート。それで後ろにいるのは俺の仲間達ですので危険はありません。……ミナルの街に入れてもらってもいいですか?」


 貴族の男、アルハレムは守備隊の隊長に挨拶をするとミナルの街へ入場する許可を求めた。

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