第百二十二話
「……む?」
朝になって目を覚ましたアルハレムは、実家の自室にあるベッドよりも大きな、大人が十人くらい寝れそうなベッドの上で横になっていた。
ここはギルシュの王都の中央に位置する王城シャイニングゴッデス。そこのマスタノート家に貸し与えられている部屋であった。
「そういえば昨日、王都に戻って来たんだっけ」
アンジェラの一件が終わり、宿場町を後にしてから今日で三日目。昨日の日暮れ前に王都に戻ったことを思い出したアルハレムは周囲を見回した。
「それにしてもこの朝の状況もすっかり見慣れたな……」
呟くアルハレムの体にはリリア、レイア、ルル、ツクモ、ヒスイの五人の魔女達が一糸纏わぬ姿でしがみついて幸せそうに眠っていた。言うまでもなく昨晩全員で肌を重ねた結果である。
クエストブックを手に入れてリリアを仲間にするまではとても考えられなかったが、今ではこれがアルハレムの朝の風景であった。
「う、動けん……」
昨晩リリア達に精と一緒に生命力を吸い取られた上に四肢を魔女達に絡め取られたアルハレムはベッドから身動きがとれずにいた。
「ま、マスター……。お、おはようございます……」
身動きがとれずにいるアルハレムの枕元で、魔女の姿となったインテリジェンスウェポンのアルマが憔悴した表情で挨拶をしてきた。
「アルマか。……お前、体は大丈夫か?」
アルマは昨晩、リリア達に混ざって初めてアルハレムと肌を重ねたのだった。
最初は「私は子供を産む機能を備えていないので、そのような行為は不用です」と言っていたアルマだったが、「使い手であるアルハレム様と信頼関係を気づくにはこれが一番有効なのですよ」というリリアの言葉にのって文字通りの「裸の付き合い」に参加。しかし生まれてまだ数日しか経っていないアルマには刺激が強すぎたようで、一度肌を重ねただけで気を失ってしまったのだった。
「お陰様で……。それにしても人間を初めとする生物とは凄いのですね。己の子孫を作るためにあのような激しい試練を越えなければならないのですから……」
「試練って……。そんなに嫌だったらもう止めるか?」
「いえ。武器のメンテナスは使い手の義務です。これからも毎日お願いします」
アルハレムがアルマの体調を気遣って言うと、インテリジェンスウェポンの魔女は間髪入れずに断った。
「そ、そうか……。それよりそろそろこの状況をなんとかしないないとな」
全身に五人の魔女達が絡み付いているアルハレムだが、右腕だけならなんとか動かせそうだった。
「くっ……! これだったら……はっ!」
ふにゅん♪
「ひうっ!?」
「え?」
気合いを入れて眠っているリリアの体から右腕を引き抜いたアルハレムだったが、勢いよく引き抜いた際に手が何か柔らかいものに触れた。
「? 何だ?」
「………」
アルハレムが右手に触れたものを見ると、そこにはいつの間に部屋に来たのか下の下着以外何も身に付けていない実の妹、アリスンの姿があった。そして右手は妹の、眠っている魔女達程ではないが形よく実った乳房に触れており……。
「ほ、ほでゅわーーーーーーーーーーーーー!?」
王城シャイニングゴッデスに一人の男の奇声とも悲鳴とも判断がつかない叫びが響き渡った。
最近のアルハレム・マスタノートの朝は大体このような感じである。




