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第百八話

「アルハレム殿……そうでござるな」


 アルハレムの言葉から明らかな不快だという感情を感じてツクモが振り向くが、すぐに己の主人の気持ちを理解して頷き、同じく気持ちを理解したローレンが口を開く。


「それは僕も同感だ。でもアルハレム君、今は目の前の問題に集中しないと」


「……ええ、分かっています。でもローレン皇子? これからどうするんですか?」


 アルハレムに聞かれてローレンは困った表情となる。


「そうなんだよね……。あの人数だけでも厄介すぎるのにあのアンジェラは女性を、こちらの主戦力である魔女と戦乙女を洗脳する輝力を使うからね。正直手の打ちようがない。……まいったな。街を占領されたと聞いた時は、僕も父上達もただの大規模な盗賊団だとばかり思っていたのに、まさか街の女性達を従えた戦乙女だったなんて……。すまないね、アルハレム君。今回はこちらのミスだ」


 ローレンがアルハレム達に小さく頭を下げて謝罪をする。


 シーレの街を占領したのが最初から女性を洗脳する戦乙女だと分かっていれば、王家もここにアルハレムとローレンの一行を寄越さず男だけの軍隊を派遣しただろう。全ては急務だとはいえ、敵の情報を調べなかった王家の調査隊の怠慢がこの状況を作ったとも言える。


 そしてアルハレムとローレンが話している間にも、クーロとアンジェラもまた会話を……というかアンジェラが一方的に話してそれをクーロが聞いているのが続いていた。


「……ああ、もう! 面倒臭いね! お前達、もういいから男達を連れ戻しな!」


『はい!』


 言いたいことを全て言ったアンジェラは面倒そうに命令を出すと、支配下にあるシーレの街の女性達は一斉に返事をして、一緒の街で暮らしてきた男達に迫る。男達がアンジェラの私兵……いや、操り人形と化した女性達から悲鳴をあげてローレンが舌打ちをする。


「くっ! 始まったか。でも一体どうしたら……え?」


「何だ? アレ?」


 ローレンとアルハレムは目の前の光景に思わず声を漏らした。


 アンジェラの命を受けて男達を捕まえようとするシーレの街の女性達。それが次々と見えない壁にぶつかったように弾き飛ばされいくのだ。


「な、何だってんだい! ……ええい! 何をしてるんだい、お前達! 早く男達を捕まえるんだよ!」


 突然の出来事にアンジェラは一瞬驚いた顔をするが、すぐに激昂して女性達に叫ぶ。しかし女性はある見えない壁に遮られてそれ以上先に進むことはできずにいた。


 そして見えない壁の壁の向こうにいたのは一人の女性。


 艶のある緑の髪を揺らした物静かな雰囲気を纏った霊亀の魔女、ヒスイであった。


「ヒスイ? いつの間に?」


「ヒスイ殿? 何をしているでござるか?」


 いつの間にか前に出ていたヒスイにアルハレムとツクモが驚いて声をかけると、霊亀の魔女は申し訳なさそうに口を開いた。


「旦那様、ツクモさん、ごめんなさい。勝手に前に出てはいけないのは分かっていたのですが、この人達を放ってはいられなくて……」


「それじゃあ、シーレの街の女性達を止めているのはヒスイなのか? でも一体どうやって……」


 そこまで言ってアルハレムはヒスイの種族、霊亀が自分の認めた者しか入れない、あるいは出られない結界を作り出す種族特性を持っていたことを思い出す。


 どうやらヒスイは種族特性を利用して見えない壁を作り出してシーレの街の女性達の侵入を防いだようだ。

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