表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/266

第百四話

 アルハレムとローレンの一行が、クエストに記されたクエストに挑戦するため城を出発してから二日が経った。


 リリア達魔女とメアリ達戦乙女の間では相変わらず不穏な空気が漂っていたが、出発時のような騒ぎは起こらずこの二日間の間は旅は順調に進み、一行が乗る二台の馬車は小さな宿場町にと辿り着いた。


「あら? 随分と賑やかな街なのですね。王都よりも人がいるみたい」


「ヒスイ殿、これは『賑やか』ではなく『人で溢れている』と言うのでござるよ」


 馬車から宿場町の様子を見たヒスイの言葉をツクモが訂正をする。


 ツクモが言う通り宿場町は人で溢れていた。


 宿場町にある全ての宿屋はすでに満杯な上、町中には馬車や町中に設置したテントで生活をしている大勢の人々の姿が見えた。そして町中で見かける人々のほとんどは子供に老人、そして男ばかりで若い女は数えるぐらいしかいなかった。


「こんなに人がいたらこれ以上馬車では行けないな。一旦降りようか」


 あまりにも人が多すぎて 馬車が大通りを通れないため、アルハレムとローレンの一行が馬車を降りると宿場町にいた人々が驚いた顔になって一斉にアルハレム達を見た。しかし彼らの視線は、アルハレムがいつも感じているリリア達大勢の美女を独占した自分に男達が向ける嫉妬の視線ではなく、恐れと同情が混ざった奇妙な視線であった。


「一体何なのですか、ここは? ……いえ、それよりも……。あの、アルハレム様? 申し訳ありませんがクエストブックを少し見せてもらってもいいですか?」


「ああ、いいぞ」


 リリアは宿場町の様子を見て少し考えると、アルハレムから彼のクエストブックを借りてそこに記されたクエストの文章を見た。



【クエストそのじゅう。

 まちをせんりょうしているわるものさんたちをこらしめてください。

 おうちをおいだされたひとがたくさんいてかわいそうだから、たすけてあげましょう。

 それじゃー、あとにじゅうはちにちのあいだにガンバってください♪】



「やっぱりクエストブックには街を占領している悪者達を懲らしめろ、と書いていますけど本当にここが目的地なのですか?」


 街を占領するような危険な悪者達がいるのなら何故こんなに人がいるのか、と暗に聞いてくるリリアにアルハレムは一つ頷いて答える。


「リリアが思った通り、ここは目的地じゃないよ。俺達の目的地、悪者に占領された街っていうのはここから馬車で一日ほど行ったところにあるシーレの街って所だ」


「では何故この宿場町に寄ったのですか?」


「それはここにシーレの街を治めていた領主がいるからさ」


 リリアの疑問に一緒に歩いていたローレンが答えると、次はレイアとルルが首を傾げた。


「………?」


「領主、ここ、に、いる? ……何故?」


「それは勿論、逃げてきたからさ。そして逃げてきたのは領主だけじゃなく、この宿場町にいる人達のほとんどは、シーレの街から逃げてきた街の住人達なんだ」


「だから俺達は今からシーレの街の領主に会いに行くんだ。シーレの街で一体何が起こったのか、詳しく聞く必要があるからな」


 ローレンが苦笑をしながらレイアとルルに答え、アルハレムが言葉を引き継いで説明をすると、二人の青年にそれぞれ仕える魔女と戦乙女の集団は全員納得したように頷いた。


 そしてこの宿場町に寄った理由を確認するとアルハレムとローレンの一行は、シーレの街の領主がいるという、この宿場町で一番大きな宿屋へと向かうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ