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第百一話

 アルハレム達が話をしながら王城シャイニングゴッデスの中庭に出ると、中庭には二台の馬車が待機していて、馬車の前にはローレンと三人の女性が待っていた。


「やあ、アルハレム君。待っていたよ」


「すみません、ローレン皇子。お待たせしました」


 にこやかに挨拶をするローレンにアルハレムが会釈すると、後ろにいたリリア達五人の魔女が二台の馬車を見て声をあげる。


「うわぁ、とても立派な馬車ですね」


「………」


「マスタ、ノート、の、馬車、より、立派」


「にゃー、それは王家の用意した馬車でござるからな」


「馬車もお馬も大きいですね」


 リリア達が言う通り中庭に待機している二台の馬車はギルシュの王家が用意したもので、マスタノート家の馬車よりも大きく一台で十人くらいの人間も乗れそうだった。


「ローレン皇子。クエストに挑戦する場所を調べてくれただけでなく、馬車まで用意してくれてありがとうございました」


 アルハレムがローレンに頭を下げて礼を言う。


 今から四日前。つまりローレンとの模擬戦の翌日、アルハレムのクエストブックには新しいクエストを記した。


 ギルシュの王家は各地に調査隊を放ってアルハレムのクエスト挑戦に最適な場所を調べ、そして今日その場所に馬車に乗って向かうのだった。


「場所を調べたのも馬車を用意したのも僕じゃなくて父上だよ。それにこれは僕自身のクエスト達成の為でもあるからね。気にしないでいいよ。それよりも彼女達を紹介するよ」


 ローレンは礼を言うアルハレムに笑いながら答えると、自分の後ろに控えている三人の女性を視線を向けた。三人ともローレンとアルハレムと同じくらいの年齢で武装をしている。


「右からメアリ、マリーナ、ミリーといって、彼女達は僕の仲間の戦乙女でメアリとは以前にも会ったよね?」


 メアリと呼ばれた戦乙女は、アルハレム達が初めてローレンと会ったときにシャイニングゴッデスの中を案内した戦乙女で、以前会った時と同じように軽装の鎧と長剣を装備していた。


 マリーナはメアリと同じ軽装の鎧と槍を装備しており、ミリーは動きやすそうな革鎧と鋼鉄の籠手に足甲を身につけているが見えた。


「メアリです。少しの間ですがよろしくお願いします」


「マリーナよ。このクエストの間だけ一緒に行動するわ」


「……ミリー。……初めまして、それとよろしく」


 ローレンに紹介された三人の戦乙女はそれぞれ挨拶をするのだが、口調が棒読みな上に彼女達の表情は硬く、友好的な雰囲気は全く感じられなかった。


「あら? そこにいる三人だけなのですか? 以前はもっとたくさんのお仲間がいたと思いましたが?」


「ああ、今回の旅に同行するのは僕達四人だけだよ。僕達の役目は君達がクエストを達成できるか見届けることだけだからね」


 リリアの質問に答えるローレンにアルハレムが頷く。


「ええ、分かっています。……って、え?」


「まあ、アルハレム様と私ならどんなクエストでも達成できますからね。ローレン皇子は安心して後ろから見ていてください♪」


「………♪」


「ルル、達、これ、でも、優秀。きっと、大丈夫」


「まあ、今回のクエストの内容だったら楽勝でござろうな」


「こ、今度こそ頑張ります」


 ローレンに返事をするアルハレムにリリア達五人の魔女が体を密着させながら言う。


『………………』


 そんな魔物使いと魔女達の姿を、ギルシュの王子に付き従う三人の戦乙女達が感情を押し殺した顔で、ただし目には様々な感情が混ざった複雑な敵意を宿して見ていた。

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