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ep:1 家庭教師

長谷川呈亜はせがわてぃあ、17歳。

みんなからは、変わった名前だとよく言われる。

学校では『根暗メガネ代表』などと言われているが、まさにその通りだと思う。

当然のことながら、彼氏居ない歴=年齢だ。



この先もそれがずっと続くと思っていた高3の冬。



「ね、ティアちゃん」

そう言い微笑む男の人に、






「僕と付き合ってよ」






突然告白されました。



* * *



それは金曜日の帰り道でした。

私は友人である古賀杏樹こがあんじゅといつも通り帰宅していました。


「今日もあのお店に寄るの?」

「うん」


杏樹の言う『あのお店』というのは、商店街の中にある何でも屋『オリオン』のことだ。

築30年以上経ってそうな古い民家で、店内には何でも売っているし、本当に何でも引き受けるお店だ。


「じゃ」

杏樹に短くそう告げると、店へと入った。




* * *




中はシンとしていて、綺麗なステンドグラスが夕日に反射してキラキラしていた。




「いらっしゃい」

店の番台に腰掛ける和服を着た男。

この男、津田宛音つだあてぃんがこの店の店主だ。

「こんにちは、津田さん」

少し長め黒髪、黒縁メガネ、夜色の着物、纏う空気。

そのすべてが今どき風変わりな奴、と思うのだが津田さんとピッタリと似合っているのがなんだか妙に腹立たしい。


「ティアちゃん、文句を言いつつも毎日来るよね」

津田さんがニッコリと微笑みながら言う。

「仕方ないでしょう?母が既に契約してしまっているので」

嫌味を込めて言ったつもりだったが、津田さんは微笑み、受け流す。


「で?今日は何をするの?」

「国語です」

国語かぁ、と津田さんは思案顔になる。

「そうだなぁ…。まぁ、なんとかなると思うよ」

親指を立てて、グッジョブサイン。

「あなたのソレほど頼りにならないものはないと思います」

なぜか「それほどでも~」と言い、照れる津田さん。

褒めてない。むしろ逆だ。


「そもそも、なんとかなってもらわないと、家庭教師の意味ないですよ」

「ティアちゃん…。キミの鋭いツッコミで僕の心はズタズタだよ?」

そう、この津田さんは現在私の家庭教師なのだ。

細かく言うのならば、母さんが受験を控えた私に勝手に付けた(・・・・・・)家庭教師だ。



1週間と少し前の日、

『あなたの通学路にある何でも屋さん!あのお店の津田さんが、家庭教師をしてくれることになったから!』

と母が言った。

随分勝手な話だ。

私には必要ない、と何度も言っていたのに…本人の意思を完全に無視して勝手に約してしまったらしい。

そして止めの一発に

『でも、おうちに来るのが難しいらしいから、ティア、あんたお店に通いなさいっ!』

と言われた。


おかしい。おかしすぎるだろう。

“家庭教師”とは一般的に家に来てもらうものではないのか?

私の“家庭教師”の概念は間違っていたのであろうか?

と、津田さんに聞くと

「えぇ?そうだっけ?」

と、言われた。


よし。誰でもいいからコイツの頭を一度叩いてはくれないだろうか。




そんなこんなで、現在オリオンに通い始めて1週間が経った。


分かったことが1つ。


津田さんは家庭教師に向いていない。

具体的に言うのならば、勉強自体がまったく出来ないに等しい。


母よ、雇う相手を間違えてる!!

何故この人にしたんだっ!?


それでも母がお金を払っているので、とりあえず通っている現状。


「津田さん、これどういうことですか?なんでココの答えがこうなるのですか?」

「これは、ココで『ボクは叫んだ』っていう表現があるでしょ?それがあるから、この答えになるの」

おぉ…。

訂正しよう。津田さんの国語はすごく分かりやすい。


「納得しましていただけましたか、お嬢様?」

「世界観についていけません」

津田さんが喉でクツクツと笑う音が聞こえる。

津田さんに負ける日が来るなんて…。屈辱だ。


国語の分からないところを潰しているうちに、店の大きな古い時計が午後6時を告げた。


「はい、じゃあ今日はこれでお終いだね」

「ありがとうございました」

国語は分かりやすいので、とりあえずお礼は言う。

「はぁい。―――――僕もお店閉めないと」

津田さんが店を閉めている間に、私も荷物をまとめる。

今日は参考書をいっぱい使ったので片付けても片付けても、終わらない。

ふと、番台に視線をやると店の片づけを終わった津田さんが、頬杖をついてコッチを見ていた。


こうして改めて見てみると、津田さんはすごくカッコいいと思う。

杏樹からはよく“カッコいい”の基準がずれているとよく言われるが、おそらく普通にカッコいいの部類に入るだろう。


「何?ティアちゃんに見つめられると、照れるんだけど?」

津田さんが意地悪そうに微笑む。

こういうことに経験値が0の私は、顔が真っ赤になるのを自覚する。


「ティアちゃん真っ赤。可愛い~」

「か、からかわないで下さいっ!」

「からかってないよ」

突然まじめな顔になる津田さん。

何なんだ。コロコロ表情かえて…。


「からかってないよ。ティアちゃん、すごく可愛い」

「あ、ありがとうございます…」

顔が熱い。

真っ赤なのをこれ以上見られたくなくて、顔を伏せる。




「ね、ティアちゃん」

「な、何ですか?」


一応礼儀として津田さんの顔を見る。

何だろう、この背中の方から来る嫌な予感的なものは。






「僕と付き合ってよ」






私の中で時間が止まった瞬間でした。

はじめての恋愛ジャンルの作品です。

誤字脱字&その他問題点がありましたら、どうぞ報告願います。


至らないところもアリアリだと思いますが、よろしくお願いします。

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