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ゴブリンの王国  作者: 春野隠者
王の帰還
78/371

火神の子

火神の子とは人間を指します。


レシアの語った神話よりサブタイトルを取っています。


【種族】ゴブリン

【レベル】15

【階級】ロード・群れの主

【保有スキル】《群れの支配者》《反逆の意志》《威圧の咆哮》《剣技B+》《果て無き強欲》《王者の魂》《王者の心得Ⅰ》《青蛇の眼》《死線に踊る》《赤蛇の眼》《魔力操作》《狂戦士の魂》《三度の詠唱》《直感》《王者の心得Ⅱ》

【加護】冥府の女神(アルテーシア)

【属性】闇、死

【従属魔】ハイ・コボルト《ハス》(Lv1)灰色狼ガストラ(Lv20)灰色狼シンシア(Lv20)オークキング《ブイ》(Lv40)




「アルハリハ。頼みがある」

 深淵の砦を攻略する前段階、俺は一つの頼みをアルハリハにしていた。

「頼みとは水臭い。命じてくれれば死地にでも跳び込みますものを」

 太く笑うアルハリハに苦笑しながら、俺は要件を切りだす。

「騎獣を一匹譲り受けたいのだ。東のギの集落で待つ、あるゴブリンに届けてほしい」

 聞いた瞬間アルハリハの眉が跳ね上がる。

 これはかなり無理な願いと言わざるを得ない。

 パラドゥアゴブリンの一生は、騎獣の上で始まり騎獣の上で終わる。それを誇りとしているようなゴブリン達なのだ。故に半身とも言える騎獣黒虎(ブラックタイガー)を贈り物のように差し出すのには抵抗があるはずだった。

「そのゴブリンは、どのようなもので?」

「俺の為に戦い、駆けるべき足と振るうべき腕を失ったものだ。俺は奴に報いねばならん」

「……足と腕を失ったゴブリンに黒虎が御せると?」

「俺の配下の中で奴ほど忠誠厚きものを俺は知らん。ならば必ず乗りこなして見せよう」

「王の頼みとあらば、引き受けねばなりますまい」

 頭を下げて引き返すアルハリハを視界の隅に収めながら、俺は遠く東を思った。

 ギ・ガー、レシア、もうすぐ俺は戻るぞ!


◇◆◇


 罪厚き森の亜人。

 奴隷の証として象徴である長き耳を半ばから切り取られ、首には従属を誓わせる首輪が嵌っている。奴隷として買い取られた彼女に選択の余地などはない。

「……セレナ、今日からこのお方がお前のご主人さまとなる。お礼を申し上げないかっ!」

 奴隷商人の声に怯えながらセレナと呼ばれた妖精族の娘はその場に傅いた。

「セレナと申します。お買い上げ頂いてありがとうございます」

 震える声で告げる妖精族の娘に、ジェネは満足そうに頷いた。人間族としては美しく整った容姿だったが目元に窺える酷薄な色は隠そうにも隠せない。口元に漂うのは、残酷さすら浮かべる微笑だった。

「良い買い物をした。この者の能力は確かなのだな?」

「もちろんでございます。ほら、セレナ! お前の力をお披露目してみせやがれ!」

 怒鳴られる声に、セレナは怯えながらも耳に魔素を集中させる。

恩寵厚き森の風よ(セレナーデ)

 瞼を閉じて両手を組む。祈りを捧げるようなその様子に、好色な笑みをジェネは浮かべた。

「3キロル先の門の近くで馬車が冒険者と諍いになっています」

 ほう、とジェネは口の端を歪める。

「確かめられるかな?」

「もちろんでございます。旦那様」

 手の平を揉み合わせ、必死におべっかを使う商人に一瞥も与えず、ジェネはセレナと言った妖精族の娘を観察する。

「もし事実なら、その他の奴隷も買い取らせてもらおう」

「へへーっ!」

 平伏しかねない勢いで商人は頭を下げ、満足そうにジェネは頷いたのだった。結局ジェネはその日奴隷を3人ほど購入した。

 風の加護を受けるセレナ、戦うための奴隷である奴隷戦士シュメアとヨーシュの姉弟

を手駒として揃えた。


◇◆◇


 アシュタール王の治める王国の王都は、当然ながらその国一番の繁栄を誇っている。それは物流と商業の中心としての役割を果たしているからなのだが、そうすれば当然揉め事も多くなってくる。

 その為に王都には、アシュタール王直轄として治安維持を担う近衛軍。王の近辺を守る為に生まれた御前軍。さらに外征を目的とした騎士団がある。

 そして近衛の兵士の一人であるユザは目の前の事態に、自身の運の悪さを呪いたくなった。

 目の前には盛大に横倒しになった馬車と取り囲む厳つい男達。実戦を重視したのであろう装備は使い込まれており、その武威の確かさは身に纏う雰囲気で察せられる。

 そうして横倒しになった馬車を背に、盛大に気焔を上げているのは田舎から出てきた貴族だ。その貴族を守るようにして、護衛が主を守ろうと壁を作っている。

 冒険者と貴族との争い。

 この面白そうな雰囲気に周囲には野次馬の群れが十重二十重に成り行きを見守っている。

「ユザ様、どうなさいますか?」

 平民出身の下級兵士の言葉に、思わず舌打ちした。

「どうするもこうするも、事情がわからんだろう!」

「ああ、それなら私見ていました。あの冒険者達の一人が、馬車の前に飛び出た子供を助けたんですよ」

 訳知り顔で忠告してくる平民の主婦に、睨みを利かせる。

 余計なことをと思わないでもないが、割って入るには少し遅すぎたかもしれない。これだけの騒ぎになっているのだから、あの田舎貴族にもメンツがあるだろう。そして名前を売りにしている冒険者としても退くに引けない。

「ええい、どうして俺が当番の日にこうも厄介事が回ってくるんだ!」

 ため息交じりに信じてもいない神に罵声を浴びせると、野次馬の背後から大声を上げる。

「何事だ! 王都で騒ぎを起こすとは、アシュタール王の威光を恐れぬか!」

 強引に野次馬の間に体を割り込ませ、配下の近衛衛士達を率いて現場に駆け付ける。とりあえずは野次馬を解散させることだ。

 近衛の上級衛士、しかも兵を率いる立場の者は傲慢なぐらいなちょうどいいと言われる。近衛の上級衛士に就いた当初は何を馬鹿なことを、と笑っていたがユザは日々そんな上級衛士に近づいているのを自覚せねばならなかった。

「野次馬どもを追い払え、見せものではないぞ!」

 自分自身の心構えとは裏腹に、周囲からは傲慢な衛士と見られる。それも職務の内と腹を括って職務をこなすが、胃痛の種は一行になくなりそうにない。非難を口にする野次馬どもを追い払い、事件の当事者達に向き直る。

「貴様ら、天下の往来で一体何の騒ぎだ!」

 田舎出の貴族だろう、小太りの男が冒険者たちの非難を捲し立てる。

「ええい、分かった!事情は詰め所で聞こう!とりあえず全員同行せよ!」

 怒り心頭の貴族と比較的冷静な冒険者達を別々に衛士の護衛をつけて詰め所まで連行する。馬車は下級衛士に任せ、全員を詰め所に引っ張ってく。

 近衛の詰め所。

 仲間内では養豚場と呼ばれる場所に全員を押し込む。

「よぉ、ユザ。まったくお前さんは出るたびに厄介なのを連れてくるな」

 揶揄う同僚の声を一喝して、全員の身元を確認する。

「北方のベーヌ男爵? くそ、田舎貴族が何故こんなところまで来て、なおかつ俺に迷惑をかけやがるんだ!」

 今にもブチ切れてしまいそうな感情を固いパンと一緒に噛み砕く。

「冒険者の方は、飛燕の血盟(スワロークラン)……冗談だろう?」

 血盟クランとは冒険者同士のグループのことを指す。依頼をこなす為に、大人数を組むことはよくあるが、臨時に組まれるそれをパーティーと呼ぶのに対して、より長期的に依頼をこなしていくために組まれるのが血盟クランと呼ばれるものだ。

 組合ギルドが仕事を斡旋するのに対して、クランの方はその依頼をこなしていく上でのグループである。

 その中で力のあるクランに所属していることは一種のステータスにもなる。そして飛燕の血盟と呼ばれるクランはその力のあるクランの一つだった。

「金剛力のワイアード、破杖のベラン、魔術殺しのミール……随分有名どころが集まってやがる」

 全員の身元を確認した近衛衛士ユザはため息をついた。

 成功した冒険者というのは役者に近い花型の職業だ。己の腕一つで成り上がり、世に公然と自身の存在を主張する。彼らのうち優れたものはその業績を表すに相応しい二つ名で呼ばれることもある。

 並大抵の努力ではないのだ。その二つ名持ちが3人も。それだけで飛燕の血盟が抱える人材の豊富さが分かろうというものだ。だが、何故だと思う。

 通常これほどの大規模なクランならば、この国だけでなく他所の国での活動もしているのだ。本拠地をここに置いているとも聞いてない大規模なクランが、それもこれだけ豪華なメンツを連れて歩いているとあらば、不審に思わずにはいられない。

「お、おいユザ!」

 思わず思考の海に沈む彼の元に、同僚が息急き切って飛んでくる。

「なんだ!? うるさいぞ!」

「あ、ああらしのせいきしの!」

「なんだ、衛士らしくもない! 衛士は冷静沈着であれと日ごろから言われているだろう!」

「嵐のガランドが養豚所の前に来てるんだよ!」

「なんだと!?」

 冒険者の英雄ガランド。嵐のガランドの二つ名をもつ聖騎士。そんな危険なシロモノが養豚所の前に居る。

「一体何の用だ!?」

 慌てて飛び出したユザが目の前に堂々と仁王立ちするガランドに詰問する。

「おう、実はな。俺の客人がここで厄介になってると聞いてな」

「飛燕の奴らか」

「そうそう。わざわざギルドに頼み込んで呼び寄せたのに、要らん道草を食っていると聞いて慌てて来てみたわけだ」

 ちっとも慌ててなさそうな尊大な態度で堂々と宣うガランドに、ユザは頭痛を感じる。

「手続きが済んでおらん。それまでは待ってもらおう」

「おう。ここで待たせてもらうからそのつもりでな」

 ぎり、と歯を噛み締めるユザはガランドに背を向けて養豚所に引き返す。

「くそ、ぎりぎりまで待たせてやる」

 治安維持の観点から見れば厄介事を引き起こす冒険者という存在は目障りで仕方がなかった。それもこれも彼らが腕が確かな上に、貴族という連中と仲が悪いのが原因だ。

 依頼する側と依頼される側。

 本来なら蜜月が形成されてもいいと思われるが、絡むのは利害だ。そしてこと身銭を切るのが苦手なのが貴族という人種。

 命をかけて仕事をこなす冒険者と険悪になるのは当然といえた。

「……どうしたお前ら」

 目の前に並んだ同僚が差し出した書類に、怒りで我を忘れそうになっていたユザが瞬きを繰り返す。

「必要な書類は全部ある。さっさとアレに帰ってもらえ」

「いや、しかしだな……」

「しかしも何もあるか!」

 食い下がるユザを一喝したのは彼の上司。近衛軍の長だ。

「さっさと解放せよ。これは命令だ」

「はっ……」

 上司の命令には逆らえない。すぐに手配をすると、飛燕の面々は思い思いに養豚所を出て行った。

「嵐のガランド。あんたが手配してくれたのかい?」

 飛燕の金剛力ワイアードが問いかける。

「なぁに、俺の依頼で来てもらったんだ。邪険にもできまい?」

「世話になる」

 破杖のベラン。

「……宿だ」

 ぼそりと呟くのは魔術殺しのミール。

 強力な助っ人を得たガランドは、にやりと太い笑みを浮かべた。



◆◆◇◇◆◆◇◇


【個体名】セレナ

【種族】妖精族

【レベル】32

【職業】奴隷

【保有スキル】《弓技C+》《森の声》《魔素操作》《風の囁き》《風神の息吹》《森の民》

【加護】風神

【属性】風

【状態異常】《従属の首輪》により身体能力30%降下。



【個体名】ヨーシュ

【種族】人間

【レベル】46

【職業】奴隷戦士

【保有スキル】《剣技C+》《挑発》《幻想の盾》《熟練の手腕》《シールドラッシュ》《炎刃》

【加護】炎神

【属性】火

【状態異常】《従属の首輪》により身体能力30%降下


【個体名】シュメア

【種族】人間

【レベル】67

【職業】奴隷戦士

【保有スキル】《槍技C+》《大車輪》《三段突き》《高速刺突》《受け流し》《風車》

【加護】炎神

【属性】火

【状態異常】《従属の首輪》により、身体能力30%降下



◆◆◇◇◆◆◇◇




しばらく出張のため更新ができません。

7月の半ばぐらいには更新したいと考えています。



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