ステータス
【種族】ゴブリン
【レベル】14
【階級】ノーブル・群れの主
【保有スキル】《群れの統率者》 《反抗の意志》 《威圧の咆哮》 《剣技C−》 《強欲》
【加護】なし
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意識を集中すれば頭の中に浮かぶ“ステータス”の存在。
占領した集落に居た老ゴブリンの指導を受けて、意識を集中させると浮かび上がってきたそれに、俺は最初困惑した。
自分の能力を知るのは非常に大事だ。
だがそれを、こんな明確な数値や言葉で表示されると……。レベルやらスキルやら、果ては【加護】だと?
益々ファンタジーに傾いた現実に、苦笑を禁じ得ない。 俺が進化と感じていたのは、階級を上げる行為だったらしい。
ステータスを見れば分かるが、レベルとは現在の階級の中での強さを表している。
ゴブリン・ノーブルのレベル14というのが俺の種族としての強さであり、ゴブリン・レアであれば……
【種族】ゴブリン
【階級】レア・群れの主……となる訳だ。
更に【保有スキル】に至っては、その効果までもが薄っすらと浮かぶ。
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《群れの統率者》:支配下の部下の身体能力上昇(小)
《反抗の意志》:上位種族からの威圧に対して耐性(小)
《威圧の咆哮》:自身より階級が低い者の行動を鈍くする。同じ階級ではレベルに依存する。配下に対しては命令を強要する
《剣技C−》:剣の使い方に補正
《強欲》:率いられる群れの数増加(小)
……普通は生まれてから直ぐにこれを見る術を身に付け、狩りに出かけるのだそうな。
俺の場合は離反した群れに所属していたのと、群れにこれを引き出せる人材が居なかった為、今まで放置されていたというのだから笑えない。
離反者達、短気過ぎるだろう……。
スキルというのは進化と同時に増えていったり、様々な条件を満たすことで身に付くもの……だと思われる。あくまで経験則だが。
《群れの統率者》と《強欲》辺りは、持っていて非常にありがたいものだ。特に俺の野心を満足させる為には、なくてはならないものと言って良いだろう。
《反抗の意志》というのは、心当たりがない訳でもない。
オークとの戦いを通じて身体が動いたことが、このスキルが発揮されたということなのだろう。或いは、その戦いを通じて身に付いたのか?
普通は咆哮を受けただけでゴブリン・レアでも身体が竦んで動かないらしいからな。気合と根性だけじゃなかったらしい。
そう考えると、俺の群れの前のリーダーもこのスキルを持ってたのか? 曲がりなりにもオークに挑んでいたような気がするが。
まぁ、死んだ奴の事など考えても仕方ない。剣技については、多分刃の欠けた長剣を使っているからだろう。
C−がどの程度なのか分からないが、適正無しってことはないだろう、多分。
何れ他の得物を試してみても良いかもしれない。
《威圧の咆哮》については、割と多用している気がする。この集落を占領した時、ゴブリン・レアを屈服させた時にも使ったような気がする。
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大まかに自分の能力を把握すると、次は集落についての情報を整理する。
そもそも、50程居た筈のゴブリンの群れが何でこんなにも弱体化しているのか? お陰で余計な争いも無く占領することが出来たが、事情を聞いた俺は改めてゴブリンのヒエラルキーの低さに苦笑を禁じ得なかった。
直ぐ近くに移り住んできたオーク共に圧迫されているらしい。
俺に屈したゴブリン・レア──名前が無いからギ・グーと名付けた──は、既に離反グループが出た時のリーダーではないそうだ。
その時から数えて三代目だというのだから、どれだけ圧迫が酷いか分かる。
余談だが、名前を付けてやったギ・グーは矢鱈と感激し、俺に懐いてきた。どうやらゴブリンのコミュニティでは、名前を付けられるというのは非常に名誉なことであるらしい。
因みに、もう一匹のゴブリン・レア──最近槍がお気に入りの──はギ・ガーとしておいた。
名前の付け方?
鳴き声以外に何があるよ?
我ながら安直過ぎると思わないでもないが、他に思いつかなかったので、これで通すことにした。
ゴブリン・レアになった者から名前を付けるというルールを作り、備蓄と武器の点検に移る。
小さな集落だったので探すのに苦労はしなかったが、その装備の貧弱さにちょっと悲しくなった。
備蓄は、殆どゼロと言っても過言ではない。
その日に獲ってきた物が全てだ。
たまたま多く獲れた日には翌日分ぐらいまではあるらしいが、基本的に今あるものは全て腹に収めてしまうのが普通らしい。
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装備に関しては、破損状況が目立つ皮鎧に、錆びた鉄槍。盾などという上等なものは無く、ヘルムとかも無い。
この集落に元々あった小振りな手斧が数本と、農作業に使うフォークと小さな鎌。後は作業用のナイフくらいだ
最早、文字通り自分達の身体を武器にしているのだろう。
だが、それでは傷付く個体が増えてこの森での生存競争において不利になるばかりだ。
槍持ちのギ・ガーに命令して、罠の使い方を教えさせる。それと同時に、既に罠の使い方を知っている手下を使って食料を集めさせる。
元リーダーのギ・グーに命令させて、オークの数と居場所を調べさせる。前回と同様に、生きて戻ることが最低条件だ。行動範囲と数。それだけを調べるように命じて、手下を放つ。
占領した集落の人口……いや、ゴブ口? まあ、どっちでもいいが、全体としての数は50程だ。
その内、戦闘員として数えられるのが20程。老人や幼生などが30程だった。
幼生は早々に成長してもらって、狩りに加わってもらわねばならない。
罠の使い方を覚えさせたら、早速幼生達の教育を始めねばならないだろう。
そして、俺の最大の関心事。
ゴブリンの繁殖についての問題だ。
集落全体でのゴブリンの雌の数は10匹。
幼生の中に3。戦闘員として数えているのが7だ。
更に他種族から攫ってきた雌が監禁されていた。その数、3人。
人間の娘だった。既に腹の膨れている者も居る。
自分でも驚いたが、化け物になった筈の俺は、それを見て苛立ちを感じていた。そんな自分に戸惑いながら、努めて感情を追い出す。
打算と利益に基づいて、監禁されている雌の価値を考える。
何もかも足りない現状。或いは人間の手があれば、もっと早く態勢を整えられるのではないだろうか?
「おい、娘」
見下ろしながら俺は声を掛ける。
だが、無駄なことだった。虚ろに揺れる瞳には何も映ることは無く、ぶつぶつと呟くのは死への懇願。同様の状態の3人を、俺は憎悪さえ込めて見下ろした。
既に心が壊れてしまっている。この娘達は意志無き人形だ。
ただ望まぬままに異形の子の幼生を生み続ける母体。それ以上でもそれ以下でもない。
「ああ、そうか……」
或いは、この中に俺を産み落とした者が居るのかもしれないと気付いてしまった時点で、俺は処分を決めてしまっていた。
首筋を一閃。これ以上の苦痛を与えないように、俺の母親かもしれない者達を殺していく。
涙は出なかった。
抗議する老ゴブリンを殺意を込めて視線で黙らせると、枯れ木を小屋の周囲に積み上げる。
鎮魂の炎は空を赤く染めて、小屋一つを丸々焼き尽くす。
握り締めた拳は、一体何の為に──。
炎が完全に消え去り、手下が獲物を持って帰ってきたのを確認して、俺は眠った。
◇◆◆◇◇◆◆◇
【スキル】《彷徨う魂》を獲得。
──未だ未覚醒のスキル。今後の経験によって変質する。
【加護】冥府の女神の加護を獲得。
──属性として闇と死が追加。
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3/7《威圧の咆哮》を修正。




