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ゴブリンの王国  作者: 春野隠者
遙かなる王国
362/371

軍師二人

 ラーシュカ戦死の報は、それを確認したギ・ガー・ラークスによって直ちに撤退していた本隊へと届けられた。王の意識が戻らない今、その報告に最も衝撃を受けたのは、ゴブリン達ではなくプエルであったのかもしれない。

 四度敵の創り出す鉄の海に沈もうとも、その度に復活し、終には敵将を討ち取った。

 壮烈な戦いと死に様とを余すこと無く伝えたギ・ガーにより、本隊は士気を保ったままバンディガムを通過、エルファへと進路を取った。

 その中で、プエルはギ・ザー・ザークエンドより一つの策を献策される。

 このままバンディガム要塞を放置するのは如何にも拙い。誰か適当な将を配置して守らせ、時間を稼ぐべきだと。確かに、バンディガム要塞はエルファとアーティガンドの国境に建造された要害の地。黒き太陽の王国(アルロデナ)でさえ、力攻めよりも策略を持って落とそうとした場所だ。

「人選は此方に任せてもらおう」

 プエルの許可の返答に、ギ・ザーは頷く。

「……貴方に動揺はないのですね」

「ある筈もない。俺達にとって、死はいつでも身近にある」

「そう、ですか……」

 驚くべきことに、主要な将であるラーシュカの死を知ってもアルロデナの士気は落ちなかった。寧ろ、ゴブリンらはラーシュカの戦い振りと勝利を讃えこそすれ、死を悼むということはなかった。

 逆に気を落としたのは人間や妖精族などのゴブリン以外の種族だった。ラーシュカとは、良くも悪くも戦場におけるアルロデナの武の象徴だったのである。

 暴勇とも言える圧倒的な力で敵を撃破し、勝利の呼び水となったことは幾度と無く在る。それを目にしている者達にとって、ラーシュカの戦死は巨大な喪失感となって彼らを襲った。

 それはプエルとて例外ではなく、幾度と無く戦場を共にした戦友と呼べる者の死に心を傷めていた。心の乱れは策の精度を下げる。それを知るからこそ、プエルはギ・ザーの策を受け入れたのだ。

 アーティガンドの追撃を防ぎ、時間を稼いで王の回復を待つと同時に、西から援軍を待って軍勢を整える。それを主眼に置かれた撤退からの再戦を想定したアルロデナの動きは、実質ギ・ザー・ザークエンドが仕切っていたと言って良い。

 ラーシュカの奮戦により辛くも勇者の軍勢の追撃を振りきったアルロデナは、バンディガム要塞の後方、山岳地域の城塞化を開始する。

 嘗てゴブリンの王がシュシュヌ教国の戦姫ブランシェ・リリノイエを破った時の築城戦術を再現しようというのだ。騎馬兵による突撃の防止を企図した、幾重にも渡る塹壕。斜面を登ってくる敵に対しての大小様々な石や丸太。

 更にプエルの提案で攻城兵器である機械大弓(バリスタ)を空へ向けて配置させる。これは飛竜騎士団への対策だったが、同時に飛翔艦に対する備えでもあった。どこまで通用するのか分からないが、それでも無いよりはマシだろう。止めとばかりにギ・グー・ベルベナ配下の戦奴隷達を活用して投石機の製造に着手する。

 そして以前に作った砦を改修すると共に、対飛翔艦用に地下壕を山岳地域全域に張り巡らせた。元々鉱山地帯であったエルファ側の地域は、それこそ無数に張り巡らされた坑道を更に蟻人(キラーアント)の新たな女王が統治する巣穴とする為に貸し与えていたのだが、彼らの力を借りてそれを更に延長し、拡大させる。

 地下要塞化された山岳地帯を以って、アーティガンドへの盾としたのだ。そして、その将には千鬼兵(サザンオルガ)のギ・ズー・ルオが充てられる。本人の熱烈な志願もあったが、それ以上に主要な4将軍の率いる軍勢は、再編と来るべき決戦への温存が考えられていたからだ。

 四散分裂したギ・ガー・ラークスの槍と虎獣の軍(アランサイン)は、再編の真っ最中。

 ギ・グー・ベルベナの斧と剣の軍(フェルドゥーク)、並びにギ・ギー・オルドの双頭獣と斧の軍(ザイルドゥーク)は、共に西方からの兵力の補充を待たねばならなかった。

 残った弓と矢の軍(ファンズエル)に対しては、後方の安定という重要な任務が割り振られる。対シュシュヌ教国戦において後方を乱された為に兵力の補充を絶たれそうになったことを、ギ・ザーは屈辱と共に教訓としていた。

 何より、あの時と比べて対するのは勇者という得体のしれない存在だ。顕現した戦神(ヴァイシュラ)すら退ける武勇と、人間を感化するが如き圧倒的な力。

 それ故に、平定間もない国内を騒がせることは容易に想像された。兵力を硬軟自在に使い分けられるラ・ギルミ・フィシガにしか、この役目は与えられない。

「我らが山岳地域を固めれば、敵は当然他の道を探します」

「分かっている」

 ギ・ザーから策を提案されたプエルは、その詳細を聞き、指摘する。それに対するギ・ザーは務めて冷静にその指摘に答えてみせた。

「先ず考えられるのは、南方航路」

 指差すのは、アルロデナがエルファと争っていた時の輸送経路だった。魚人の協力と上陸後の輸送路の遮断で切り抜けたが、輸送経路自体は健在である。航海図はアーティガンドの商人達の手元にあり、アルロデナ側からでは今から入手することは困難だった。

「亜人達と妖精族を使う」

 妖精族は火と水、そして少数ながらも土の妖精族の本拠地が近く、呼び寄せ易いこと。亜人達は、それぞれの持つ得意技能によって役に立つからだ。

 無論、戦いに向いた者達は戦力として活用せねばならないが、それ以外の者達にも、それぞれに役割が割り振られた。

 長尾の一族の族長タニタは、引き続き魚人との交渉に当たる。可能であるなら、彼らに戦術的な行動を教えることも付け加えられた。川に住む魚鱗人(リザードマン)達も、防衛戦力として海岸付近に配置される。

 牛人の一族は族長ケロドトスと共に王の座す都(レヴェア・スー)から前進を開始している。怪力を誇る彼らが輸送隊となり、戦に必要な様々な物資を運ぶ。

 土鱗の一族はファンファンを中心に虫人達との交渉を開始。彼らを住居から引き離して森林を横断させ、東へ向かわせる。

 甲羅の一族は主要な者達が抜けた森林と平原を守り、蜘蛛脚人の一族は主要な都市を守る。そして翼在る者は危険を顧みず低空を飛び、偵察と哨戒に従事する。

 妖精族は伝令兵として最前線で戦うと共に要塞の構築を急ぐ。火と水の妖精族は、それぞれの有力者が建築に携わっている。レヴェア・スーの王城建築にも発揮されたその才能を、要塞の為に使おうというのだ。

「彼らには空があります」

「無論、そちらも考えてある。龍共を使う」

 どれだけ地上や海上からの侵攻経路を固めても、敵には空が在る。

 現状で唯一、勇者の軍勢の飛翔艦に対抗出来ると思われるのは、翼なき空蛇ガウェインと眷属達だ。

「交渉は俺がする」

「そこまで考えておられるなら、何も言うことはありません」

「お前にも仕事をしてもらう」

「……何でしょう?」

「どんなに山岳地帯を要塞化しても、二ヶ月は保たん」

「……そう思います」

 アルロデナの軍勢の中心はゴブリンであり、彼らが生まれるのは西の最果てである暗黒の森の深部である。ゴブリンの王の統治以後、深淵の砦をその住処に定めた彼らが大陸を横断して最前線に到達するまで、人間の足なら街道を使っても90日以上は掛かる。ゴブリンならば、70日に縮める事も可能であろう。

 だが、それでは遅い。

 如何に要塞化したところで再編が叶うまでの時間が圧倒的に足りない。故に、ギ・ザーはその時間を宰相プエルの手腕で短縮せよと言っているのだ。

「どこまで短く出来る?」

「二ヶ月」

「……」

 視線が鋭くなるギ・ザーに、プエルは力強く言い切った。

「二ヶ月で再編を終えます。その為に必要な物資や人員、武器に至るまで、全て揃えてみせましょう」

「ふん、当然だな」

 ラーシュカ戦死の報に触れてから塞ぎ込んでいたプエルの断固とした力強い言葉に、ギ・ザーは口元を歪めて笑った。


◆◆◆


 プエルは各地の文官に命じて、車と名の付く物を片っ端から集めさせた。馬車でも、牛車でも、人力車でも、荷を積んで運べるならば形状は問わなかった。それを商人を中心とした人間達に貸し与え、充分な対価を払って物資を満載させたそれを最前線に送り届けさせたのだ。

 宰相令として発せられた報せが各地の旧王国や領主・総督達に届くと、台頭著しい彼らはそれの実現に向けて辣腕を振るい始めた。

 西都総督ヨーシュ・ファガルミアなどは、商人らに西都から最も速く到達した者に対価とは別に賞金を出すと宣言し、大々的に告知を行って彼らの競争心を煽った。

 他にも、旧エルレーン王国の宰相エルバータ・ノイエン。ギルド総支配人ヘルエン・ミーア。遠征軍の補給全般を統括していたガノン・ラトッシュなど。

 ゴブリンの王の統治下で頭角を現してきた人間のほぼ全員が一丸となって力を注いだのだから、成果は火を見るよりも明らかだった。この時のアルロデナのなりふり構わぬ戦力の集中は、不可能を可能に変えたとまで称賛された。

 まるで祭りのような狂騒の中、訝しむゴブリン達を武器や防具と共に馬車に詰め込んで最前線まで送り届けるという一大行事は、アルロデナの建国以来初めてのことである。

 中でも、旧シュシュヌ教国の三大貴族クシュノーアは赤字を覚悟で投資した。ギ・ザーによって緩やかな破滅しかない未来を突き付けられた際にプエルに救ってもらった恩を感じていたのもあるが、当主のシャルネイ・クシュノーアは今こそ傾きかけた家運を盛り上げるとばかりに、莫大な献金をしてまでアルロデナの勝利に賭けた。

 家中の反対を押し切ってまで断行された投資は、根が臆病で繊細なシャルネイの一世一代の大決断だった。こと経済に限って言えば、弱体化したリリノイエ家や屋台骨が揺らいでいるアガルムア家に比べて、その影響力は未だ健在である。経済を支配する商人達の中でプエルが養成した商家ばかりでなく、敵対的な商家までもがアルロデナに協力したことに宰相プエルの功績とその辣腕が垣間見える。

 ギルド総支配人ヘルエン・ミーアは、各地の冒険者に質の良い武器防具の買い取りを宣言した。最前線で戦う者達の為に金に糸目を付けずに掻き集められたそれらは迅速にゴブリン達に供給された。また、トレジャーハンターと呼ばれる魔窟の探索を専門とする冒険者達の中から腕の確かな者達が抜擢され、ギルドから魔窟の踏破と財物の回収が特別に依頼された。

 血盟(クラン)赫月(レッドムーン)誇り高き血族(レオンハート)戦乙女の短剣(ヴァルキュリア)などの有力な血盟の探索部門は言わずもがな、拠点を外洋の列島や島国に移した血盟(クラン)飛燕(スワロー)にまで知らせる念の入れようであった。良質な武器を最前線に送り届けるべく、アルロデナの有力者達は大陸中に声を掛け続ける。

 更に、雪鬼の一族や北方領主リィリィらから僅かながらも援軍が届く。

 そのような慌しい中でゴブリンの王が意識を取り戻す。王が先ずしたことは敗戦の責任を自分のものとした上で、現状の確認、そして再度の勇者との決戦の意向を示したことである。

 ラーシュカの戦死に関してもガイドガ氏族に変わらぬ保護と権利を約束し、プエルに対しては気にするなと肩を叩いただけだった。

 レシア喪失の報にも、表面上は殆ど動じることなく頷くばかり。

「我は、最早動じぬ。この先、決戦にて勇者を破り、世界を制覇するまで、我らの進撃は止まらぬ!」

 ゴブリン達はその勇姿に忠誠を新たにし、他種族も強い王の存在に胸を撫で下ろした。

 そして、最も奮起したのは誰あろう宰相プエルである。

 王不在の撤退戦を闘い抜き、少なからず犠牲を出しながらもそれを成し遂げた彼女に、王は称賛と感謝を捧げた。彼女は彼女で、ラーシュカの戦死とレシアの喪失を筆頭とする不手際を王に詫びた。

 この時期に至っても、ゴブリンの王は占領地域からの人間の大量動員という手段を取っていない。一つにはギ・ザーの進言。もう一つは王自身の考えがあるからだった。

「死兵になれぬ者は要らん」

 冷酷の評価が付き纏う軍師ギ・ザーの言葉は、正しく敵の実像を捉えていた。集められたゴブリンの兵士は過酷な訓練を施される。暗黒の森での狩りが気楽な散策に思えるような、各将軍らによる徹底した実戦形式の訓練である。それに耐え抜いて初めて、彼らは兵士と認められるのだ。

 もう一つは、此処に至ってもゴブリンの王が、戦とは各種族の戦士達と訓練された兵士が行うものであると考えていたことだった。農民を動員すれば確かに頭数は増やせるだろう。圧倒的な大軍というのは、それだけで戦力である。だが、その分どうしても練度は落ちるし、死傷者の増加は後の治世の妨げになる。

 何より、嘗ての戦いで数に勝る敵軍を何度となく蹴散らしてきたゴブリンの王からすれば、やはり数よりも質を重視したいというのが本音であった。

 王の回復を待っていたかのように、各地から続々と物資が届く。

 西方の暗黒の森から青銀鉄(スリラナ)玉鋼鉄(オレイカルコス)製の武具が続々と届く。妖精族の中で最大の勢力を誇る風の妖精族の全面支援の下、小人達による武具の量産体制が確立した為だった。

 そして、ゴブリンの王にも一本の大剣が献上される。鍛工の小人(コロ・ドワルフ)最高の刀匠、ダンブル・ダビエ・ダビデの生涯最後の一振りが。

 銘を漆黒の太陽(アルディア)。真新しい大太刀(グレートソード)に添えられたその一文を見て、ゴブリンの王は刀匠ダンブル・ダビエ・ダビデの死去を知った。

 刀身に浮かぶ刃紋は濤乱刃。深く透き通るような鋼は、魔素を流すとその色を漆黒に変えて伝導率を跳ね上げる。青銀鉄と玉鉄鋼の特性を良く理解した上で、それらを混ぜ合わせた刀匠珠玉の逸品だった。偽神鉄(フィ・ラーガ)、或いは星屑鉄(ダーシェア)と呼ばれる合成鉱物は長い時間を掛けて作られる為、決戦までには王の大剣一本のみしか用意出来なかった。

「有り難く受け取ろう。偉大なる刀匠ダンブル・ダビエ・ダビデに心からの感謝と弔意を。弟子のクルト・ビルデ・ダーシュにも礼を届けておいてくれ」

 ゴブリンの王はエルファの最も高い尖塔に立ち、東を見る。倒すべき敵が居る場所を。ギ・ズーが死力を尽くして戦っている場所を。そして取り戻すべき者が居る場所を。

 一ヶ月を経過した時点で、西方から集められた兵士達はエルファに集っていた。その数凡そ三万。遠く暗黒の森から参戦したゴブリンの中には、パラドゥアゴブリンの元族長アルハリハの名代、アッラシッドも含まれていた。

「来てくれるとは思いませんでした」

「なに、この一大事に森でぬくぬくとしていては、アルハリハ翁に叱られます」

 ギ・ガー・ラークスは嘗て危機を救ってくれたアッラシッドに友情に似た感情を抱いており、それは今でも変わりなかった。

 集められた兵士達は後一ヶ月の間に訓練を施され、最低限戦力として活用出来る範囲まで練度を上げねばならなかった。


◆◇◆


 大量動員の見本とも言うべき敵は、既に進路をバンディガム要塞に定めていた。ラーシュカとガイドガ氏族による死を賭しての逆撃は、勇者の軍勢の追撃を止めることに成功している。

 勇者は戦神(ヴァイシュラ)に負わされた傷の回復の為に最前線に出ず、その為に彼と近しい聖人化した少女達も最前線には現れなかった。専らゴブリン達と相対したのは義勇兵達である。遠くアーティガンドの東部や、小さな宿場町、或いは辺境都市と呼ばれる大都市まで。まるで熱病に浮かされたように誰もが手に手に武器を取り、気勢を上げて西へと進軍していく。

 その数、凡そ30万。

 ラーシュカが食い止めた軍勢など先遣部隊に過ぎなかったのではないかと思える程、勇者は膨大な数を動かしていた。男も女も子供も、老人達ですら行軍に加わっていく。耕すべき田畑を打ち捨て、商うべき商品を投げ打ち、祈りを捧げる神の名を唱えながら、彼らは進む。

 夫は妻と共に、子供は友人達と手を取り合って、貴族すら先を争って西を目指す。

「神がそれを望んでおられる!」

 この時、この恐るべき動員の先頭に立ったのは東方教会の司教である。

 聖騎士団という武力を持っているにも関わらず、彼らが全面に出てきたのは、一つにはアリエノールらが最前線から引いたという事情もある。勇者の意思の侵食によって情緒不安定となったアリエノールらは、一旦最前線を退いていた。

 変わって出てきたのが、熱狂に身を焦がす司教らである。

 戦術など何も知らぬ彼らが立てる作戦など、たかが知れている。犠牲を顧みず突撃し、屍の山を築いて敵を疲弊させて討ち取る。如何に強者とて、昼夜間断なく30万もの兵力に攻め立てられては疲弊もしよう。

 熱狂的再征服活動(レコンキスタ)と呼ばれた一連の行動に、アルロデナ側で最初に相対したのはギ・ズー・ルオである。ラーシュカ戦死の報を聞いたギ・ズーは最初、それを受け入れられなかった。あの傲慢なラーシュカが簡単に死ぬ筈がないと。

 そう思いたかったが、知らせたのが尊敬するギ・ガー・ラークスでは疑うべくもない。次いで押し寄せた感情は猛烈な怒りだった。

 己が越える筈だった者が、永遠に越えられない所に逝ってしまったと理解した時、ギ・ズーは怒りに眦を裂いて悔しがった。

「冥府でも、俺はあいつに小僧扱いされるのか! おのれラーシュカ! 勝手に死におって!」

 その場に崩れ落ちると、地面を叩いて吠えた。故に、彼がギ・ザーの提案する策に乗ったのは当然であった。

「俺が王のお役に立つところを、冥府で指を咥えて見ているが良いわ!」

 サザンオルガは、ギ・ズーに心酔する武闘派ゴブリンで構成された軍である。体格に優れるズー・ヴェドを始めとした彼らはギ・ズーの行く所、火の中でも水の中でも付き従う。

 王暦5年、盛夏の頃。バンディガム要塞の尖塔から見下ろすギ・ズーの前に、濛々たる土煙を上げて義勇兵30万の大軍が迫っていた。

 

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