陥落する辺境
火を噴くような、という形容詞が霞むような圧倒的な攻撃が展開された。
ラ・ギルミ・フィシガ率いる弓と矢の軍よりも激しく。或いはギ・ギー・オルド率いる魔獣軍からなる双頭獣と斧の軍よりも合理的に。ギ・ガー・ラークス率いる虎獣と槍の軍よりも熱狂的で、ギ・グー・ベルベナが率いる斧と剣の軍よりも獰猛。
ゴブリンの王に率いられた、黒き太陽の王国軍はバンディガムを攻め立てる。
ゴブリン達は、王に率いられてこそ真価を発揮する。
嘗て西の果てで聖騎士ゴーウェン・ラニードを破った時の如く、彼らは変わらぬ雄叫びを挙げる。
「もっとだ、もっと石弾を撃ち込め!」
ギ・グーの怒号に応えて、人間の戦奴隷からなる部隊が投石機に弾を込める。昼夜問わぬ攻撃は、既に3日にも及んでいた。飛竜騎士団を警戒して南北へと奔らせたアランサインとザイルドゥークも、バンディガムの包囲に加わっている。
叫ぶ声は、ただ一つ。
“王に勝利を!”
エルファ産の豊富な鉄資源に支えられた攻城兵器の群れは、既に城壁に取り付き、破城槌は城門を叩いている。
アーティガンドの頼みの綱である飛竜騎士団すらも、あまりに激しい投石機の攻撃に飛び立つ機会を逸しているのが現状だった。
三日前、奇襲的にバンディガム要塞を包囲したゴブリンの王とフェルドゥークは、夜明けと共に投石機での攻撃を開始した。
小石を混ぜた投石は一度放たれれば散弾のように飛散し、飛び立とうとする飛竜の頭上を抑える役目を担っていた。
地下道を掘る過程で生まれた小石や岩を断続的に地上に運び出し、それを投石機に装填すると、すぐさま投射する。包囲を敷くと同時に投石機の弾の補給路まで整える手腕は、名宰相プエル・シンフォルアの指示によるものだった。
充実し始めた文官達を使いこなす宰相という地位は、最終的に兵站の力となって最前線を後押しする。民家にも相応の被害が出るが、アルロデナが攻撃の手を緩めることはない。
最前線で敵の怨嗟と恐怖の視線を引き受けるゴブリンの王の姿が、兵士達の心を奮わせる。
その偉大なる背中が、彼らに命じるのだ。
“いざ、共に進まん!”
ゴブリン達は喚声を上げ、自分自身と仲間の魂を奮わせる。その様は、アーティガンド側から見ればこの世の終わりのような狂信的な光景であった。王に心服するゴブリン達は、歓喜と共に城門に向かって突撃を繰り返す。
「……そろそろか」
「はい。よろしいでしょう」
三日目の攻撃を終えて、ゴブリンの王とプエルは密かに頷き合った。
昼夜を問わぬ攻撃の合間に、既に地下道は完成している。後は、いつそれを使うのかという問題だけであった。予期せぬ地中からの攻撃は、当然ながら奇襲となる。
ラーシュカ率いるガイドガ氏族に対抗意識を燃やすギ・ズー・ルオを使うと決めたゴブリンの王の決断は、ギ・ズーに対する厚い信頼と戦意の高さを買ってのことだった。
3日に及ぶアルロデナの攻撃に、バンディガムは疲労困憊だった。ゴブリンの王に率いられたゴブリン達は、正に熱狂の只中にある。疲労も、恐怖も、全てを忘れて彼らは王に従うのだ。それは苛烈な攻撃となり、昼を夜に変える程の投石の豪雨となって籠城する人間達に襲い掛かった。
3日ぶりの静かな夜に、要塞の人間達は殆ど倒れ込むようにして眠りに落ちた。
未だ多少なりとも余裕のある者は、ゴブリン側の再度の攻撃に備えて城壁の上から警戒を絶やすことを忘れなかった。だが、その数は決して多くはない。
ガランド率いる辺境軍の一部や、ユアン率いる聖騎士3番隊の一部など、極々少数ではあったが、彼らは長く辛い籠城戦や悲惨な撤退戦を通じてゴブリンとの戦いに慣れていた。
彼らは必要以上に緊張せず、常に自然体ですらあった。
常に予備兵力を温存し、それでいて決められた防衛地域は守り切る。特に、ガランドは部隊の一部を割いて飛竜騎士団へ援軍として差し向けるなど、苦境にあって尚仲間を守る姿勢を貫いた。
苦境の中にあってこそ、人の本性が出る。
鳴り止まぬ敵からの投石攻撃、僅かでも気を抜けば城門に迫る破城槌。飛び立てぬ飛竜騎士団を無能と罵る者が居る中、ガランドは辺境伯軍を中心として戦う姿勢を崩さない。
そんなガランドの周りには自然と人が集まる。
彼らは偏に生き残りたいが故にガランドの元に集まるのだ。少しでも生き残りたいと願う者はその可能性を求めて周囲を見渡し、そして英雄の姿を見るのだった。
その日も、ガランドを中心として城壁の見回りに就いていた兵士は、地獄のような三日間を経て漸く止んだゴブリン達の投石攻撃に安堵の息を漏らしていた。
「やっと一段落つきましたか」
「油断は禁物だがな。ガランド殿も、そう言っていたではないか」
見回りの兵士の口調もどこか気楽である。
それもその筈で、昼間までは至近に迫っていたゴブリンの軍勢は包囲の距離を大きく広げていたのだ。それだけでもバンディガムの兵士達が感じる圧迫感は遥かに小さくなった。
「援軍が到着したのかもしれんな」
「こっちの防御兵器からの損害を嫌ったのかもしれませんね」
理由なくゴブリン達が撤退する訳がない。そんな会話をしながら、兵士達は周囲を見回る。
「どちらにせよ、このまま火の神の胴体が登れば飛竜騎士団が出撃出来る」
一度はゴブリンの王に退けられたとは言え、飛竜騎士団はゴブリンに対抗できる唯一の戦力だと考えられていた。空中からの突撃は圧巻であるし、自由に大空を往く飛竜はゴブリンには対処不可能だと思われていたからだ。
そして、それはバンディガムに篭もる者達にとって王都からの援軍と共に希望の光となっていた。
だが、ゴブリンは彼らが想像していたよりも周到で狡猾であった。
「征け」
闇夜に輝く王の赤い瞳が、2匹のゴブリンを見送る。
「御意!」
「承知しました!」
幾多の国を飲み込み、数多くの砦を落とした歴戦の将であるギ・ガー・ラークスとギ・ギー・オルド。彼ら2匹が膝を突く相手は、敬服する王以外に有り得ない。
包囲に参加していた筈の両将は、踵を返すと己の軍勢を密かに移動させる。
2匹の将軍を見送った後、ゴブリンの王は闇夜に聳えるバンディガムの城壁を見据えた。
「ギ・ズーは上手くやるかな?」
「疑ってもいないことをお聞きになるので?」
プエルの答えに、王は苦笑した。
ギ・ジー・アルシルの斥候兵達を先頭にして隠密に城門に近付くギ・ズー・ルオは、燃え立つような戦意を滾らせて歩んでいた。無言の内に歩むその後ろには、彼の手下であるゴブリン達が続く。ギ・ズーに心酔する武闘派ゴブリンで構成された千鬼兵と呼ばれる手下達は、何れも若く屈強な歴戦の猛者達である。
誰もが無言で足を進める。ただ、目だけが爛々と輝いていた。
隠密を常とする斥候兵は兎も角、普段は軽口の一つも叩くズー・ヴェドや、他のサザンオルガのゴブリン達が無言を貫くのは、彼らの大将たるギ・ズーがまるで触れれば怪我をするかと思わせる程に研ぎ澄まされていたからだ。
自らの失敗よりも親父と慕うギ・ズーの失敗をこそ彼らは恐れ、自然と誰もが無言となっていた。
「此処です」
小さな声で囁かれた斥候兵の言葉に、ギ・ズーは行き止まりの穴蔵の頭上を見上げた。
ぼこり、と小さな音を立ててバンディガム要塞の地面から腕が生える。疲労と夜の闇に紛れて要塞の失陥を招く腕は、誰にも気付かれることなく周りの地面を徐々に削り取っていった。
暫くすると、そこにはゴブリン1匹が通り抜けることが出来る穴が出来上がる。穴から現れたのはギ・ジー配下の斥候兵。素早く周囲を見渡すと穴に向かって頷き、周囲の警戒を継続する。
「行くぞ。先ずは飛竜共を血祭りに挙げる。ヴェドは城門を開放しろ」
「へい」
全員が穴を登り切ったのを確認して、サザンオルガは二組に別れる。城門を開放するズー・ヴェドの組と、飛竜を仕留める組だ。夜の神の両腕と闇の女神の翼は未だに明ける気配を見せず、飛竜達も眠りについている筈である。
空の赤の双子月には雲がかかり、設えたように月光の女神の加護を遮っている。息と共に気配を殺し、彼らは闇の女神の中を駆け抜ける。彼ら一匹一匹が引き連れている破壊と混乱が、時折顔を見せるエルヴィー・ナヴィーによって影を伸ばしていた。
◆◇◆
「城門が開きました」
遠目にそれを確認したゴブリンの王は部下の報告に頷くと、自身の直属の兵と共にフェルドゥークに出撃を命じる。
「ギ・グー・ベルベナに命ずる。フェルドゥークを率いて、かの要塞を速やかに制圧せよ!」
「王命、確と承りました。我が王に勝利を!」
胸の前で握った拳を包むようにして一礼したギ・グーは、不敵に笑って踵を返す。
「ギ・ズーが開けた城門を突破し、脆弱な人間共に我らが強盛を見せ付けるのだ! 我らが王も御照覧である!」
この三日間、主力となってバンディガム要塞を攻め続けたギ・グー達は疲労の極みにあった。だが、だからこそギ・グーは部下達の先頭に立って進む。
ゴブリンこそが大陸を支配するに相応しい。本気でそう信じるからこそ、人間より強くあらねばならないと彼は考える。人間には不可能なことでも、ゴブリンには可能だと信じる。そして、その意志を形に出来る軍勢を持つからこそ、ギ・グーは王に次ぐ勢力を誇っているのだ。
ともすれば傲慢と紙一重の誇りを巧く調和させ、ギ・グーは走り出した。
城門が開いていることに気付いた見回りの兵士は、同時にヴェルドナの翼の中を進むゴブリン達の姿を遠目に確認した。
「っ、て、敵襲だ! 魔王軍の再侵攻だ!!」
敵襲を知らせる鐘が乱打され、疲労の極みにあって眠りについていた兵士達が慌てて動き出す。
「何で城門が開いているんだ!?」
続いて上がった他の兵士の悲鳴に、戸惑いながらも城門に向かう。そこには見慣れたゴブリンの姿と、既に山となって積み重なった仲間の死体。
他の場所からも異変を感じ取って集まった兵士達であろう。その者達が無残に地面に横たわる姿だった。
「何だ、何が、どうなってる!?」
「火事だ! 燃えているぞ!」
事態が収集できないまま、赤々と燃える火が夜の神の中に聳え立つ。皮肉にも、それによってヴェルドナの翼は追いやられロドゥの加護が周囲を照らす。
「あれは、飛竜騎士団の宿営地の方向だぞ!?」
「まさかこいつら……」
怯えた目で再度振り返ると、胸に古傷のある巨躯のゴブリンが目の前にいた。
「っが!?」
己の頭を庇う暇もなく、振り下ろされた拳の一撃を貰った兵士は永遠に意識を失うこととなった。無言の内に敵を倒し、時間を稼いでいると、地響きと共に外からフェルドゥークが城内に雪崩れ込む。
城門を潜った段階で、ギ・グーは配下の兵達に喚声を上げさせた。
「王に勝利を!」
勝利の雄叫びとなってバンディガム要塞に鳴り響くフェルドゥークの喚声がロドゥの加護すらはね退けて、水のように市街地に侵入していく。
「よくやった」
城門を守る傷だらけのズー・ヴェドに向かって一声掛けると、ギ・グーは部下を鼓舞し、バンディガムを陥落させるべく歩みを進めた。
飛竜の竜舎に火を掛けたギ・ズーは、集まる敵兵を見かけた端から倒していった。
「片っ端から打ち倒せ! 今宵の戦は俺達の為にあるぞ!」
高らかに吠えるギ・ズーは、集まる人間達を出会う傍から倒していく。手にした槍を振り回し、火を消そうと駆け寄る兵士を殴り倒す。武器を持つ者も、持たない者も、猛るサザンオルガの獲物でしかなかった。
燃え落ちる竜舎の中で悲鳴を上げる飛竜達。ゴブリン達に対抗する為の最も有力な手段が燃え落ちていくのをただ見ていることしか出来ないバンディガムの兵士達。彼らは焦燥に駆られてサザンオルガに戦いを挑むが、尽くがその餌食となる。
対抗意識を燃やすラーシュカの活躍を指を咥えて見ているだけだったギ・ズーの溜まりに溜まった憤懣は、背後で燃え立つ竜舎の炎の如く彼を突き動かしていた。
◆◇◆
「どうやって中に侵入した?」
「分かりません。気が付いた時には城門が開いていたようです」
舌打ちしてその回答を受け入れたガランドは、瞬時に要塞の陥落を悟る。不安に揺れる視線を向けられる彼は、大剣を手にすると指示を出しながら撤退に移った。
「南と北の城門も開いて、民と軍と脱出させろ! 敵は西から来るぞ!」
ゴブリン達は合理的で単純だ。態々東から回って城門を落とすよりも、本拠地に近い西側から攻め寄せてくるだろう。
「は? はっ!」
半ば勘に任せたガランドの指示だったが、情報が錯綜し、また集まってこない戦場では一か八かの賭けに出なければならない場面は多い。特に不意を討たれた時はそうだ。
「良いか! 一人でも多くの命を救え!」
「ガランド殿」
鉄牛騎士団を率いるラスディルが部下を引き連れてガランドの下に駆け寄ってくる。
「我らは脱出する。貴公は?」
「俺達もだ、くそったれめ! 南へ行け。バークエルなら多少縁も在る」
顔を顰めて吐き捨てるガランドに、ラスディルは礼を返す。
「この恩は必ず」
「さっさと行け!」
ラスディルは旧エルファの民を養わねばならない。ガランドのように、辺境軍という戦闘集団だけを率いていれば良いのではないのだ。要塞が陥落すれば、当然危機に晒されるのは力なき民である。
辺境軍の中でも目端を効く者をラスディルに同行させ、ガランドは西へ向かって歩く。
「ガランド殿!」
次に駆け寄って来たのは、聖騎士団の3番隊である。次いで義勇軍の一部も集まっていた。アリエノールとユアンの2人を先頭にした彼らは、悲壮な決意を以ってガランドと合流した。
「ここは我らが食い止めます。ガランド殿は辺境軍と義勇軍を率いて脱出を」
教会の聖騎士特有の白亜の鎧をまとったユアンの言葉に、アリエノールも頷く。
「嫌だね」
口元を歪めて断るガランドは、目を見開いて驚くアリエノールに視線を向ける。
「以前にも言ったが、俺達は自由にやらせてもらう」
「どうしても?」
「くどいぜ、お嬢ちゃん」
小娘扱いされたアリエノールは僅かに眉を顰めるが、ユアンが耳打ちすると黙って頷く。
「では、ご同行を。英雄ガランド殿」
鼻を鳴らして笑ったガランドは、迫り来るフェルドゥークの軍勢を見て獰猛な笑みを刻む。
「おい、ユアン。お前も聖騎士を名乗るなら、先ず何を持っても成し遂げなきゃならねぇことがある。それが何か分かるか?」
突然の問いに怪訝な表情を浮かべそうになったユアンは、ガランドの視線の鋭さに僅かに気圧されながら答える。
「……敗北を喫しないこと、ですか?」
ガランドはユアンの回答に鼻を鳴らすと、フェルドゥークに向き直る。
「ちげぇよ、馬鹿。どんな手を使ってでも生き残ることだ。覚えとけ!」
天に翳した青雷の大剣にマナが絡み付く。大気を巻き込んで土煙を吹き上げ、天に向かってマナが巻き上げられていく。
「狂乱の剣!」
充分に練り上げたマナを大剣に纏わせて、迫り来る軍勢に向かって振り下ろす。
烈風となった剣戟が、振り下ろされた大剣から渦を巻く竜巻になって周囲を蹂躙する。勢い良く向かって来ていたゴブリン達にも、少なくない被害が出たようだった。
「生き残って、守らなきゃならねぇ連中を守る。それが聖騎士を名乗る条件だ」
「……はい」
そういう意味では俺達は全員聖騎士失格だがな、と自嘲に頬を歪め、ガランドは更に大剣を振るう。
「てめえらの王の大事な者を奪った男は此処に居るぞ! 掛かって来い、ゴブリン共!」
走り出すガランドに続いて、辺境軍とアリエノール隊が勢いの弱まったフェルドゥークに襲い掛かる。
だが、如何にガランドが奮戦しようとも、衆寡敵せず大勢は覆すことが出来なかった。
バンディガム要塞に駐留していた軍は夜の闇の中で侵攻してきたフェルドゥークの攻勢に耐え切れず、ガランドが開放した城門から東へ向かって逃げることしか出来なかった。
日が昇る頃にはバンディガム要塞は完全に陥落し、アルロデナの占領下に入ることとなる。軍民合わせて3万近くにもなる難民は、バンディガムに居住するほぼ全ての人間だった。
彼らが向かう先は北の港湾都市ヤークシャーか、南にある辺境第一の都市バークエルのどちらかである。だが、彼らが必死の思いで辿り着いた両都市に掲げられていた旗は、黒き太陽の旗であった。
「馬鹿な、一体どうやって……?」
攻城戦の最中、ゴブリンの王は飛竜騎士団を警戒して待機させていたアランサインとザイルドゥークの2つの軍を密かに前進させていたのだ。
駆けに駆けた両軍は、間髪入れずに両都市を攻略。辺境と呼ばれる地域はアルロデナの色に塗り替えられていた。
両都市に向かった難民のいくらかは、此処で脱落した。食糧も碌に食わず、歩き詰めで疲労困憊した先での絶望は筆舌に尽くし難かった。非情な現実を前にした彼らの心は完全に折れてしまったのだ。
座り込む者達を置いて、難民の主力は更に東へ向かう。
アーティガンドの主力軍が西へ向かっている筈だからだ。アリエノールは声を枯らして民と兵士を鼓舞し、東へ急いだ。その時点で難民の数は2万程度になっていた。
そして、その難民を追うようにしてアルロデナも軍を進める。
ヤークシャーを占領したアランサインと、バークエルを陥落せしめたザイルドゥーク。そしてバンディガムを制圧したフェルドゥークとサザンオルガ。
錚々たる将兵を引き連れて、ゴブリンの王は東へ向かう。
王歴5年の晩春。ゴブリンの王率いるアルロデナは、東の大国アーティガンドの喉元に刃を突き付けていた。




