バンディガムの会戦
聖騎士団3番隊隊長アリエノールが指揮し、ユアンが先陣を切ったその攻勢に、黒き太陽の王国の魁たる斧と剣の軍は釣り出されるようにして丘を下っていた。
聖騎士団が巧妙に撤退を装ったのと、半ば本当に潰走寸前であったこともフェルドゥークの前進に一役買うことになる。
ギ・グー・ベルベナの三兄弟、最前線で剣兵を纏めるグー・ナガ。戦奴隷と長槍兵を率いるグー・タフ。そして投擲兵と短槍隊を指揮するグー・ビグ。フェルドゥークの中級指揮官の筆頭格である3匹が同時に好機と判断したのだから、フェルドゥーク全軍が進むのもやむ無しであった。
4将軍たるギ・グー・ベルベナは、確かに敗走していく敵の姿を確認しているだけに罠と判断することも出来なかった。それに、例え罠だとしても食い破れる自信があったのも、彼が前進停止を指示しなかった理由の一つである。
フェルドゥーク全軍7000の兵力を持ってすれば、要塞など落とすのは容易いのではないか?
そういう期待がギ・グーの内心に無かったと言えば、嘘になる。
敵を追って進んでいく前衛戦力を確認しながら横目で待機しているガイドガ氏族を確認すると、ギ・グーは前進の命令を下した。
「ガイドガ氏族ばかりに、でかい顔をさせておく訳にはいかん! ギ・ズーではないがな!」
獰猛な笑みを浮かべると自身の部下を叱咤激励し、敵の背後を追わせる。
勿論、ガイドガ氏族へ伝令を出すのも忘れていない。この辺りは流石に4将軍に抜擢されたゴブリンだった。
一方、敵の背を追い、山脈地域に幾つかある丘を駆け下りるフェルドゥークを確認したラーシュカは、傍らのギ・ザー・ザークエンドに皮肉げな口調で話しかけた。
「俺達は追わなくていいのか?」
「……フェルドゥークの後から追えば良い」
「みすみす手柄を見逃せと?」
「あまりにも敵の敗走が速い。或いは偽装かもしれん」
「偽装?」
ラーシュカは目を細めて潰走寸前に見える敵に視線をやると、疑いながらもギ・ザーの意見を腹の底で考えた。
「まあ、良かろう。この前は世話になった。ガイドガ氏族の面目も暫くは保たれるだろうし、ここはお前の意見を受け入れよう」
「……」
ギ・ザーはラーシュカの言葉に鋭い一瞥をくれると、すぐさま逃げる聖騎士団と追うフェルドゥークを観察する。
「あの妖精族の娘には報せなくていいのか?」
「必要ない」
そう言い捨てると、ギ・ザーは伝令を走らせる。
視線だけでどこへの伝令か問うたラーシュカだったが、その答えを得ることは出来なかった。ギ・ザーの視線は、相変わらず敗走する敵と追う味方に注がれていた。
潮目が変わったのは、山道を下り降りて山脈地域を抜け出た直後だった。
「ぬっ……これはっ!」
思わず唸ったのは先頭に立って敵を追い散らしていたグー・ナガ率いる剣兵隊。彼らの眼前に広がるのは、整然と陣を敷く4000近くにもなる人間の大軍であった。
「勢いは此方にある! 剣兵隊!」
南方ゴブリン特有の長い腕に剣と盾を掲げ、グー・ナガは敵の背を追うのに夢中になっていた部下達を呼び戻して陣形を組むように号令を下す。だが、今まで個々に動いていた兵士達が直ぐに陣形を組み直せるのかと問われれば、それは殆ど不可能であった。
グー・ナガの声が届く範囲のゴブリン達はすぐさま集まって陣形を組もうとしたが、それを許す敵ではない。
「魔法兵、弓兵、前へ!」
聖騎士1番隊を率いるジェラルド・ホーエンガムの号令に、人間側の軍勢が一挙に動く。一糸乱れぬ動作で弓と杖と構えると、陣形を組もうとするグー・ナガの剣兵隊に向かって矢と魔法が放たれる。
直線的な魔法の遠距離攻撃と、山なりに空から降り注ぐ矢の雨。
2つの方向から押し寄せる波のような攻撃に、グ・ナガーの剣兵隊は徐々に討ち減らされた。状況が不利であってもギ・グー・ベルベナさえ来れば逆転出来ると踏んだグー・ナガは、味方を集めながら徐々に後退する。
背を向けて走り出せば、すぐさま敵の追撃が来ると予想しての事だった。
先程自らが先頭に立って敵を追ったばかりである。敵も当然そうしてくる可能性をグー・ナガは考えなければならなかった。
だが、聖騎士団のジェラルドは端から接近戦などするつもりはなかった。寧ろ、積極的にゴブリンとの近接戦を主張する他の諸将を抑える役目にすら回っていた。
「態々負けを呼び込む必要もあるまい」
ゴブリン側の先頭であったグ・ナガーの剣兵隊との距離は、100メートル以上も離れている。
「ジェラルド殿は、未だ先触れを出されないのだな?」
目を細めて徐々に下がるゴブリンの様子を見ている2番隊隊長ユーディットは、腕を組んで目を閉じると、面白くもなさそうに言った。
「神は、未だ我らに血を流せとは仰せになってはおられないようだ。神の御意志に沿う時まで待とうではないか」
劣勢に退がるゴブリンと、遠距離からの攻撃でゴブリンを仕留めていく人間。その構図が変わるのを敏感に感じ取ったのは、やはり歴戦を経たガランドだった。
「……ッチ、本隊だぞ!」
舌打ちすると、視線を左右に飛ばして味方に危機を知らせる。
苦戦し徐々に後退するグー・ナガを救うべく、丘の上からグー・タフとグー・ビグの部隊が駆け下りてきていた。彼らの麾下だけで2000近く、更にその後方からはギ・グー・ベルベナ率いる斧と剣の軍の本隊が土煙を上げて押し寄せようとしていた。
「……物凄い勢いだな」
ユアンの獅子奮迅の活躍で何とか面目を保てていたアリエノールが、フェルドゥークの本隊を見て思わず呟く。
「ですが、こちら側の戦力とて負けている訳ではありません」
「分かっている……っ!」
全身に傷を負ったユアンの言葉に、アリエノールはついムキになって言い返してしまうが、静かに頭を下げるユアンの姿を見て口を噤んだ。
「……巧く引き出せたようだな」
迫ってくるゴブリンの大軍を目の前にして尚、余裕の表情を崩さないジェラルド。
「さて、聖騎士団の本領を見せてもらおうか……合図を!」
ジェラルドの陣営から振られる数種類の旗。
それを翻訳した各軍の旗手達は、その意味を書面に写し取って指揮官に知らせる。それは当然、2番隊と3番隊、そして外様のガランドやラスディルにもである。
ゴブリン達を囲い込むように、徐々に広範囲に広がっていく人間側の陣形。薄く、薄く、まるで羽を広げた鳥のように横へ横へと陣形を広げる。その動きは、グー・ナガ隊が後続から合流してくる大軍に飲み込まれる頃には完了していた。
中央には2番隊。左右に1番隊と辺境伯軍。そして最左翼に鉄牛騎士団、最右翼に義勇兵達。包む込むような陣形へと切り替えた人間側に対して、フェルドゥークは真正面から突っ込んだ。
「陣を伸ばせば中央が薄くなる! そこを突破するのだ!」
ギ・グー・ベルベナの檄に答えて、勢いを取り戻したフェルドゥーク。グー・タフとグー・ビグを2つの槍先に見立てて突撃する彼らの前に立ち塞がるのは、狂信者ユーディット。
組んでいた腕を解き、閉じていた眼を開くと、彼女は吠える。
「神は我らと共に在り! 我と思わん者は続け!」
腰に佩いた二振りの長剣を抜き放つと、自身が先頭に立って迫り来るゴブリンへと駆け出した。彼女の率いる2番隊は、信仰の厚さを特に重視されて集められた狂信の徒である。
まるでナイフで紙を裂くように、フェルドゥークの2つの槍先の中央をユーディットが切り裂いていく。左右の手に握られる長剣は、それぞれ特殊な精霊を宿し、流水と氷結の特性を持った魔剣であった。
「流れよ湖水!」
振るわれる左の長剣から流れ出る水が、大地へ染み込む。
「氷柱よ、穿て!」
大地へ染み込んだ水が人の胴体程の巨大な氷柱となって、勢い良く地面から突き出る。
頑丈なエルファ産の鉄製武具を貫き、体の中央を貫かれたゴブリンが串刺しとなる。それがユーディットの正面に瞬時に出現するのだから、彼女の正面に立ったゴブリン達は死の恐怖に震えた。
彼女の麾下の聖騎士達も、迫るゴブリンに魔法を放つ。
通常なら威力と精度を増す為に杖を使って魔法を唱えるが、彼らは片手に剣、片手に盾を持ったまま詠唱し、放出する。威力と精度は落ちるが、正面から迫るゴブリンには、狙いを付ける必要さえなかった。
「一斉射撃!」
先頭を走るユーディットの副官が、迫るゴブリン達に向けて号令を発する。
「さあ、同胞諸君! 我らが同胞ユーディットと神は流血をお望みだ!」
副官の檄に応えて、迫り来るフェルドゥークと激しく切り結ぶ隊員達。
「奴らの血で大地を染めろ!」
ユーディットの檄に応えた聖騎士団2番隊は一層激しくゴブリン達と切り結び、丘の上から駆け下るフェルドゥークの勢いを完全に止めることに成功する。
「包囲陣を縮めよ!」
勢いの止まったフェルドゥークを見て、聖騎士1番隊のジェラルドが指示を下した。
魔物相手と侮る事は決して無く、正面から蓋をするように戦う聖騎士団2番隊。更には左右から締め上げるように義勇兵達と辺境伯軍、鉄牛騎士団が包囲を完成させる。遠距離からの攻撃に終始する聖騎士団1番隊と、果敢にゴブリン達と切り結ぶ2番隊。
それぞれの役割を完全に分けた彼らの作戦は、まんまとフェルドゥークを罠に嵌めたように見えた。
「左翼と右翼、押されています!」
「グー・ナガ殿から具申! 突進許可を!」
次々齎される報告に、ギ・グーは未だ冷静さを失っていなかった。
「突進は却下だ! 今暫く耐えろ!」
走り去る伝令を視線に入れず、左右と前の戦場を確認する。
「……褒めてやろう人間共。ここまで苦戦するとは予想外だ」
左右の手には、歴戦を刻まれた斧と剣。
「だが、予備兵力の使い方を知らんようだな?」
獰猛に笑うギ・グー・ベルベナの呟きに呼応するように、敵の右翼で喚声が上がった。
◆◆◇
「敵は背を向けているぞ! 叩き潰せ!」
唸る棍棒の一撃が、鉄の鎧に守られた兵士の頭を砕く。猛る咆哮は周囲を圧し、それに触れる者に等しく死を振り撒く。
「ガイドガのラーシュカと撃ち合う者は居るか!」
大音声の名乗りを上げて、包囲を縮めていた後背からラーシュカ率いるガイドガ氏族が突如として襲い掛かったのだ。
冷静に戦場を見据えていたギ・ザー・ザークエンドの采配をラーシュカが受け入れたからでもあり、事前に罠の可能性を考慮に入れたギ・グー・ベルベナの掛けた保険でもあった。
吹き荒れる暴虐が、勝利を掴めるかもしれないと一縷の望みを見出していた義勇兵達に容赦なく降り掛かる。
「どうやら、敵の指揮官は戦場を知らんと見える」
横合いから思い切り殴り付ける形となったギ・ザーは、自身の策が上手く嵌まったことに気を良くしながら鼻を鳴らした。
緻密に組み上げた作戦は、一度狂うと修正が効かなくなる。
ギ・グー・ベルベナも包囲が緩んだのを当然の如く見て取ると、攻撃をそこに集中する。見る見る内に包囲網が破綻していくのをギ・ザーは心地良さ気に見ていた。
一方のギ・グー・ベルベナも勝機を見出すと、“暴風”と恐れられるフェルドゥークの攻撃力の高さを遺憾なく発揮する。
「攻勢を強めよ! 全方位に向けて突進だ!」
包囲を力技で喰い破ろうとするギ・グーの意志に従って、フェルドゥークはそれまでの苦戦が嘘のような猛烈な勢いで突進していく。
「突進! 突進! 只管進め!」
グー・タフは右翼。
「進め! 進め! 前進あるのみだ!!」
グー・ビグも狂ったように号令を下す。
「あの魔女を殺せ! 行くぞ!」
グー・ナガは剣兵隊を率いると、自身が先頭に立って水と氷を操るユーディットに戦いを挑む。ゴブリン側の士気が上がるのに反比例して、人間側の士気は急激に下がっていた。
特に、ガイドガ氏族からの奇襲を受けた右翼側は殆ど壊乱寸前である。後ろではラーシュカが暴れ回り、前からは狂ったように只管前進してくるグー・ビグの長槍隊。
義勇兵は揉み潰されるように数を減らし、あっという間に戦線は崩壊した。
「撤退だな」
辺境伯軍の指揮を執っていた為、単独で突出することも叶わないガランドは苦虫を噛み潰したような表情で吐き捨てる。
「良いのか? 未だ戦っている部隊も居るが」
仲間の言葉に、ガランドは首を横に振る。
「ここ暫く伝令が来てねぇ。聖騎士団も混乱してる証拠だ。それに、ぐずぐずしてるとこっちも巻き込まれるぞ」
「生きていればまた次がある、か」
どうやら、苦虫を噛み潰したような表情は伝播するらしい。
「責任は俺が取る! 撤退しろ!」
ガランドの一声で整然と撤退する辺境伯軍。
「何故だ、未だ勝負は!?」
悲痛な声を上げるのは、後方で予備部隊とされた聖騎士3番隊のアリエノールである。
「いえ、最早敗北は時間の問題かと……」
悔しさに歯を噛み締めるユアンが、向けられた視線に視線を伏せた。
包囲殲滅の好機から一転して、逆撃の危機である。義勇兵を撃破したガイドガ氏族の軍勢が次にどこを狙うか。自由に動けるあの軍勢が居るだけで、常に人間側は挟撃の危機に曝される。
そして、ゴブリンの挟撃に耐えられる部隊は人間側には存在しない。
「どうすれば良い……」
震える声で叫ぶアリエノールに、ユアンは戦場を睨む。
「どうすれば、彼らを助けられる?」
「3番隊全員の命が必要になります。その覚悟がございますか?」
◆◇◆
「くそっ、こんな筈では!?」
舌打ちするジェラルドは、次の手を打てずにいた。
包囲を続ければ全軍崩壊。反撃に転ずればゴブリンと真正面から消耗戦を繰り広げることになる。後退すれば追撃され、全滅は必至。
どの選択肢も、彼にとって望むべき未来を齎さない。
故に、決断出来ないでいた。
その間に事態はギ・グーとギ・ザーが描いた岐路を辿り、決着へと向かおうとしている。
「辺境伯軍が後退していきます!」
悲鳴じみた伝令の声に、ジェラルドは忌々しげに辺境伯軍を睨む。
「……臆病者が!」
罵声を浴びせはしても、それ以上の決断が出来ない彼は指揮官として二流以下であった。
「アリエノール隊より伝令!」
「今度は何だ!?」
「3番隊が敵を引き付けている間に撤退せよ、とのことです!」
「我々の盾になろうというのか!?」
アリエノールの決断に僅かに唸ったジェラルドは、号令を下す。
「……撤退する。アリエノールに神の御加護を!」
指揮官として、これ以上の被害は食い止めねばならない。辺境伯軍が撤退した以上、戦線の再構築は不可能である。そして何より、彼は自身の命が惜しい。
下がる1番隊と交代するようにして、3番隊が前に出る。
魔法で援護をしながら後退する1番隊は、一定以上離れると戦場に背を向けて撤退した。
「撤退だと?」
最前線でゴブリン達を串刺しにする狂信者ユーディットにも、1番隊が撤退するという報告が届いていた。
「アリエノール隊が前に出るとのことです!」
「ジェラルドはそれを了承したのか!? あの背信者め!」
吐き捨てるユーディット。罵声と共に、再びゴブリンを串刺しにする。
「アリエノールを援護しながら撤退する! 神の恩寵を賜らんと欲する者は、死しても味方を戦場に残すな!」
再び喚声が上がるユーディット隊は徐々に後退していく。
鉄牛騎士団と左翼の義勇兵も撤退を始めていた。残っても勝ち目は薄い。後は、どれだけ被害を減らして戦場を離脱出来るかだった。
既に指揮系統は機能せず、後は各個の指揮官の判断で動くのみ。
アリエノール・ユーディット両隊が突出する形でフェルドゥークからの攻勢を凌いでいる間に、残りの部隊は撤退を進める。
それを見たギ・グー・ベルベナは、左右の部隊を追撃から包囲へと切り替える指示を出す。
「味方を逃がす為に死地に残るとは勇敢な部隊だ。あれを潰せ」
左右からの追撃を打ち切ったグー・ビグとグー・タフの部隊が、アリエノール・ユーディット両隊に強襲を掛ける。
「戦列を維持出来ません!」
アリエノール隊の先頭を切るユアンの耳にも、悲鳴と絶叫が聞こえる。
「前だ! 盾を並べて右翼からの攻撃を防げ! 前進せよ!」
だが、ユアンも命令を変えるつもりはなかった。ここまで来た以上、最早撤退は絶望的ですらある。
一縷の望みとして賭けているのは、損害を嫌う敵の撤退のみだった。
「未だか……。未だ、来ないのか……!」
ゴブリンの剣兵隊が振るう剣を盾で受け、切り返して首を刎ねる。時間と共に蓄積していく疲労は徐々に身体を重くし、油断を生み易くなる。
「副長! 空を!」
ゴブリンの攻撃を防ぎ止めたユアンは、喝采を上げたいのを堪えて、敵の攻撃を凌いでいた。
◆◆◆
飛竜騎士団の来援を確認すると、ギ・グー・ベルベナとギ・ザー・ザークエンドは兵を退けた。
「実に惜しいが……」
「飛竜と打ち合うなど、王以外では難しい」
悔しげに敵を睨むラーシュカと、撤退を進めるギ・ザー。ギ・グー・ベルベナからの撤退の要請もあって、飛竜騎士団が本格的に戦場に介入してくる前に戦線を離脱する。
アリエノール隊とユーディット隊は甚大な被害を出しながらも生き残り、バンディガム要塞に戻った。
遭遇戦に続いて二度目の武功を立てたラーシュカとガイドガ氏族の名声は更に高まり、人間側には更なる悪名として鳴り響いた。
その裏でプエルはギ・ザー・ザークエンドの軍師としての采配を確認し、表情には出さないものの、自分が宰相としての仕事をする間の軍師の不在を補えると満足そうに頷いた。
聖騎士団の増援もアルロデナの前に敗れ、バンディガム要塞の主力は神聖帝国アーティガンドの正規軍。
外征能力など殆ど無く、ゴブリン達ともう一度会戦する余裕はない。
ここに至って、バンディガム要塞は籠城を決断する。アーティガンドの王都からの援軍を待つと同時に、ゴブリン側に要塞を抜かせないことに主眼を置いた戦術に切り替えるのだった。




