プエナの勇者Ⅳ
耐えに耐えたギ・グー・ベルベナが王と合流を果たしたのは、蒼鳥騎士団の襲撃を受けてから2日後のことであった。周囲の警戒をしつつ行軍をした為、普段よりも行軍速度が遅くなってしまったのだ。負傷者を多数抱えながら合流したギ・グーを、ゴブリンの王は暖かく迎える。
「良く無事で戻った。苦労をかけたな」
ゴブリンの王直々にギ・グーを出迎え、その苦労を労うと、ギ・グーの軍に2日の休息を命じた。
「王よ、この上は何としても我がフェルドゥークにてプエナ攻略を……!」
悔しさに歯を噛み締めながら言葉を絞り出すギ・グーに、王は優しく声をかける。
「ギ・グーよ。プエナは強大な敵だ。お前は充分に良くやってくれた。これだけの兵を生きて戻らせたことを誇りに思え。これよりは我が全軍を以ってプエナを落とす」
ギ・グーの胸中を気遣うゴブリンの王は一層深く頭を垂れるギ・グーを下がらせると、プエルから被害の報告を聞く。
「ギ・ガー・ラークス殿のアランサインは死傷者こそ少ないものの、負傷者はかなりの数に昇ります。ギ・グー殿のフェルドゥークも同様です」
「死者が少なかったことを喜ばねばな」
「御意。ですが、プエナ側がここまで執拗に抵抗するとは思っていませんでした。私の落ち度です」
ギ・ガーからの情報とギ・グーの軍を打ち破った敵の武装の違いから、ゴブリン側は敵が2つの部隊に分かれていると判断していた。一つにはアレンがギ・グーと戦う際に前線に出て来なかったこと。あまりにも顕著な敵の指揮官の存在が、ゴブリン達の判断を誤らせた。
もう一つは、プエナに潜り込ませた密偵から小部隊が幾度も出発していると報告されていた為、敵軍の実数を測りかねていたことが挙げられる。
ギ・ガーを打ち破る騎兵戦力。更に別働隊を動かせる余力を持っているとなると、速攻戦術は考え直さねばならないだろう。
例えプエナを落としたとしても、女王ラクシャの身柄と強力な軍さえあれば主力が北に向かった後で再び国を復興する可能性がある。吹けば飛ぶような戦力しかないと思っていたプエナの意外な粘りに、プエルは眉を顰める。
「全軍を動かす為に、何日かかる?」
ゴブリンの王の問いかけに、思考を一時中断したプエルは口を開いた。
「概ね7日程、でしょうか」
この時点でプエルは今後の方針を堅実なものに変更していた。慎重が過ぎることはない。後方支援を万全に整え、それから一気にプエナを囲む。プエナの象徴たる女王ラクシャの身柄を抑えることが出来れば、如何に精強な軍が残っていようと大義名分が立たない筈である。
それまでに、更なる情報を集めなければ。
「ならば、悪戯に軍を動かさず陣営地をこの場に築け!」
ゴブリンの王の言葉に、プエルは頷き返した。
周辺の都市を陥落させる為に軍を派遣すれば、優勢な敵の餌食となる恐れがある。相対的な優位を崩さない為には、軍の数を減らすこと無くプエナに迫らねばならない。
「どうやら此方の動きは筒抜けらしいな」
「……近くの都市から連絡が届いているのでしょう」
ゴブリンの王が憂慮したのは情報戦での敗北だった。これまでゴブリンの軍勢は常に相手よりも正確に情報を得てきたが故に勝利を重ねることが出来ていた。だが、今回に限っては完全に後手に回っている。
「買収は可能か?」
王の言葉にプエルは僅かに目を見開いて驚いた後、可能かどうかの見積もりを口に出す。
「……難しいかと思われます。魔物に膝を折ることは彼らにとっては屈辱と映るのでしょう」
「ふむ」
プエルが考え込むゴブリンの王の横顔を見つめていると、それに気付いたゴブリンの王は視線を向ける。
「どうした、何かあるのか?」
「……いえ、少しばかり意外だったので。搦め手はお嫌いかと」
プエルの言葉に、ゴブリンの王は苦笑で応じた。
「俺の好き嫌いなど些事だ。兵の命には代えられん」
クシャイン教徒と手を結び、多少は外交面で地位を上昇させることが出来たが、未だ他の国々には交渉など出来ぬ魔物の軍勢と思われているのだろう。
「となれば、他に手を講じねばならんな」
近くの都市を壊滅させながら進むという策もあるにはあるが、王は拒否するだろうとプエルは考える。
ゴブリンの王とプエルは協議を重ね、一先ず陣営地で負傷者の傷が癒えるのを待った。
◆◇◆
プエナの王都に帰還したアレンを待ち受けていたのは、国を上げての歓待だった。まるで恐怖の裏返しのようにゴブリンの脅威を退けた蒼鳥騎士団を祝福し、街道には民衆が詰め掛けていた。
アレンはそれに浮かれること無く、着々と次の手を打っていた。
長老院に働きかけ、ゲルミオン王国へと使者を発して同盟を結ぶべきだと主張したのだ。
「長年の仇敵と和平など……」
「今、人間は団結せねばなりません! さもなくば魔物に国土を蹂躙され、我々の家族や友人は命を奪われることになります!」
渋る長老院を説得し、彼自身が出向いて国中の富裕層に戦果を報告して積極的な援助を頼み込む。
「魔物をこの国に近付けてはいけません! 奴らの領土は嘗ての自由都市群の領域を上回り、ゲルミオン王国の一部すらも含んでいる! これは我々人間全ての危機なのです!」
寸分の暇すら惜しんで一人でも多くの協力者を得ようと奔走するアレンは、その熱意で徐々にプエナの人々の心を掴んでいく。民衆と長老院達からは、その手に握られた聖剣グラディオンと共に、嘗てのアイザスを超えるプエナの希望の星として認識され始めていた。
だが、アレンが身を削って働けば働くほど、彼の愛するラクシャ女王との距離は離れていった。彼女が欲したのは英雄などではなく、傍に居てくれる一人の男だったからだ。
少ない時間を使って面会を申し込んでも彼女はアレンに会おうとせず、次第にアレンの足もラクシャ女王から遠のいて行った。戦況は予断を許さず、綱渡りのようにゴブリンの動向を窺いつつ北の強国と同盟を結ばねばならない。
その重圧に加えて聖剣の呪詛が彼の体を蝕んでいく。
日に日に彼の体は痩せ衰え、肌の艶は失われ、目の下には隈が出来る。だが、薄く化粧をすることで外見を誤魔化し、彼は外交と戦の最前線に立ち続ける。今やプエナの命運は自身の肩にかかっていると自覚していた為だ。
「ゴブリン共が陣営地に篭って7日。そろそろ動きがあるかもしれんな」
恐ろしく冴え渡る勘は、失われた体力の代わりに得たものか。アレンは騎士団長の執務室で周辺都市からの連絡を待っていた。
「団長、少し休まれては……」
日を追う毎に悪化するアレンの体調に、副官は気遣わし気に休息を取るよう進言する。
「ああ、この書類を片付けたらな」
徴兵権を一時的にアレンに譲渡する旨の書類を片付け、アレンは副官を見る。僅かに輪郭が揺れる副官の姿に目頭を押さえ、頭を振った。
「……少し、横になる。何かあれば頼む」
直立不動の敬礼で返答した副官は退出し、アレンは重く鈍い身体をソファに預けた。
「奴らが動くとすれば、夜だが……」
アレンの予測が当たった訳ではなかったが、翌日ゴブリン達が進軍を開始したという報告が届けられる。しかも、その速度はアレンの予想を越えてプエナまで後1日の距離にまで迫っていた。
僅かな間だけ眠りに落ちたアレンは、報告を聞くと飛び起き、蒼鳥騎士団を招集する。
「夜明けと同時にゴブリン共に強襲を掛ける。鎧は重武装とし、投げ槍を用意せよ」
「応っ!」
気迫の篭った返事にアレンは頷くと、情報を精査する為に地図を広げてゴブリンの位置を確認する。
「楽をさせてはくれんか。だが……」
残った兵にギ・グーの侵略から続けられている城壁の増築を命じると、アレンは騎馬に跨った。
◆◆◇
夜の闇に紛れて一気に敵の本拠地まで迫る計画を立てたゴブリンの王とプエルの策略は、アレンが周辺都市に予め潜ませていた諜報役の冒険者によって察知されていた。
夜の間に出来る限り距離を稼ぐべく、ほぼ全力で駆け抜けたゴブリンの軍勢だったが、朝焼けと共に地平の彼方に見える土煙を確認すると、前進を止めて臨戦態勢に入らざるを得なかった。
「……読んでいたとでも言うのですか」
忌々しそうにプエルが呟き、鋭い視線で彼方の土煙を見守る。ことプエナとの戦いになってから、彼女の思考には霞が懸かったように明瞭でない部分がある。
まるで思考の裏を突かれているような、敵の用兵術。
「ギ・ガー殿を後衛に、ガイドガ氏族とギ・グー殿の部隊を展開! 敵を受け止めます!」
来るなら来いとばかりに、両翼を広げるように陣形が急速に広がっていく。
「フェルビーとドルイド部隊は遠距離攻撃の準備を! 射程に入ったならば即座に敵に撃ち込みなさい!」
迫り来る敵に向かって構えられる杖と鏃。敵を視界に入れたプエルは、規模にして2000程だと推測を立てる。
「2000ですか……。ならば、敵は必ず迂回を企てる。こちらの正面からではなく──」
その為に態々足の速いギ・ガー・ラークスを後方で待機させたのだ。魔法弾と弓矢を避けて減速した敵に向かってギ・ガーのアランサインを叩き込み、ギ・グー・ベルベナとラーシュカらの前衛戦力で駄目押しする。
この時点で、プエルは敵の戦力を過剰に見積もっていた。ギ・ガーとギ・グーを連戦で破るなど、そのような無茶をする理由を彼女は考えもしなかったのである。
殲滅までの流れを脳裏に描いたプエルは攻撃の準備をさせ、敵が近付くのを待った。
濛々たる土煙を上げて、迫る砂馬の群れ。
先頭に立つ若者の手には輝く聖剣グラディオン。烈風を巻き起こし、立ち塞がる者全てを蹴散らさんと咆哮を上げて疾走する姿は、異様な迫力を以ってゴブリン達の目に映った。
「撃て!」
フェルビーとギ・ザーの合図と共に降り注ぐ魔法と矢の雨。回避すべきそれらを物ともせず、蒼鳥騎士団はそのまま加速する。
「──まさか!?」
「プエル、敵はやはり強いぞ!」
指示を出していたプエルの直ぐ近く、巨躯を誇る肉喰らう恐馬に騎乗した王が獰猛に笑う。
「来るぞ! 踏み留まれ、我が臣下達よ!」
「応っ!」
応えるゴブリン達の声を掻き消すように、アレンが吠える。
「突撃だ! 投槍用意!」
両翼を広げたゴブリン軍の中央目掛けて飛翔するかの如く、蒼鳥騎士団が突撃する。
「放て!」
振り下ろされる聖剣と共に、待ち構えるガイドガ氏族と南方ゴブリンに投擲槍が放たれる。盾を貫く投槍の直後、穂先を揃えた精鋭無比の騎馬隊が吶喊する。
正面から受け止めようとした巨躯のガイドガゴブリンが、冗談のように空中に吹き飛ばされる。更にその突撃の先頭に立つアレンが止まらない。中央を貫いた勢いのまま馬を駆けさせると、ゴブリンの王の本陣を目指して猛進する。
「くっ!? 両翼を閉じます。伝令!」
プエルが蒼鳥騎士団を囲い込もうと伝令を走らせるが、遅きに失した。第一線を突破した蒼鳥騎士団はアレンに従い、ゴブリンの王の本陣に迫る。
「我が王に貴様らの刃は届かぬ!」
「王を守れ!」
ギ・ザー・ザークエンドの機転によって、迫り来る蒼鳥騎士団に味方を巻き込むのを恐れず風の魔法が放たれる。ギ・ガー・ラークスは王を守る為、騎馬隊の半数を王の直属軍の直ぐ後ろに送り込んだ。
「迂回せよ!」
それを見破ったアレンは馬首を左に向けてゴブリンの王を回避し、離脱行動に移る。
「ギ・ガー殿に追撃の命令を!」
すぐさま指示を出すプエルだったが、ゴブリンの王を守る為に陣容を崩したアランサインでは追い付けないと判断して歯噛みする。
「……いえ、訂正します。追撃せずに周囲の警戒を」
「……まさか、ここまでやるとはな」
「ですが、手は読めました。次は負けません」
「死に物狂いとなった敵程、厄介なものはない。無傷で倒そうなどと思っていると足元を掬われるかもしれんな」
「……」
ゴブリンの王は一旦前進を止め、兵を休ませ負傷者の救護に当たった。更に二日間休息を取り、プエナに向けて堅実に進軍する。その頃には、プエナに潜入している諜報員から情報が入ってくるようになっていた。
「敵の指揮官は蒼鳥騎士団団長アレン。プエナの王都の近郊に砦を建造して籠城するようですね」
「……良かろう。ここまで来たのだ。付き合ってやろうではないか」
ゴブリンの王は自身が先頭に立つと、全軍を鼓舞しながらプエナへと進んだ。途中に築かれた小さな砦を三つ程潰し、その度に出張って来る蒼鳥騎士団と真っ向から渡り合う。
姿を現したかと思えば急激な加速からの急旋回。ゴブリン達の目の前を横切るように走り抜け、擦れ違いざまに投槍を放っていく蒼鳥騎士団は、ゴブリン達にとって空を駆ける猛禽のようであった。
交戦の度に数を減らし、その分練度を増して出陣する蒼鳥騎士団の勇姿はプエナの民を熱狂させ、頑強な抵抗となってゴブリン達の前に立ち塞がる。だが、クシャイン教徒から取り寄せた攻城兵器を操り、王自ら先頭に立ったゴブリンの軍勢を止めることは叶わない。
遂にプエナ周辺の全ての砦が壊滅し、残るは王都だけとなった。
◆◇◆
その日、アレンは久々に女王ラクシャに謁見が叶っていた。
「……お久しぶりです。ご尊顔を拝し奉り、恐悦至極」
「……ええ」
硬い口調の二人は、それから無言になる。暫くの間があってから、ラクシャは口を開いた。
「ゴブリンは、恐ろしい者達だと聞いています」
「はっ……」
ラクシャの言葉に、アレンは頭を下げる。
「貴方も死ぬのですね。アレン」
無表情でそう告げるラクシャに、アレンは更に深く頭を下げる。
「この国と貴女を守る為に身命を捧げます。これは私ばかりでなく、他の者達も同じ」
「……そうですか。聖剣を奪った挙句、ゴブリンに殺される。貴方にはお似合いの末路です」
「……お許し下さい。ラクシャ陛下」
「今更……!」
僅かに見つめ合った二人の間を裂いたのは、謁見の間の外から聞こえてきた悲鳴である。
「アレン団長! ゴブリンの進撃が始まりました!」
「……では、行って参ります」
「ええ」
アレンが去り、独りになったラクシャは自身の視界が曇るのを覚えて指先で頬に触れる。
「おかしいわ、何故、涙が……」
愛しいアイザスを救えなかった無能者で、悲しい時に慰めてくれたブランディカを見捨てた卑怯者。その筈だった。
……その筈なのに、何故か涙が溢れて止まらない。
呼吸は苦しく、気付けば子供のように噦り上げていた。
「なぜ、なぜ……ア、レン」
アレン。
何時ぶりにその名前を呼んだだろう? まるで堰を切ったように胸の奥から感情が溢れてくる。兄のように慕っていた。いつも自分を守ってくれた。暗い夜に、手を引いて導いてくれたアレン!
彼女の為に深く傷付き、心身を擦り減らし、それでも尚、ゴブリンに立ち向かうアレン!!
「アレン……アレン!!」
彼女は走り出した。
「行かないで、アレン!」
謁見の間の重厚な扉を我武者羅に開けると、アレンの姿を求めて廊下を走る。長いスカートの裾を踏み付けて転び、苦痛に呻く。だが、アレンが遠くへ行ってしまう恐怖に後押しされて彼女は立ち上がって走り、ベランダへと辿り着く。
彼女が見たのは民が歓声を上げる中、出撃する蒼鳥騎士団の姿。
その先頭に立つアレンの姿だった。
「アレンッ!」
声を枯らし、彼女は叫ぶ。聖剣を掲げた彼が、一瞬だけラクシャの方を振り返る。
「行かないでっ!」
確かに視線が交差した。アレンは優しく微笑むと首を振り、二度と振り返らなかった。
「嫌、嫌よ。アレン……嫌ぁぁあああ!」
泣き崩れるラクシャの声は民衆の歓声に掻き消され、蒼鳥騎士団は出撃した。
アレンは、自身の体が最早限界を迎えている事を悟っていた。
「皆んな。済まん」
出撃に際して、アレンは最後まで残った蒼鳥騎士団の団員を激励する。
「俺の無能が招いた結果だ。このままでは亡国は止められない」
アレンこそが誰よりも国の滅びを阻止しようと奔走してきた事実を知る騎士団員達は、皆静かに言葉を聞いていた。
「我々が負ければプエナの王都はゴブリン共に蹂躙され、民は塗炭の苦しみを味わうことになるだろう。だから、これは賭けだ」
咳一つ聞こえない中、アレンは聖剣を握る手に力を込める。
「お前達の命を俺にくれ! 目標は唯一つ。敵の首魁の首のみ!」
『応!』
返事と共に、猛り立つ気炎が蒼鳥騎士団から迸った。
「敵は鶴翼の陣を取っている。1番隊、2番隊は左翼。3番隊、4番隊は右翼に展開。敵を押し留めよ!」
「「「「了解しました!」」」」
「5番隊と6番隊は、予備兵力として後衛を任せる。先頭は俺が切る。質問は?」
返される無言の信頼に、アレンは頷いた。
「聖剣よ。お前が本当に護国の剣だというのなら、俺の命をくれてやる。だから、だから姫を、大切なラクシャと祖国を守る力を、俺に寄越せッ!」
輝く聖剣グラディオンを掲げると、ゴブリンの軍勢目掛けて突撃を開始する。
「我ら、悠久なる熱砂の大地に生きる者!」
激を発するアレンに倣って、蒼鳥騎士団の全員が唱和する。
『その名を高く、蒼穹まで武を響かせん!』
プエナを巡る最後の攻防が始まった。
◆◆◆
「敵の目的は、王の御首です」
交易国家プエナを包囲したゴブリンの軍勢は、補充兵を交えてその陣容を4000程にしていた。軍議の席でプエルは断言する。
「敵が勝利を掴む為には、それしかありません」
蒼鳥騎士団の数は、出陣してきているだけで500を切っている。
「ならば、王の所在を不明にして敵を混乱させるか」
ギ・ザーの言葉に、プエルは首を振る。
「それでは被害が大きくなり過ぎる恐れがあります。王には、敢えて敵の目の前に陣取ってもらいたく」
「王を囮に使うつもりかッ!」
鋭い視線を更に鋭くして睨むギ・ザーに、平然とプエルは頷いた。
「彼らは死兵です。真面に相手をして悪戯に被害を大きくする必要はありません」
何が彼らをそこまで駆り立てるのかは分かりませんが、と言い置いて、プエルは視線を地図に落とす。自軍の駒を本陣、左翼、右翼、後衛と並べていく。
「我が方が鶴翼の陣を取るなら、敵は必ず中央突破を図ってきます。そこを狙い撃ちます」
練られた罠は必殺である。
ゴブリンの仕掛けられる罠を全て注ぎ込み、その罠にかかった敵を殲滅する策。
「敵が罠を迂回して来たらどうするのだ?」
「その時は……」
迂回した敵の後ろから逆側の翼が襲い掛かるように駒を動かし、プエルは策を説明した。
「ですが、先程も申し上げました通り、敵は中央突破を狙うと思われます。強大な敵に致命の一撃を与えるのに、これ程有効な手はありません。この構図、どこかで見た覚えがあると思いませんか?」
「……メルギオン、か」
ゴブリンの王の言葉に、プエルは頷いた。
「攻守を変えて、という形になりますが。我が策に二度目の失敗はありません」
ゴブリンの王は頷き、全軍に命令を下す。
「敵は我らが全力を以って戦うに値するプエナの勇者である! 寡兵となって尚我らに屈せぬ気概、我が配下を退ける武勇、何よりも守るべき者達の為に命を惜しまぬ献身と勇気! 決して油断していい相手ではない!」
ゴブリンの王は一度目を閉じ、再び見開いた時には強敵を迎え討つ気迫に満ちていた。
「良いか、奴らを寡兵と侮るな! 奴らは最後の一人が生命尽きるまで戦い抜く真の戦士である! 此方も戦士の礼を失せず、全力で叩き潰せ!」
「御意!」
ゴブリン達が解散した後、王は推と名付けた肉喰らう恐馬に騎乗し腕を組む。
「来い、プエナの勇者よ」
王都の城門が開き、蒼鳥騎士団が土煙を上げながら出撃したのが遠目にも見える。
「我が覇道、止められるものなら止めてみよ!」
猛る内心を抑えきれないかのように、ゴブリンの王は倒すべき敵を睨み付けた。
◇◇◇
戦端が開かれたのはプエナの王都から北に外れた地域である。鶴翼陣形に広がるゴブリンの軍勢の左右の翼はギ・グー・ベルベナ率いるフェルドゥークに任されていた。恨み重なるプエナに対して雪辱の機会を欲したギ・グーに、プエルがその機会を与えたのだ。
王の前に壁として布陣するのはガイドガ氏族を率いる族長ラーシュカ。ギ・ガー・ラークス率いるアランサインの騎兵隊は、左右から迫ってくる敵の騎馬兵を迎え撃つ為、フェルドゥークに続く二枚目の壁として布陣する。
近衛として片腕のギ・ベー・スレイらが王の傍に侍る他は、殆ど全員が前線で敵と対峙している状態だった。後方に待機させたフェルビーら妖精族の弓兵隊と、ギ・ザー・ザークエンドのドルイド部隊は迫ってくる敵騎馬隊に照準を定めて待ち構えていた。
「機先を制します」
「よく狙って撃てよ!」
プエルの合図で、フェルビー率いる弓兵隊が弓を引き絞る。プエルの矢に従って妖精族の矢が迫り来る敵の先頭に向かって降り注ぐ。先頭を駆ける騎馬兵の何人かが矢を真面に受けて地面に転がり落ちるが、蒼鳥騎士団は一向に怯まず先頭にアレンを据えて突撃してくる。
「続いて、ドルイド部隊ッ!」
「王に敵を近付けるな!」
ギ・ザーの号令で放たれる風の魔法。
「続けっ!」
風の塊がグラディオンに切り裂かれる。吹き上がる土煙の中を蒼鳥騎士団は進む。
「左翼! 右翼!」
ギ・グー・ベルベナの軍勢に、左右に分かれた100騎程が向かっていく。
「団長! ご武運を!」
別れの言葉を口にすると、投槍を放って更に突撃する。
「くっ、押し込まれているだと!?」
ギ・グーはあまりの敵の勢いに、人間に圧される自身の軍を信じられないものを見るように確認するとすぐさま怒りに顔を歪めた。
「退くな! 退く者は俺が殺す! 王の前で醜態を晒すな!」
自身も斧と剣を振るい、死に物狂いで突撃してくる騎馬兵を迎え撃つ。
「……この分では中央はッ!?」
舌打ち混じりに吐き捨てるが、敵は更に押し込んで来る。
「ガイドガ氏族の猛者共よ! 奮え! 目の前の奴らはお前達の餌だ!」
「5番隊、6番隊突撃! 団長の道を開け!」
後衛を任せた小隊長の声に、騎馬兵達が従う。
豪快に笑うラーシュカが、棍棒を振るって向かってくる騎馬兵を叩き潰す。だが、それでも蒼鳥騎士団は馬ごとぶつかり、巨躯のゴブリン達の壁を押し開ける。
「……ええ、分かっています。貴方方は私の思考の死角を突く。だからこその二段構え」
プエルの言葉と同時に、ガイドガゴブリンを越えた騎馬兵達が落とし穴に足を取られて体勢を崩す。転げ落ちた騎馬兵はすぐさま立ち上がろうとするが、そこにフェルビー率いる弓隊から射撃が降り注ぐ。
「ギ・ガー殿に伝令! 後方から敵を包囲し殲滅せよと」
勝利を確信したプエルの指示に、伝令が走る。ただ、彼女は敵に別働隊が居る可能性を捨てきれていなかった。
罠とは勝利を確信したときにこそ有効なのだ。ガイドガゴブリンを突破し、王の御首に手が届くと思った瞬間だからこそ、落とし穴などという簡単な罠に嵌った。
同様に、彼女は勝利を確信しつつも全く別の指示を出す。
「ギ・ザー・ザークエンド殿の部隊は後方を警戒!」
「プエナに栄光あれ!」
「っ!?」
プエルが伝令を走らせた直後、アレンの直属の兵士達が彼の前に立つ。突き刺さる矢を物ともせず、アレンの道を守る。
「行ってください、団長ッ!」
部下達の壮絶な覚悟にアレンは頷き、彼らの屍を乗り越えて前に進む。
「近衛ッ!」
プエルの言葉を待たず、ギ・ジー率いるゴブリン達がアレンの前に立ち塞がる。
「行かせん!」
今まで身を潜めていたギ・ジー・アルシルの暗殺部隊がアレンに襲い掛かるが、群がるゴブリン達を弾き飛ばしながらアレンは進む。ギ・ベー・スレイ率いる近衛に対して、団員達が自らの身を盾にして道を開く。
「ヌゥウウラアァアアアアァ!」
そして遂に、アレンは黒炎揺らめく大剣を抜き放ったゴブリンの王の姿を発見する。
「グルゥウウウオオオアァアア!」
アレンとゴブリンの王の咆哮と共に、フランベルジュとグラディオンが激突する。
「くっ!?」
魔物に対する特殊効果故か、グラディオンを受け止めたゴブリンの王の体から力が抜ける。だが、ゴブリンの王は自分自身に活を入れて力任せに相手を押し返す。
僅かに開いた間合いを利用して真上からフランベルジュが振るわれるが、アレンは間合いを切って後方へ跳躍。歩幅にして10歩程の間合いを取った両者は、即座に前に出た。
アレンには時間がない。
今や自身の体は崩壊寸前。振り向けば死神が直ぐ傍にまで来ているような錯覚を覚える。死の影が自身を捉えるまでにゴブリンの王を倒し、プエナを救わねばならない。
対するゴブリンの王は、プエナの兵士達を死兵に駆り立てているのが目の前の青年だと認識する。手にしているのは神代の武器である聖剣グラディオン。先程、無自覚に口にした勇者という不吉極まりない単語が脳裏を過る。
ゴブリンの王は理屈ではなく直感で危機を察知していた。目の前のこの男は、自身を滅ぼし得る何かを持っているのだと。それ故に焦りを覚えた。ここでこの男を倒さねば自身の未来とゴブリンの未来、更にはここまで築き上げてきた王国の未来は闇に閉ざされてしまう。
再び両者の武器が振るわれる。輝くグラディオンが激突する度、黒の炎が散らされフランベルジュの刀身が暴かれる。だがそれでもゴブリンの王の強靭な筋力によって底上げされた剣戟は、並の剣士の振るうそれよりも余程速い。
魔素を上乗せ出来ないのなら、自身の持ち得る全ての力を使うまで。プエナの勇者を打倒するべく、ゴブリンの王は大剣を振るう。だが、空気ごと切り裂くような一撃をアレンは難なく潜り抜ける。ゴブリンの王とアレンではかなりの身長差がある。頭2つ分以上離れた身長差だけで、振るわれる得物の射程範囲は開いてしまう。
王は懐に入り込んだアレンの剣の間合いから離れようとして、唐突に鎖が巻きついたかのように動きが鈍り、剣先が僅かに体を切り裂く。
「何だっ!?」
遅れて黒い炎が血液の代わりに噴き出し、傷を再生していく。その傷も塞がらぬ内に更にアレンの剣が王の体に炎を走らせる。研ぎ澄まされた勘を以って攻撃を避けるが、一閃する度に浅くない傷が王の体に刻まれる。
「負けられぬ! こんな所で、勇者などに!」
王は自身の内にある蛇の力を以って傷を癒やす。
世界を敵に回す冥府の蛇達の力を無理矢理引き摺り出す。神代の武器の呪縛に抗し得るのは、やはり神代を生きた者達の力しかない。
無限のような回復力を目の当たりにしても、アレンの攻勢は一向に衰えることがない。踏み出す一歩は更に勢いを増し、振るわれる剣は段々と王の体を深く切り裂いていく。
退がるゴブリンの王を追撃するアレン。だが、その構図は長くは続かない。ゴブリンの王とて歴戦を経てここに至った戦士である。劣勢の時の戦い方は当然心得ている。先ずは敵を止めねばならない。そう考えて斬られる覚悟で前に出る。同時に大剣の影に体を隠すように防御の態勢を取る。
ゴブリンの王の行動にアレンは咄嗟に反応できなかった。大剣の上からグラディオンを叩き付ける形になったが、即座にそれが失敗だと悟る。合わせた剣ごと弾き飛ばそうとするゴブリンの王の圧力は、剣を手放さなかったアレンを凄まじい勢いで吹き飛ばしたのだ。
態勢を崩したアレンに、ゴブリンの王が反撃に出る。
全てを切り裂くような横薙ぎの一撃。当てることを最優先に更に踏み込むと、返す刀で二連撃。
「ぐっ!?」
アレンの口元から血が溢れる。一撃目を避け、二撃目を真正面から防御したアレンの腕の骨には罅が入っていた。僅かに硬直したところへ、更にゴブリンの王の大剣が迫る。
「我は刃に為り往く!」
ここが勝負どころだと見極めた王の詠唱。今までよりも更に勢いを増した黒炎が渦を巻いてフランベルジュに纏わり付く。黒の炎を体の至る所に纏ったゴブリンの王は、聖剣の輝きを打ち消さんと踏み出す。体に纏わり付く炎すら結集して、フランベルジュの纏う炎は更に大きくなっていく。
まるで火柱のようになった大剣を、アレン目掛けて振り下ろした。
「グラディオン、俺に力を寄越せ! 約束を果たす為の力を!」
迎え撃つ勇者は振り下ろされる大剣に真っ向から立ち向かう、下段から大剣を打ち砕くべく振り上げた聖剣グラディオンはフランベルジュと衝突し、王の一撃を受け止める。踏み締めた足は地面に罅を入れ、食い縛った奥歯が砕ける。
勇者は確かに王の一撃を止めた。
だが、振り抜かれた大剣の魔素までは止めることが出来なかった。胸から脇腹までを魔素の刃が切り裂く。溢れ出る血は既に致死量のそれ。
勝負は決したと王が僅かに気を弛めた瞬間、倒れるかと思われた勇者の体が踏み留まり、視線がゴブリンの王と交差する。
未だ勝負は終わっていない! 王はそれを直感で理解した。
「ぐっ、がああああぁ!」
最早僅かな余裕すら無い。その動きにゴブリンの王が反応出来たのは咄嗟に退がってしまったからだった。動く筈のない足を動かし、上がる筈のない腕で勇者が反撃に出る。
口から血を吐き、動かすことも叶わない筈の体を前に。
「──グっ」
聖剣が振るわれ、大剣が迎え撃つが、先程までとは違い一方的に王が追い込まれる。振るわれる一撃を防ぐのが精一杯で、反撃する暇など微塵もない。ゴブリンの王をして、これ程の気迫を持つ敵を他に知らなかった。嘗て戦ったブランディカをも超える、冥府の淵に立つが故の魂の輝き。
「……この程度、越えられなくて何が王かっ!」
王は弱気になりそうな自身を叱咤し、更に魔素を引き出す。再び巻き起こる黒炎の火柱。だが、何故か酷く頼りなく思える。それはゴブリンの王が経験したことの無い感覚だった。
神の力も、呪いも、鍛え抜かれた軍勢ですら、目の前の男は越えてきた。
己の意志一つで立ち塞がる男に、ゴブリンの王は久しぶりに感じる心の動きに戸惑う。
「──震えているだと? この俺が!?」
嚇怒で感情を塗り潰そうとしても、自身の心に怯えが生まれ始めているのを誤魔化すことは出来ない。このままでは負ける。明確な敗北の予感がゴブリンの王を震わせていた。
一合撃ち合う毎に徐々に退がるゴブリンの王と、追撃するプエナの勇者。
打ち合わされる剣戟は既に40合を越え、更に回数を増やして尚加速する。
「グルウゥゥウウオオオオアアアア!」
「──がぁあああ!」
燃え尽きる前の蝋燭のように一層激しく撃ち合う王と勇者の剣戟は、嵐の如く周囲の全てを巻き込んで破壊する。
ゴブリンの王の振るう大剣にアレンの振るう一撃が真っ向からぶつかり、互いの剣が弾かれる。驚異的な踏ん張りで耐える両者は再びその場で斬り合う。一閃する度に暴風が吹き荒れ、刀身がぶつかり合う度に衝撃波が発生し、拡散する。
「俺はァァアア!」
「ラクシャァアアア!」
両者の踏み込みはほぼ同時。地面が割れる程の衝撃で弾かれた剣が、再び最短の軌道を通って互いの剣とぶつかり、遂に勝負は着いた。王の大剣は砕け散り、勇者の剣がゴブリンの王の喉首に突き付けられていたのだ。
王は敗れた。
誰よりも王自身が、そう感じていたのだ。
「……」
「……」
無言で視線を交わす。互いに肩で息をし、王の体からは黒の炎が傷を癒やす為の熱気を上げ、勇者の体からは大量の血が滴り落ちる。
ゴブリンの王は認めざるを得なかった。目の前の勇者──否、人間は強い。それは聖剣を持っているというだけではない、意志の強さだった。一国の武を担うに相応しい誇り高き男である。
この男になら負けても仕方がない。そう納得させるだけの力がある。
幾度と無く強敵と戦い、そして破ってきた王は敗者の定めを理解していた。腰と背中の大剣に手を伸ばせば、即座に死が襲い掛かってくる。避けようのない死が。
ゴブリンの王は、最後の瞬間までアレンの隙を窺っていた。僅かでも隙を見せれば大剣を抜き、アレンに襲い掛かるつもりであった。
「……運、命に追い、つ、かれた、か」
だが、倒れたのはアレンだった。
僅かに後ろを振り返ったアレンの目には、死神が己の首を確と掴んだのが見えた。文字通り全ての力を使い果たし、その場に倒れ込む。
王は敗北したが生き残り、勇者は勝利を収めたが死ぬ。
「ラ、ク……」
愛する者の名前を呼び切ることも出来ず、息絶えたアレンの前にゴブリンの王は膝を突いた。
「王、ご無事ですか!?」
駆け寄ってきたプエルに、王は砕けた大剣を杖にして立ち上がりながら問い掛ける。
「プエル、戦況は?」
「蒼鳥騎士団は全滅。全員の死亡を確認しています。現在、プエナの包囲の為に軍を動かしていますが……」
「軍を止めろ。遺骸をプエナへ送る」
有無を言わせぬゴブリンの王の言葉に、プエルは僅かに沈黙する。
「二度は言わぬ。俺に敗北を刻んだ男を野晒しにすることは出来ん。例え、これが偽善だと罵られようともだ」
「御意」
その後、ゴブリンの王の軍勢はプエナから一旦撤退する。
翌日、騎士団長アレン以下蒼鳥騎士団の主だった者達の遺体を返還するとして使節を発し、プエナの王都へ赴いた。使者には妖精族のフェルビーが立ち、ゴブリンの王の代理として女王ラクシャと長老院へアレンの奮戦と最後を伝えた。
その後、戦う力を失ったプエナはゴブリンの王に城下の盟を誓い、プエナはゴブリンの王の下に自治を許されることになる。女王ラクシャはアレンの死を知った直後に自決した。
プエナ戦役と呼ばれた戦は終結を迎えたが、一人の若者が見せた勇気は燦然と輝き、人々の記憶に焼き付くことになる。
プエナの勇者の名前と共に。
ゴブリンの軍勢はプエナを下し、北へ向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◆
【個体名】アレン
【種族】人間
【レベル】92
【職業】騎士団長・プエナの勇者
【保有スキル】《剣技A+》《心眼》《騎兵疾走》《天賦の才》《騎士の誓い》《不屈の勇気》《踏破する限界》《往生際の悪さ》
【加護】運命の女神
【属性】なし
【状態異常】聖剣の呪詛
【装備】聖剣グラディオン
《騎兵疾走》──騎兵を率いる際、騎馬の速度に補正(中)
《不屈の勇気》──窮地に陥いると全能力上昇(中)、剣技の補正効果が一段階上昇。
《踏破する限界》──不可避の傷と引き換えに自身の潜在能力を極限まで引き出す。全能力上昇(大〜極大)、一時的に状態異常を無効化し、限界を無視して体を動かすことが可能。時間経過により【状態異常】聖剣の呪詛による反動を受ける。疲労(大)、心身消耗(大)、寿命減少(大)が強制付与。不可避の傷は、徐々に命を蝕む。
《聖剣グラディオン》 失われぬ輝きと共に魔物の魔素を拡散させ動きを封じる力を持つ神代の武器。剣に認められぬ者が振るうと命を縮める呪いを併せ持つ。
◆◇◇◇◇◇◇◇