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ゴブリンの王国  作者: 春野隠者
群雄時代
280/371

プエナの勇者Ⅲ

 硬い地面を踏み締めていた筈が、気付けば泥沼に片足を突っ込んでいた。

 プエル・シンフォルアのプエナ戦役での所感を表すなら、これに尽きる。

 ギ・グー・ベルベナ苦戦の報を受けたゴブリンの王がプエナへの援軍派遣を決定した時、妖精族の軍師たるプエル・シンフォルアはその采配に疑問を呈した。

「交易国家プエナですか……。必要とあらば向かうべきですが、王自ら出向かれる必要は無いのでは?」

 将軍位を預けたゴブリン達を四方へ派遣し周辺を制圧した意図は、混沌とした情勢を一気に塗り替える為である。そして、それと同時に各ゴブリン達の進化を促す為でもあった。

 これからの戦では大軍の指揮を執ることが要求される。それはゴブリンの王が居ようが居まいが関係なく、もっと言えば王が不在の戦場でも問題なく指揮を執れるだけの力が求められるのだ。

 次の標的は、ゲルミオン王国。

 ゴブリンの王が世界を統べるのに必要な手順を、プエルは確実に脳裡に描き出していた。

 聖騎士という突出した戦力を有するゲルミオン王国を落とすには、ゴブリンの王の力だけでは足りない。今や独自の軍を率いている将軍達の力をも高めねばならないという課題もあるのだ。

 プエナなどという半死半生の国相手に梃子摺るようなら、将軍位の剥奪も有り得る。

 プエルは内心でそう考えていたが、ゴブリンの王の認識はまた別だった。

「ギ・グー程の猛者がこうまで梃子摺るのだ。あの国には、何かがある。聖剣の存在も無視出来んしな」

「聖剣? あぁ、確かグラディオンでしたか……。神代の武器と聞いていますが」

「そうだ。以前あの剣を持つ者と刃を交えたが、まるで此方の力を弱めるような異質な力を感じた」

 王の言葉に、プエルは考え込む。

 確かに魔物全般に対して有効な武器というのは存在する。魔物の魔素へ直接干渉を行う類の武器だが、神々の加護篤きゴブリンの王にも効果を及ぼすとなれば、それは殆ど最上位に位置するような武器だ。

 当然だが、そういった武具は数が少なく、量を揃えることは難しい。

 大軍を前にして、そのような武器を振るったとて大勢を決するには至らないとプエルは判断する。ギ・グー以外のゴブリンが見事な成果を上げている中、彼女の元にはシュシュヌ教国の“戦姫”クラウディアの死去が伝えられていた為、やや焦りがあった。

 後継者を決めぬままに逝ったクラウディアの後釜を狙って、シュシュヌ教国では必ず混乱が起きる。その隙に付け入って、あわよくばゲルミオン王国を攻略したい。

 機を見るに敏な彼女からすれば、今の情勢は間違いなく好機であった。シュシュヌ教国が混乱から立ち直る前にゲルミオン王国へ攻め入ることが出来るなら、地理的要因から彼の国に援軍は来ない。

 一挙に叩き潰すことも可能であると、彼女の明晰な頭脳が計算を叩き出したのだ。

「ギ・グー殿を一旦撤退させるという案は?」

「足元を疎かにして高みは望めまい」

 王の答えに、再び彼女は考え込む。

 ゴブリンの王は戦場では無謀に近い程果断であるのに、こと戦略においては実に慎重である。足元を固め、ともすれば敵が崩れるのを待ちさえする。

「御意に沿わないことは承知で申し上げますが、援軍の規模を最小限にし、主力は北に向かわせるべきかと」

「ふむ……」

 無論、プエルの言う主力にはゴブリンの王も含まれている。

 援軍を差し向けるというのは王の決定である。では、その規模をどの程度にするのか? この段階でプエルと王の認識に齟齬が生じている。それは足元を固めたい王の意見と、周辺諸国情勢を睨んで好機を窺うプエルの意見の相違からくるものであった。

 プエルは現在の周辺諸国の情勢と、この先の展望を語る。

 彼女の見立てでは、ゲルミオン王国の方がプエナよりも危険である。今は未だ老王アシュタールの治世故に本格的な攻勢に移らないので、脅威は低めに見積もられている。だがゲルミオン王国の脅威は、聖騎士を二人欠いた状態で尚プエナよりも上である。

 彼の国がもし全力で西域へ攻め込んで来たなら、如何に戦巧者のラ・ギルミ・フィシガと言えども支えきれないだろう。西域の陥落は、豊富な援軍を送る暗黒の森と現在支配を確立途中の南方との断絶を意味する。

 聖騎士一人を以って暗黒の森を抑え、反魔物を謳って諸勢力を蠢動させれば、ゴブリンの王率いる軍は聖騎士と戦う前に数を減らされてしまうだろう。そればかりでなく、今まで築き上げてきた戦果の崩壊をも有り得るのだ。

 対してプエナはどうか?

 シュシュヌ教国へと続く交易路は既にゴブリンの支配下を通らねばならず、四周をゴブリンの勢力で囲んでいる。最も警戒すべきプエナの精鋭たる蒼鳥騎士団は、その力を往時の半分にまで落としている。

 クシャイン教徒のように国民を皆兵と出来るなら兎も角、兵数の限られるプエナに対して、そこまで過剰に反応すべきではないと彼女は考える。

 ギ・グー・ベルベナは失敗した。

 ならば、それはそれとして違う方法で失敗を取り返せば良い。汚名返上の機会は、これから幾らでもあるのだから。

「だがな、今プエナには反抗勢力が集まり始めているのではないか?」

 その言葉で、プエルは王が何を懸念しているのかを悟った。

 混沌たる南方の情勢を統べる為に急速に膨張したゴブリン勢力は、その地域の全ての者達を心服させて支配下に組み入れている訳ではないのだ。一時でもプエナを放置すれば、ゴブリンの統治を認めない者達がプエナに結集してしまい、北へ向かう際に背後を突かれかねない。

 今まで後背を暗黒の森と熱砂の神(アシュナサン)の大砂漠に守られてきた。ゴブリンの王は、それ故に後背に敵を抱えることに不安を覚えているのだろう。

「気の回し過ぎではありませんか? その時こそギ・グー・ベルベナ殿が人間を討つ時かと」

「プエルよ。こんな話を知っているか? 昔、とある娘が神から箱を賜った。決して開けてはならぬと厳命された箱を、娘は誘惑に負けて開けてしまったのだ」

 それは、この世界の物語ではない。異なる世界の古き物語だった。

「その瞬間、この世のあらゆる災厄が箱の中から解き放たれた。だが、その箱の奥底には唯一つ残ったものがあった。災厄の詰まっていた箱の中には、希望が残っていたという」

 プエルは黙ってその話を咀嚼し、ゴブリンの王は続けて口を開いた。

「人は諦めることを知らぬ。僅かな希望でさえ、彼らの心を繋ぎ止める。窮地に追い込んだ敵をこそ、俺は強敵として見做しているのだ」

「人にとって我らは災厄。それが強ければ強い程、彼らもまた強烈な反撃を企てると?」

「世は災厄に覆われ、勇敢なる若者の手には聖剣がある。これ程までに民を刺激するものはない。プエナには条件が揃い過ぎている」

 ゴブリンの王は、プエナがある西を見た。

「俺が魔物である限り、俺の前には必ず勇者が立ちはだかる」

 それは半ば確信しているような物言いであった。

「それ程に気になるのなら、鎧袖一触にしてみせましょう」

 軍師は、プエナ攻略を決意した。


◇◆◆


 プエルは北に向かわせる筈だった軍を、エルレーン南西のプエナへ向ける。迷宮都市を攻略したギ・ガー率いるアランサインはほぼ全軍を呼び戻し、補給基地を築きつつあるギ・ギーの手元からギ・ジー・アルシルを手勢と共に帰還させた。

 流石にゲルミオン王国と対峙するラ・ギルミ・フィシガから戦力を引き抜くのは躊躇われたが、代わりに暗黒の森から四氏族最強と呼び声も高いガイドガ氏族を動員する。

 人間の護衛に飽いて暇を持て余しているフェルビーや、迷宮都市で募集した冒険者などを加えて軍を編成する。実働部隊のみで総勢3000余り。更に後方を担う為に旧エルレーン王国の官僚集団を使って兵站組織を整えると、王がプエナ攻略を決意してから20日を以って軍は出発の準備を整えていた。

「速攻戦術を仕掛けます」

 軍の主だった者達が集まる席で、彼女は宣言する。

「ギ・ガー・ラークス殿率いるアランサインを先鋒として、プエナを急襲。女王ラクシャに降伏を迫ります」

 反対意見はない。予め王に確約を取っているのだ。

「出発は明朝とします」

 説明を終えるプエルの後を引き継いで、ゴブリンの王が集まった者達に宣言する。

「我は殺戮は望まぬ! だが、我が統治を受け入れずあくまで反抗するというのなら話は別だ! 我が望むは世界の果て! 我が前に立ち塞がる敵は全力を以って砕くのみ!」

 王の宣言に、集まった面々はそれぞれに頭を垂れた。

 翌日、ギ・ガー・ラークス率いるアランサインの旗を掲げた一軍がエルレーンを出発する。王の近衛兵である騎馬兵、パラドゥアゴブリンの騎獣兵、更に人間の騎馬隊も僅かながら加えたその軍容は、南方を制しつつある自信と覇気に満ちていた。

 続くのは強猛たるガイドガゴブリンと、それに劣らぬゴブリンの王の騎馬隊である。ギ・ガー・ラークスに分け与えた為に減少こそしているものの、片腕のギ・ベー・スレイを筆頭に一糸乱れぬ歩調でゴブリンの王の周りを固める。

 後尾を固めるのはフェルビー率いる妖精族と魔術師級ゴブリンギ・ザー・ザークエンドの不在により、代理として祭祀(ドルイド)部隊を率いるギ・ドー・ブルガである。

 後衛の彼らは、後方支援と援護射撃に特化する部隊である。ただ、フェルビーの気質がそうさせるのか、妖精族の戦士はそれぞれ接近戦の備えも怠りなく、背中には弓と共に盾も装備されていた。

 綺羅びやかな妖精族の戦士の鎧は、彼らの故郷で生産される青銀鉄製である。人間の世界では非常に珍しく高価な装備品は、冒険者などからすれば垂涎の品であろう。そうでなくとも洗練された意匠の鎧を纏っているのは、戦乱を乗り越えた逞しい妖精族だ。美男美女が多いその部隊は、人間達からも一際大きな喝采が上がっていた。

 エルレーンを出たゴブリンの軍勢は、その健脚を遺憾なく発揮しすぐさまプエナの首都へ迫る。臣従を誓っていない街などを一切無視した行軍速度は驚くべきものであり、国境を突破してきたゴブリンの大軍にプエナの長老衆と民衆は度肝を抜かれることとなる。

 同時にゴブリンの王はギ・グー・ベルベナに使者を送り、ゴブリンの王の軍と合流するよう指示を出していた。

「……王がいらっしゃっているのか」

 忸怩たる思いを抱えながら指示を聞いたギ・グーは、占領していた街を放棄。ゴブリンの王と合流すべく、フェルドゥークの軍勢を動かす。

「……遅かったか」

 王が来ない内に勝負を決めたかったギ・ザー・ザークエンドも、僅かに臍を噛んで指示に従う。王の非情さを補う為にギ・グーにその役割を任せようとしていたギ・ザーだったが、王の登場で自由にギ・グーを補助することが出来なくなったと悟ったからだ。

 良くも悪くも甘い王である。

 降伏した人間の、しかも力を持たぬ者達の死など許さないだろう。

「プエナは命脈を保つかもしれぬな」

 滅ぼしきれなかった人間の国に冷たい感想を漏らして、ギ・ザーはフェルドゥークの軍勢と共に王の下へと向かった。


◆◆◇


 先鋒を任されたギ・ガー・ラークスはプエナまで後2日という距離に迫った時、待ち構える軍勢を発見した。

「プエナの軍勢だな」

 ギ・ガー・ラークスの役割はプエナを急襲し、その降伏を引き出すことである。

 であるならば、プエナの継戦の意志を絶つ為にここで敵の軍を破るのは王の意志にも叶うとギ・ガーは考えた。

「突撃陣を」

 片腕で手綱を御しながら、陣を整えるギ・ガー。自身が先頭に立って中央突破を図る楔型の陣形を整えていく。

「……ほぅ」

 遠目に見える敵の軍勢は、凡そ2000程であろうか。朦々と土煙を上げて迫ってくる様子に怯えは見られない。良く調練された軍の動きだ。敵の軍は此方と同じ楔型だが、やや左側に羽根を伸ばした歪な形だった。

 その意図する所は分からなかったが、楔型の先頭にいるのが敵の指揮官だとギ・ガーは当たりをつける。ならば、それを討ち取ればこの戦は終わる。ギ・ガーは、王がなるべく犠牲を出さずに支配地域を広げたいのだと理解していた。その為には何が最善なのか、彼自身考え抜いていたのだ。

 その考えがギ・ガーに指揮官を狙うという戦術を取らせた。混乱した軍を一気に呑み込み、この戦を終わらせる。

 だが、敵の練度は自身が攻略した迷宮都市の軍勢よりも脅威かもしれないと考えて、ギ・ガーは気持ちを引き締め、後ろに続く部下達に向かって声を張り上げた。

「敵は強いぞ! 擦り抜けながら馬上から敵を叩き落とせ!」

 応える気合の入った声がゴブリン達から上がり、それを皮切りにギ・ガーは軍の速度を上げていく。地を蹴る黒虎の脚力は障害物がないこともあって勢いに乗り、あっという間に彼我の距離を詰めていた。

 手綱を口に加えると、騎獣に括り付けていた槍を引き抜く。

 後は敵とぶつかるのみである。

 長腕が握り締めた鉄槍の感覚は加速する景色の中で次第に研ぎ澄まされていく。敵の先頭を駆けるのは輝く長剣を振りかざした人間の男である。勇敢にも兜を着けず、素顔を晒して髪を風に靡かせている。

 あれを殺る。

 ギ・ガー・ラークスの戦意が、そこに向かって収束していく。地面を駆ける黒虎の揺れの中で集中力は極限にまで研ぎ澄まされて音すら感じなくなり、徐々に迫る間合いを測った。

 ──今だっ!

 ギ・ガーの必殺の間合いの中で振るわれた槍は、硬い感触に弾き返される。それと同時に、打ち返しの一撃を槍を盾にして防ぐ。常識外れの重い一撃だった。ギ・ガーどころか黒虎までもが一瞬蹌踉ける程である。

「ぐっ」

 手綱を噛んだまま声だけを漏らして、今度は目の間に迫る他の敵に槍を向ける。騎馬同士の戦闘は一瞬の命のやりとりである。一度離れた敵と遭遇することは稀であり、一度の突撃の後は混戦になるのが常であった。

 討ち漏らしたという無念の思いとは別に、目の間に迫る騎兵を倒さねばならなかった。どの騎兵も弱くはない上に馬にまで鎧を着せた重装備の部隊である。ギ・ガーは必死に目の前の敵を突き殺し、己の活路を探る。

 一度付いた勢いだったが、当然混戦の中では黒虎の加速は緩み、徐々に減速していくことになる。こうなってしまってはこのまま混戦に付き合うか、若しくは一度離脱した上で態勢を整えるしか無い。敵は純粋な騎馬兵のみではなく、重装備の歩兵も従えていたらしい。

 そこに捕まってしまったギ・ガーは混戦を嫌って再度態勢を整えるべく黒虎に敵から離れるよう指示を出していた。だが、敵の方が一枚上手であった。

「ギ・ガー殿、左翼から!」

 悲鳴じみた声が後ろから聞こえたと思って視線を転じると、敵の左翼に展開していた部隊が勢いの止まった後方部隊に食い付いてきていた。

 ギ・ガーは瞬時に敗北を悟る。勢いの止まった騎馬兵など、統率の執れた軍隊の前では良い的でしか無い。無意識に広げられた敵の左翼を嫌って右翼に切り抜けようとしたのも失敗だった。

 敵の指揮官の打ち返しの一撃で、ギ・ガー自身の勢いが削がれしまったのだ。それでは彼に続く部下も加速は難しい。

 此処で粘って失う兵の命と自身の不名誉。ギ・ガーは王がどちらを優先するだろうと考え、即座に判断を下す。

 口から手綱を離すと、ギ・ガーは槍を縦横に振るって即座に宣言する。

「撤退だ! 東へ抜けろ!」

 黒虎を促して血路を開くと、邪魔な歩兵を薙ぎ払いながら撤退する。予想された追撃は無く、大きな被害を出さずに撤退に成功する。

 だが、ゴブリンの全軍にプエナ侮りがたしという感情を植え付けたこの戦果は、ギ・ガーの誇りを大いに傷付けただけでなく、プエルの計算をも狂わせることになる。

「追わなくて宜しいのですか」

 問いかける副官に、アレンは目を細くして敵の背を見送った。

「必要ない。討つべき敵は一つ」

 馬首を返すと砂馬を御して、軍を北西に向ける。

 負傷者を近くの街に預け武装を交換すると、更に長駆けしてギ・グー・ベルベナの軍を攻撃する。その際にはギ・ガーと対峙したときのような馬に鎧を着せた重装備ではなく、軽装かつ投擲武器などを主とする装備であった。

 満を持して攻撃を加えるアレン達を相手に、機動力で勝てないギ・グーは防御を固めて時折祭祀(ドルイド)の魔法と投石などで牽制するのがやっとであった。攻撃に転じようと主張する部下にギ・グーは頑として首を縦に振らず、ただ只管に攻撃を耐える。

 敵の騎馬兵から降り注ぐ投げ槍(ビルム)を盾で防ぐ時間が続く。夜の神(ヤ・ジャンス)の時刻が迫り漸く敵が逃げ去ると、ギ・グーは歯軋りしながら王との合流を急いだ。

 ギ・グーは勇敢と無謀は違うと承知していたし、追っても追いつけないのなら先程の攻撃をまた繰り返されるだけだ。ゴブリンは人間と比べて接近戦には強い。だが、投げ槍などの遠距離武器を用いられてしまえば劣勢に陥いる。

 ギ・ザー・ザークエンド率いるドルイドの軍勢、或いはフェルビー率いる妖精族の部隊。ゴブリンで言えばガンラ氏族。ギ・グーの軍には、そういった長距離での攻撃を得意とする部隊が欠けていた。

 プエナに蓄えられた豊富な資金を使って武装を次々と変えるアレンの戦術は、それぞれの特性に応じて軍を編成しているゴブリン軍にとっては相性が悪過ぎた。

 ギ・ガーなら速度を生み出す為に相対的に防御を捨てている。ギ・グーの軍ならば、速度を追求できない分装備に多様性を持たせてある。このような独自の特性を活かした軍の編成をしていれば、当然弱点が見えてくるのだ。

 アレンはそれを正確に突いて来た。

 ゴブリン軍の情報は、彼らが活躍すればする程彼の耳にも入ってくる。その動向は冒険者や近くの街からの諜報で、逐一彼の元へ集まってきている。

 プエナへと進軍するゴブリンの軍勢の前に、再び聖剣を掲げた若者に率いられた蒼鳥騎士団が立ちはだかっていた。



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