プエナ陥落
プエナと赤の王の協議が行われていたのは、王都から1日の距離にあるカルアンという街である。女王ラクシャとの婚姻と戦に対する協力、今後のブランディカのプエナへの政治的介入の有無など、プエナ側との折衝を重ねて協力態勢を確立する為の談合の場から帰る途中のことだ。
堂々と大通りを歩くブランディカは、プエナの長老の一人と談笑しながら陣営地に戻る途中である。護衛はプエナ側が差し出した最低限の者達が10人程。
そのブランディカの目の前に、突如として立ちはだかる男達がいた。
「ブランディカァアア!!」
怒声を上げる男達が短剣や長剣を引き抜き、辺りは瞬時に怒号と悲鳴が飛び交い騒然となる。不意を突かれた護衛達の反応が遅れ、襲撃者の何人かがブランディカに肉薄し斬り掛かるという事態を招いてしまう。
だが、巨大な連合血盟の主であるブランディカは強かった。超然とした態度で襲撃者を叩き伏せると、それを皮切りに護衛を鼓舞して残った暴漢達を退けたのである。
「ご、ご無事で何よりでした」
阿諛追従の笑みを浮かべる長老を一瞥すると、ブランディカは懐に仕舞っていた宝石を握り締める。冒険者がよく使う緊急時に自身の位置を報せる道具だが、その意図を知る者はほんの少数だった。先程まで談笑していた長老に冷たい視線だけを向けたブランディカは、遅れてやってきた血盟員達をその護衛につけると、一言も発さず町の外へと向かった。
「た、大公殿!」
慌てふためく長老を敢えて無視するブランディカは、町の外に控えていた赤の王の陣営地にて戦場と何ら変わらない指示を出す。
「た、大公殿、お待ちを!」
何が起ころうとしているか理解した長老は、慌ててブランディカの足に縋り付くようにしてその行動を阻止しようとした。
「帰って長老院に伝えろ。俺は売られた喧嘩は買うとな」
長老の顔から血の気が引いて青くなる。整然と並ぶ赤の王の軍。砂漠の風に煽られた戦旗がはためく光景は、研ぎ澄まされた刃の如き鋭さをもってプエナに突きつけられていた。
「お前達もこれを連れて逃げるか、戦の支度をするのか決めるがいい」
ブランディカの言葉で腰を抜かす長老を守るようにして、生き残った護衛達がカルアンへと戻っていく。それを視界に収めるとブランディカはサーディンを呼ぶ。
「使者を立てるぞ。その後に攻める」
「使者の役目ならグレイブの爺の仕事……あぁ、そういうことか」
言いかけて途中で納得したサーディンは、使者を選ぶとカルアンへと放った。使者に立った男は傲慢で自尊心が強く、凡そ使者としては適当でない者を選んだ。
端から交渉など無用と考えてのことだ。カルアンが暴発すれば良し。頭を下げて降伏するならそれもまた良しという考えである。ただ、ブランディカ率いる赤の王としてはカルアンに暴発してもらいたい。プエナの王都までは1日の距離である。
交渉というテーブルに付く間もなく、プエナを一気に平らげるつもりだった。幸い、最も障害になりそうな蒼鳥騎士団は団長アレンと共にゴブリンの警戒の為に北方にある。
「進軍の旗を振れ!」
刻限を過ぎても戻らない使者に、サーディンは進撃を命じる。
「王の道を切り開く! てめえら、奮え!」
地鳴りのような鬨の声と共に、赤の王はプエナに向かって進軍を開始。僅か2日で王都を完全に占領し、女王ラクシャをその掌中に収めたのだった。
◆◇◆
王都陥落の報を聞いた蒼鳥騎士団団長アレンは、愕然となって手にしていた剣を取り落とす。
「では……では、ラクシャ女王陛下は!?」
使者の男の胸倉を掴み上げんばかりの勢いにたじろぎながらも、使者は安否不明の報告をせざるを得なかった。
「俺は、俺は……何の為に戦ってきたんだ! アイザス、姫……」
「団長……」
俯き、視線すら定まらないアレンに、団員達も声を掛けることが出来なかった。
「……団長、この上は赤の王に決戦を挑むべきです!」
やがて、一人の幕僚が思い余ってアレンに進言する。
「決戦、だと?」
「そうです! 雑軍を合わせれば、こちらには6000もの兵力があります。これをプエナに向けて進軍させれば──」
「報告、王都から使者です!」
色めき立つ彼らの下に、王都から使者を名乗る長老の一人が馬を飛ばしてやって来ていた。
「アレン団長はいるか!?」
「無事だったのですか!」
以前から顔見知りの長老は軽く頷くと、威儀を正してアレンに向き直る。
「女王陛下の御言葉を伝える。軍を返し、プエナに帰参せよ。これは女王陛下直々の御命令だ」
「無事であらせられるのか!?」
頷く使者に、アレンは僅かに瞑目する。
プエナに帰参すれば、それは自動的に赤の王の下に付くということになる。女王ラクシャが健在とはいえ、恐らく彼女の身は赤の王の手の中。或いは蒼鳥騎士団は使い勝手の良い駒のように酷使されるかもしれない。帰参後、即座にアレンの首を要求されても何ら不思議ではない状況だった。
「分かった。女王陛下の命とあらば私に異存はない」
「……よくぞ決断した」
女王の言葉に従ったアレンは軍を返し、王都へ戻る。道中でプエナの王都と赤の王の動きを聞いたアレンはブランディカの手腕に唸るしかなかった。カルアンを1日で占領したブランディカは、すぐさま軍を王都に向ける。
その早さは正に電光石火と呼ぶに相応しく、王都は防備を整える間もなく陥落することになったのだ。だが、カルアンを1日で落としていたお陰で、王都から人が逃げ出す時間は最低限作られた。女王は彼らの手に落ちたが、長老の殆どは自派の勢力の強い領地に逃げ戻った。王都でラクシャ女王と共に捕虜となったのはごくごく少数だったのだ。
現在ブランディカは王都にて女王ラクシャと共にあり、軍を分割して逃げた長老達の討伐の最中らしかった。
「外交が稚拙と言えば稚拙。だが、これは態とではないのか?」
長老の言葉に、アレンは頷く。
「反抗的な長老達を各地に散りばめて掃討する。一見下手を打ったように見えるが、圧倒的な大軍は変わらぬままに長老達の地盤すらも尽く手に入れるつもりなんだろう」
プエナの富強の源泉は交易である。交易路に根を張るが如くに地盤を持つ長老達をそのままにしていては、赤の王の吸う旨味が少なくなると読んだのではないだろうか? これがカーリオンなら長老達を一箇所に集め、纏めて首を刎ねただろう。
その方が軍を動かす上で効率が良いからだ。だが、ブランディカは軍の効率だけでなくその後の経営のことも視野に入れている節がある。今度の突如の侵攻でも、襲われたという大義名分を作ってからカルアンの攻略に乗り出し、一応とは言え使者を立てている。
住民の感情を逆撫でしない為の細かい配慮に、アレンは唸るしかなかった。
「だが……」
アレンの脳裡を掠めるのは北方で見たゴブリンだ。如何に前回の戦いで大きな損害を与えたとはいえ、恐ろしく強大な一匹は逃してしまった。ならば、プエナの混乱を知ればそれを見逃さずに侵略の手を再び伸ばすのではないか?
その不安を口にするアレンに、長老は思いついたように口を開く。
「ああ、アレン団長は存じなかったかもしれないが、ゲルミオン王国が西域に侵攻を開始しているのだ。他ならぬブランディカから呼吸を合わせてゴブリンを討つと息巻いておったわ」
思考に沈むアレンは、プエナ再興への道を考えずにはいられなかった。
◆◇◆
プエナの王都陥落という情報は、ゲルミオン王国の重鎮達とプエルに少なからず衝撃を与えた。特にプエルは己の見通しの甘さを悔やむと共に策の修正をせねばならず、夜も眠らずに各方面に指示を出すこととなった。
「ブランディカ・ルァル・ファティナ……」
彼女の仇の大元の一人であり、未だ己の前に立ちはだかる巨大な壁である。本来ならプエナが騒めく今こそが侵攻の好機だが、ゴブリンの王率いる騎馬部隊は未だ完成には至っていない。三ヶ月という期間はプエルが持ち堪えられる限界の日数であると同時に、赤の王の勢力伸長に対抗出来るギリギリの期間でもあったのだ。
ゲルミオン王国と呼吸を合わせて南部に攻め寄せてくるなら、その攻撃を食い止めることは決して難しくはない。辺境草原地域から西都までは魔獣の跋扈する地域である。焦土戦術を視野に入れれば、戦場の利はゴブリン側にあるのだ。
だが、赤の王がプエルの予想を裏切り交易国家プエナを完全併合するのなら話は変わってくる。プエナの潤沢な資金を己がものとするならば、赤の王の動員できる兵力は2倍以上に膨れ上がる可能性すらあるのだ。
そしてそれを支えられるだけの補給。護衛につけることの出来る兵力の増強は、着実な侵攻と草原地域踏破への布石だ。
「真っ当過ぎるほど真っ当な手腕……」
奇襲・奇策の類は何もない。微々たる抵抗など撥ね退けてしまえるだけの力を結集しようとしているのは明白だった。そしてそれはプエルが最も恐れる事態でもある。今、赤の王には確かに付け入る隙がある。だが、それを白日の下に晒すには充分な時間と必要な条件が幾つもある。隙があるからといって直ちに彼らを敗北へ突き落とすのは難しい。
ここに至ってプエルは、自らも賭けに出る覚悟を決める。
「赤の王を戦に引きずり込む」
その為には眼前のゲルミオン王国軍をどうにかせねばならない。対峙は既に6日にも及ぼうとしている。時期的にも、そろそろ頃合いであった。
今彼女の手元には誇り高き血族のザウローシュ、解放奴隷の戦士シュメアとヨーシュの姉弟、雪鬼の一族からユースティアらの人間勢力。
亜人からは牙の一族のミド。長尾の一族の族長タニタ、甲羅の一族のルージャー。人馬の一族のティアノス。最後に牛人の一族のケロドトスらの亜人勢力。
ゴブリンからは南方の支配者ギ・グー・ベルベナと戦鬼ギ・ヂー・ユーブ。更にはフェルビーを始めとした妖精族の戦士という多彩な戦力がある。
数は人間勢力が500、亜人達が400、ゴブリンが500、妖精族が100となり合計1500の兵力だ。
プエルはゴブリン達の姿を人間達に見せつつ、亜人と人間達を使った陣営地の作成をしていた。無論、それは対峙するゲルミオン王国側も察知している。防御を固め四方に偵察を飛ばすゲルミオン王国軍では、プエルらゴブリン側が長期戦を企図していると判断している筈だ。
現にゲルミオン王国側も堀を深くし、柵を設けて陣営地の強化に勤しんでいる。日々、陣営地から上がる炊事の煙も一定の時間に集まっている。
「気の緩みは見えません。ゴーウェン・ラニードには及びませんが、彼らもそれなりに優秀な指揮官を出してきているようです」
作戦を説明するプエルは相手をそう評したが、王国第一の指揮手腕を持つゴーウェンと比較されてはゲルミオン王国側の指揮官もたまったものではないだろう。プエルは陣営地を完成させると、夜の闇に紛れて徐々に部隊の数を減らしていった。
ただし、炊事の為の煙は日毎に増やしている。
妖精族の部隊を少数に分派し、敵の斥候を狩ると共にゴブリン達を2つに分けて常にその姿をゲルミオン王国側に見せる。そうしておいて、陣営地から抜けた部隊を7日目の明け方にゲルミオン王国側の陣営地で暴れさせたのだ。
前方の陣地から相変わらず炊事の煙が立ち上る光景を見て油断していたゲルミオン王国軍は、突然の奇襲に対応できずに敗走。プエルはゴブリン達に命じて追撃を加える。ギ・グー・ベルベナ率いる南方のゴブリン達が勇猛さを競うように人間達に襲いかかれば、ギ・ヂー・ユーブ率いる軍は決して無理をせず、纏まって抵抗しようとする人間達を容赦なく突き崩していく。
国境付近である八砦群まで一方的に追撃してプエルは軍を返す。陣営地にシュメア率いる剣闘士達と、長尾、甲羅、牛人の亜人達を残すと軍を急速に南に向けた。
「言っちゃあ悪いけど、この人数じゃ守りきれるか分からないよ?」
疑問を口にするシュメアに、プエルは頷く。
「援軍をよこします。数は多い筈ですから上手く使ってください」
そんな豊富な兵力なんてどこにいただろうか? 首を傾げるシュメアに、プエルは踵を返す。
プエルはそのまま人馬族率いる機動力に優れた部隊を先行させて付近の偵察をさせると共に、西域から辺境領域へ走り抜けたのだった。
西域と辺境領域の境に到着すると、プエルは砦の建設を始める。西都に一度戻したヨーシュとザウローシュに砦建設の為の人員を差し出させ、ゴブリンらをもってその護衛に当てる。人馬族は辺境領域にまで足を伸ばさせつつ、敵の出方を探らせた。
5日を要して砦の目処をつけると、休憩を挟む暇もなく出陣する。
無人の辺境領域を占領すると、その場に陣営地を設け人馬族に出撃を命じる。
「貴方方の描いた絵など、全て塗り潰してあげましょう」
冷厳と言葉を口に乗せるプエルは、赤の王を戦場に引き摺り出すべく蠢動を始めた。
◆◇◆
プエナの蒼鳥騎士団が北方の護りを解かれ王都に帰還した後も、辺境領域とプエナの間には多くの血盟を中心とする雑軍が配置されていた。
プエナに帰還した蒼鳥騎士団団長アレンは、女王の願いにより赤の王に組み入れられることになり、ブランディカも強力な騎馬戦力の増加を無条件で喜んだ。こうしてアレン率いるプエナ正規軍は公式に赤の王の傘下となり、ブランディカは長老達の立て篭もる領地へと軍を差し向ける。
特に蒼鳥騎士団には長年対立してきた長老の領地への攻撃を命じるなどの心細やかな配慮が見られ、団長アレンの処刑まで覚悟していた団員達からは安堵の溜息が漏れた。
北方守護を命じられた雑軍も赤の王の指揮下に入ることになったが、その北方の部隊から魔物の襲撃を受けているという報告が入った為、ブランディカはその情報を精査せねばならなかった。
今、赤の王はプエナの支配体制を確立させる為に各地に地盤を持つ長老達に対してに兵を向けている。殆ど内戦状態と言っても良い。だが、この内戦も所詮は時間の問題である。圧倒的な兵力差と兵士の練度、士気の高さを比較すれば戦場で負ける要素など全く見当たらない。
北のゲルミオン王国とは同盟関係であり、クシャイン教徒は既に虫の息である。先だってゴブリン達は北へと追い散らした。内戦を長引かせる要因は殆ど無いのだ。
エルレーン王国は掌中にあり、プエナも統一的な反撃は出来ないだろう。プエナを掌握し、大陸南方に覇を唱えるのは時間の問題であるとブランディカは判断した。それは決して間違いではない。ただ、喉奥に突き刺さる魚の小骨のように気になる存在が居た。
ゴブリンを中心とした魔物達だった。
先だって半壊という程の大損害を与えて北方へ追い散らした筈のゴブリン達。北方ではゲルミオン王国も兵を出していると聞く。だが、それでも南方を窺う姿勢を崩さないのは何の意図があってだろうか? ブランディカは疑問に首を捻る。
サーディンや騎士団長アレンが魔物の群れの中にゴブリンキングらしき魔物が居たという情報も、ブランディカの興味を引いた。
通常、魔物は自らよりも強い存在には向かって行かない。例えばゴブリンは火斑大熊には立ち向かわないし、オークはドラゴンには戦いを挑まない。馬鹿でも分かることだが、生物の本能として勝てる筈のない敵に挑むなど非合理だからだ。それを考慮せずに戦うということは、そもそも生物としての根幹が狂っているとしか思えない。
それと同じように、大軍同士の戦いでもゴブリン側は殆ど完膚なきまでに南方を追われたのだ。この短時間で再び南を窺うというのは理解に苦しむ行動だった。
「となれば……背後にはゴブリン以上の何かが控えてるってか?」
生物的本能から強者には向かっていかないとするブランディカの考えだが、無論例外は存在する。例えばゴブリン達の背後に更に強大な存在が控えている場合がそれだ。
或いはゴブリンキングすらも尖兵に過ぎず、その背後には更に強大な魔物が存在しているのではないか? それがブランディカの脳裡を掠める興味の源泉だった。
だとすれば、ゴブリン達は南への侵略をやめようとはしない筈だ。追い散らされた敵よりも更に強大な味方がいるのだ。次はそれが出張って来るかもしれない。
だが、同時にゴブリンキングが発した建国宣言も気になる。
ゲルミオン王国に放った間諜の話では、西域から脱出してきた民がゴブリンキングの言葉を聞いたという。虚飾を取り除いてその言葉を訳せば、それは魔物による人間世界への挑戦。
堂々たる宣戦布告である。
それを成すのが、王以外の者である筈がない。
「南へ拘る訳だ」
或いは自身が敵であったならどう考えるだろうと、ブランディカは思考を進める。あくまでも人間の視点で考えるなら、西域から見た南の利点は小さくはない。広大な大地と、そこに住まう人と金。ゲルミオン王国を狙うよりも、余程実入りが良いだろう。
「しかし……魔物が富を必要とするか?」
ガリガリと頭を掻くと拳の上に太い顎を乗せる。
「人を食糧に……? いや、それは理屈に合わねえな」
敵方に誇り高き血族と自由への飛翔の存在を確認している今、ブランディカはその可能性を切り捨てる。少なくともエルクスに限ってそれはないだろう。自分でもおかしいと思うが、敵対して尚ブランディカはエルクスという血盟を嫌いにはなれなかった。
盟主トゥーリを中心に、スラムから這い上がったエルクス。掃き溜めから這い上がるのにどれ程の苦難があっただろうか。だが、そんなものを微塵も感じさせない輝きは、ブランディカの胸に心地良い風を吹かせたものだ。
それでも同じ頂きを目指すなら、蹴落としてでも進むのが覇道というものだ。
思わず舌打ちすると、脇道に逸れた思考を修正する。
少なくともブランディカが知るエルクスは、人を食糧とするような魔物に協力する血盟ではなかった。だとしたら、何故ゴブリンは執拗に南を狙うのか?
「まさか、本当に……?」
支配し、征服する為にゴブリンの王が南を目指すのなら。
ブランディカの口の端が吊り上がる。目には燃え盛る炎のような感情が蠢き、獅子のような絶対の威厳が立ち昇る。
「面白いじゃねえか。魔物が世界を統べるってか」
大それた野望を持っているのなら、打ち砕いてやらねばならない。
それこそが、人の王たる者の責務である。
大陸に覇を唱え、今まさに大陸南部最大の版図を獲得するであろう自身の前に立ち塞がるのなら。
「王と王の対決って訳だなぁ? 楽しみだぜ……!」
まだ見ぬゴブリンの王に、ブランディカは親愛にも近い感情を抱いた。
同時にゴブリンの王を、自身と対等の敵であると認めた瞬間でもあった。