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ゴブリンの王国  作者: 春野隠者
群雄時代
245/371

休息日

久しぶりに王様一人称。

1月11日ギ・ジー・アルシルのスキル名称を一部変更。《隠密》→《忍び寄る刃》ギ・ズー・ルオのスキルに《血煙幇助》追加

【種族】ゴブリン

【レベル】100《個体の上限に到達。階級の上昇不可》

【階級】キング・統べる者

【保有スキル】《混沌の子鬼の支配者》《叛逆の魂》《天地を喰らう咆哮》《剣技A−》《覇道の主》《王者の魂》《王者の心得Ⅲ》《神々の眷属》《王は死線で踊る》《一つ目蛇の魔眼》《魔流操作》《猛る覇者の魂》《三度の詠唱》《戦人の直感》《冥府の女神の祝福》《導かれし者》《混沌を呼ぶ王》《封印された戦神の恩寵》

【加護】冥府の女神(アルテーシア)

【属性】闇、死

【従属魔】ルーク・コボルト(ハス)(Lv56)灰色狼(ガストラ)(Lv20)灰色狼(シンシア)(Lv52)オークキング(ブイ)(Lv96)

【状態】《一つ目蛇の祝福》《双頭の蛇の守護》




 戦の合間に訪れた一時の平穏というのは貴重な時間だった。辺境を固めた俺は、一時的に西域へ戻ることが出来た。

 先の戦と合わせて階級が上がってもおかしくないと思っていたが、俺の体には変化が見られない。種族の限界だろうか? だが、いくら考えてもそれ以上は分からない。何せゴブリンでここまで階級を上げた者は俺以外には居ないのだ。

 ならば考えても仕方あるまい。方策があるなら別だが、思い煩ってもどうしようもない。出口の見えない問いに答えを見出すのは、山積みにされている目の前の問題を片付けてからだった。

 先日ラズエルの南でエルレーン王国軍を打ち破ったばかりだが、その戦勝は領主会堂(サンクトフォル)でも話し合われ、小領主達が俺達との今後を確認する上で大いに役立ったのだとか。

 名実ともに此方側についたザウローシュの言葉に、俺は頷くに留めた。実の所、小領主達をどの程度信頼できるか図りかねているところがあるのだ。ゴブリン達のように絶対的な忠誠を期待している訳ではない。だが、だからといって簡単に敵の調略に乗って俺に反旗を翻すなら、今後の処置をより厳しいものにせねばならないだろう。

「王よ、そろそろ時間だが」

「ああ、今行く」

 ギ・ザーの声に、ここ数日で恒例の命名式を何件もこなさねばならなかったのを思い出す。階級を上げた者の能力を確認し把握することも、忘れることが出来ない重要事項だ。

 かく言うギ・ザーも階級を上げていて、その見た目はまたしても変化が伴っていた。


【個体名】ギ・ザー・ザークエンド

【種族】ゴブリン

【レベル】5

【階級】魔術師(ウィザード)・サブリーダー

【保有スキル】《魔流操作》《三節詠唱》《五節詠唱》《詠唱破棄》《知恵の神の導き》《風の守護》《王の信奉者》《風操作》《魔素転移》《権謀術数》

【加護】風の神

【属性】風

【状態】精霊憑き


《五節詠唱》──五節の詠唱を加えることにより、より強大な魔素を扱うことが出来る。

《権謀術数》──光属性からの嫌悪(小)

      ──知識の集積により多言語を操ることが可能。


 新たに加わったスキルは参謀向きのものだろうか? 人間にはあまり好かれはしないだろうが、ゴブリンの中で暮らす分には問題ないだろう。容姿は人間か、或いは妖精族に近い。青白い顔に、まるで剃刀のように鋭い目つき。灰色に伸びた髪は魔素を貯める為の器官なのだとか。それにしては後ろで一つに束ねているだけなのだが……何故か様になる。

 ゴブリンとは別種族のナニカなのではないかと疑う程に整った人間寄りの容姿だ。細面ながら確かな精悍さが垣間見える。

 思う所が無いわけではないが、敢えて俺は何も言わなかった。

 アルテーシアめ!


【個体名】ギ・ジー・アルシル

【種族】ゴブリン

【レベル】2

【階級】デューク

【保有スキル】《投擲》《威圧の咆哮》《忍び寄る刃》《剣技B-》《猛犬の鼻》《蝙蝠の耳》《王の目》《闇の衣》《影に生きる者》

【加護】夜の神(ヤ・ジャンス)

【属性】闇


《忍び寄る刃》──相手に気付かれず、背後から致命傷を与える事が可能。隠行上達(中)。

《闇の衣》──夜の神の加護により、闇の中に限り致命傷の回避率上昇(中)。

《王の目》──王命を受けた場合に限り、索敵能力が上昇(中)。

《影に生きる者》──闇属性を持つ者に魅了効果(小)。


 常に第一線で活躍してきたギ・ジーが進化を迎えていた。索敵に特化したゴブリンだからなのか、夜の神の加護が新たに加わっている。属性も闇だ。だが、普段の言動からも加護に惑わされている様子は見受けられない。

 デューク級という階級がそうさせるのか、或いはギ・ジー自身の自制心によるものなのか? 詳細は不明だが随分と良い傾向だろう。つまりは、加護も階級を上げてから授かれば自制心を働かせることが可能だということだ。今までは扱い難いと割り切っていたが、これから戦もいよいよ厳しくなる。それを考えれば、加護を授かる手段というのを模索する必要があるのかもしれない。


【個体名】ギ・ズー・ルオ

【種族】ゴブリン

【レベル】6

【階級】デューク

【保有スキル】《威圧の咆哮》《投擲》《槍技B+》《必殺の一撃》《狂い竜》《食い千切り》《血の雨を降らす者》《鼓舞》《血煙幇助》

【加護】狂神(ズ・オール)

【属性】なし


《狂い竜》──仲間の死により発動。全能力上昇(中)。

《血の雨を降らす者》──敵を殺害時、気分高揚・体力回復(小)。


 第三世代のギ・ズーが、もうデューク級へと進化を果たしている。使い勝手の良さから常に最前線で戦わせた結果だが、体中に無数の古傷を作り、それでも五体満足でここまで成長出来たのだから、かなり運の良いゴブリンなのかもしれない。一際大きな体躯は、ロード級と見紛う程だった。

 今は療養中だが、明後日ぐらいには治るとのことだ。恐ろしい自然治癒力だった。それともクザンの薬草のお蔭なのか?

 ゴブリンは高い自然治癒力を有するが故に、薬や医術のノウハウなど無いに等しい。

 だが、貧弱な体のゴルドバゴブリン達は好むと好まざるとに関わらず薬草などを求めることが多かったのだろう。妖精族の集落で知識を蓄え技術を磨いた彼らは、ゴブリン全体にとって貴重な財産だと言える。

 クザンが主導して作っている薬の類いは、今では戦に赴くゴブリン達に無くてはならない物になっていた。ガイドガの勇猛、パラドゥアの忠勇、ガンラの巧緻に加えて、ゴルドバの才知。氏族はそれぞれに己が長けたものを伸ばしている。相変わらず数は少ないが、それでも一つの戦力として見れば充分に主戦力に成り得る。

 どうにかして数をもっと増やしたい。食糧の自給の道筋はついているが、狩猟という形態を取っている以上、限界はある。西域で実験的にやらせている農耕の結果次第では養える数が増えるだろうが……。

 農耕に詳しいのはやはり人間だが、話を聞こうにも怯える者が大半で会話にならない。当然と言えば当然なのだが、ヨーシュを経由して聞き取った限りでは天候頼みらしく、何とも頼りない。

 ままならないものだ。

 だが、それなら品種改良は今の技術でどうやっているのだろうか? まさか原種をそのままという訳ではないだろうが、それも今度ヨーシュに確認させてみるか。

 ギ・グー・ベルベナが本拠地である深淵の砦から南西地域を開拓して戻ってきたという報告を戦地で受けた。何でも肉喰う恐馬(アンドリューサルクス)という肉食の馬の魔獣や、双角泥牛(アルシノエ)と呼ばれる巨大な牛の魔獣が跋扈していたらしい。

 ギ・グー配下のレア級の獣士達が捕獲を試みたそうだが、見事に失敗。尽く逃げ帰るしかなかったそうだ。その話を聞いたギ・ギーが俄然興味を示して同行したいと申し出ている。やる気があるのは良いことだが、南の戦線が落ち着かないことには出向くことは出来ないだろう。

 ある程度の期間でも膠着状態が作り出せるようなら、新たな戦力となり得る魔獣の獲得に時間を割くのも良いかもしれない。今回の南方戦線でもギ・ギー率いる魔獣軍の活躍は顕著なものがある。特に追撃戦における人間への被害の大きさは、ギ・ジーの報告からも上がっていた。主戦力として使うゴブリン達が追撃に気を回さなくて良いというのは、戦に臨む際に体力配分を考えなくて良いということだ。それだけで随分と気が楽になる。


◆◇◆


 西域は概ね平穏が保たれていると言って良いだろう。ギ・ガーの統治のお陰か、或いはそれを支えるヨーシュやフェイらの力なのか。何にせよ上手く回っているならそれに越したことはない。

 家臣団形成の骨組みは概ね出来た。次はそれに実質的な肉をつけていかねばならない。

 先頃侵入してきた冒険者に傷を負わされたシュメアを見舞いに行くと、以前任せた子供と一緒に花畑で遊んでいるところだった。

「怪我は良いのか?」

「私はゴブリンじゃないからね。1日やそこらで傷が治ったりはしないんだよ!」

 戯れつく子供らを捌きながら花輪を作っている彼女に尋ねるが、帰ってきたのは苦笑を含んだ返答だった。

「これから死んだ子のお墓参りに行くんだけど、旦那も一緒に来るかい?」

「……いや、これから防衛線を構築し直さないといけないからな」

 そう言って、俺は近くにあった花を一輪手折る。

 偽善だと囁く心の声を無視して、シュメアに花を手渡す。

「まぁ、旦那がそれでいいなら良いけどね。私は死者に対する祈りは生者の為だって思うけど」

 苦笑するシュメアが花を受け取ると、俺は彼女達に背を向ける。

 後ろで子供らがシュメアを囲んで声を上げるのが、聞こえた。

「あれが、魔物のおうさま?」

「そうそう。おうさま、ゴブリンのおうさま!」

 歓声を上げる子供達の声が遠く聞こえる。

 子供らの言うとおり、俺は王だ。

 俺の行く道は血塗られた道でしかない。俺の下で死ぬゴブリンも、亜人も、人間も、直接間接問わず俺の手で殺す者達も、全ては俺の進む覇道の礎だ。全て征服した後に冥府に落ちようとも構わない。既に手は血で染まっているのだ。今更引き下がるなど出来はしない。それでは、今まで何の為に大勢の部下達を死地に送ってきたのか分からなくなってしまう。

 だから、それまで俺は誰にも侘びず、神に赦しを請うこともしない。

 聖剣を持つ勇者も、あの傷では生きてはいないだろう。

 ならば、何を恐れる!

 戦力を整え、一気に南方を攻略して見せよう! 胸の内から沸き上がる感情に拳を握り締める。右腕の真の黒(ヴェリド)が、戦の予兆に大きく蠢く。

 これが王の道行き。

 覇王を志す者の、決して退けぬ道行きだ!

 鈍りそうになる決意を奮い起こし、俺は大地を踏みしめる足に力を込めた。



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