キラーアント
【種族】ゴブリン
【レベル】92
【階級】キング・統べる者
【保有スキル】《混沌の子鬼の支配者》《叛逆の魂》《天地を喰らう咆哮》《剣技A−》《覇道の主》《王者の魂》《王者の心得Ⅲ》《神々の眷属》《王は死線で踊る》《一つ目蛇の魔眼》《魔流操作》《猛る覇者の魂》《三度の詠唱》《戦人の直感》《冥府の女神の祝福》《導かれし者》
【加護】冥府の女神
【属性】闇、死
【従属魔】ハイ・コボルト《ハス》(Lv77)灰色狼(Lv20)灰色狼(Lv36)オークキング《ブイ》(Lv82)
【状態】《一つ目蛇の祝福》《双頭の蛇の守護》
火斑大熊を討伐し、無事に黒輝石を手に入れた俺達は、ダンブル・ダビエ・ダビデの下へと戻ってきていた。火斑大熊の屍を引き摺っての帰路は、非常に困難を極めたとだけ言っておこう。
「まさか、あの森の化け物を倒しちまうなんてなぁ」
ダビデの言葉に、眉を顰める。
「お前はあそこに、この魔獣がいることを知っていたのか?」
だとすれば、この小人は弟子と俺を死地に追いやったことになる。何の為に? いや、そもそも俺はこの小人の為に剣を振るうと誓ったのだから、倒して欲しいなら最初からそう言えば良い。
弟子の護衛などと、態々回りくどいことを言う必要はない筈だ。
「……まぁ、このバケモンがいるかもしれないとは思ってはいたが……。弟子の護衛ってのは本当のことだ。もし万が一があっても、お前さんが居れば弟子は無事に戻ってくるだろうってなぁ」
予想の範囲内だったということか。
まぁ、居場所の掴めない魔獣を倒してくれと言うより、弟子の護衛をしてくれと言う方が確実性はある。
「随分怖い目にあったらしいが、あの小心者も、どうやら一皮剥けたようだしなァ」
黒輝石と風精石、更には火斑大熊の鉤爪を工房に持ち帰った弟子は、挨拶だけ寄越すとすぐさま炉に向かい合っていた。
「良い眼をするようになった。感謝しとるよ」
「礼には及ばん」
元々大剣の対価として力を振るっただけなのだ。多少情報の齟齬があった程度で、咎める必要もあるまい。
それから七日後、使者と共に妖精族の集落から一振りの大剣が俺の元に届けられた。
銘を、黒火斑の大剣と言う。
何よりも強度を優先したその刀身は黒く、真っ直ぐに伸びた形状は曲がらぬ意志を示しているようだった。書き添えられた文章には、戦場で武器を失った時の為の備えにお使いくださいとあった。
確かに、火斑大熊との戦いでも一度武器を手放している。
「クルト・ビルデ・ダーシュ……それがあの弟子の名前か」
新たな才能の芽吹きに、俺の心は少しだけ軽くなった。
◆◆◇
ギ・グー・ベルべナ苦戦!
その報告に俺は自身の耳を疑った。土鱗の族長ファンファンと共に南方蟻人の調査と、可能ならば交渉を行う為に向かった筈のギ・グーの苦戦の報せ。
何か予想外のことがあったか。或いは、予想を超えて蟻人の数が多いのか。
情報を得ようにも、如何せんここからでは距離が遠過ぎる。
……丁度良い。伝令のパラドゥアゴブリンに指示を出す。
「南で戦を起こす! ギ・ギー・オルドに魔獣を集めろと伝えよ! ギ・ヂー・ユーブに伝令! 兵を使う機会が来た。日頃の訓練の成果を披露せよ!」
古獣士ギ・ギー、戦鬼ギ・ヂーへと指示を出し、更に命令を付け加える。
「ギ・ジー・アルシル、旗下のゴブリンを動員し、先行して本隊を導け! そしてギ・ガー・ラークス! 手勢を率いて参集せよ!」
対人間戦の予行演習として、丁度良い機会ではないか。確かに俺の下に各地からゴブリンが参集してきてはいるが、それぞれがあまりにも独自色を持ち過ぎている為に、それらを合わせた用兵をしたことがなかった。かつてない程に蟻人が多いなら、経験を積む良い機会だ。
取り敢えずは深淵の砦周囲にいる4匹のノーブル・ナイト級のゴブリンを集め、指示を下す。
「ギ・バー、ギ・イー、ギ・ウーは、ギ・ヂー・ユーブの下に付け!」
獰猛なる腕のギ・バー、遠征者ギ・イー、水術師ギ・ウー。それぞれタイプの異なる3匹のレア級ゴブリンを戦鬼ギ・ヂーの下に付ける。
これはギ・ヂーの鍛えている兵士の運用を期待してのことだ。
三匹一体から始まり、それを複数合わせた隊、隊を複数合わせて軍という風に名前を付けて、集団での軍事行動訓練を行っていた。
主にレア級ゴブリンが隊を率い、それをノーブル級ゴブリンが軍として指揮するという形で纏まりつつある軍制度。それを試すのに、今回の蟻人との戦いは都合が良かった。
暗殺のギ・ジー・アルシルの諜報部隊を先行させ、経路を探らせる。大群を率いねばならない。なるべく安全で速やかに移動できる経路を探させる。
「南のガイドガ、パラドゥアにも声を掛けますか?」
「2日で整う兵力で良いと伝えよ!」
「御意」
先行するギ・ジーに触れを出させると、後に残る者に声を掛ける。
「フェイ、暫く砦の守りを任せるぞ」
「何だか、私がフォルニの集落から来るたびに厄介ごとを押し付けられている気がしますね」
「ぼやくな」
苦笑すると、軽くフェイの肩を叩く。
「ええ、分かっていますよ。どうぞご自由に」
「イェロ、後のことは老ゴブリンと協力せよ」
「はっ」
東西北が安定している今だからこそ動けるのだ。人間との戦いが始まってしまえば、そちらに全力を注がねばならん。奴らと死力を尽くした戦いをする為にも、ここで周囲の安定をより強固なものにしておくべきだろう。
将来的には亜人達との連携も考えねばならないが、今はゴブリンを優先させてもらう。負けの許されない戦で二つの命題を抱えて戦うのは厳しいだろう。生憎と戦に関して、俺はそれほど才能があるとは思っていない。
自ら部下を率いて戦うことはできても、戦術を駆使して縦横無尽に戦場を操るなどというのは、最前線に身を置く俺には難しい。
ならばこそ、出来ることを積み上げていくしかない。
深淵の砦での戦の準備を1日掛けて行い、僅かな休憩の後南へ向けて軍を発する。総数400に迫る大群は進路を南へとった。
◆◆◇
ギ・ジー・アルシル率いる斥候部隊の導きによって、深淵の砦から1日駆け通しでガイドガの集落に辿り着く。集まっていたガイドガ・パラドゥア氏族を率いて更に南進。
俺達が南方と呼ぶ地域に到着する。報告に来たギ・ジーによれば、ギ・グーは更に南で戦っているそうだ。戦場となっているのは森と砂漠との境界付近。敵の本拠地である蟻塚の直ぐ傍だそうだ。
押し込んでいるのかと思えば、そうとも言えないらしい。
「誘い込まれたということか?」
「分かりかねますが……」
ギ・ジーの報告もどこか曖昧だ。だが、蟻人が自分達の領域にまで敵を引き込んで戦うような知恵を持っているのなら、交渉を考えねばならない。いや、そもそもその為に派遣したのがギ・グー達であったのだ。
交渉は失敗したと考えて良いだろう。
戦うにしても長期戦は避けて短期決戦が望ましい。先ずは食料を確保し、そして一気に勝負を決める。戦いが長引けば、対人間戦に影響が出るかもしれない。
部下達に人数分の食料を確保させると、ギ・ギー率いる魔獣の群れを最も外側に配置して、休息を取る。
鼻の利く彼らを最も外側に置くことによって、休憩中に襲われるのを防ごうという狙いだ。逐次食料調達部隊を編成して送り出すと、ギ・ジー・アルシルの諜報部隊によって、今の戦況が段々と分かってきた。
森と砂漠の境界付近に敵の蟻塚はあるということだが、実際には砂漠を1日歩いた距離に蟻塚は位置している。確かに広大な森を抜けて見晴らしの良い砂漠を1日となれば、境界付近と言えなくもないが……。
ギ・グー率いる南方ゴブリンは、森の中でこそ真価を発揮する。熱砂の神の大砂漠相手では勝手が違ったのだろう。一度は森の中から蟻人を追い落とす所まで戦闘を優位に進めたが、蟻塚を落とそうと礫砂漠の炎天下の中を進んでいた所、蟻人の奇襲に会い、それからは苦戦を強いられているとのことだった。
ギ・ジーの諜報部隊を全力で使って、敵の位置と距離を探る。
「先陣はギ・ヂー・ユーブに任せる」
「我が君のご命令とあらば!」
膝をつくギ・ヂー。
戦鬼ギ・ヂーを先陣に配置したのは、これがギ・グーの戦の救援という側面が強いからだ。魔獣を使役するギ・ギーの部隊や、狂猛なるガイドガではギ・グーの部隊との連携が難しいだろう。
同じようにギ・ガー・ラークス率いる“傷モノ達”やパラドゥアの騎獣兵では、数に勝る蟻人を殲滅するのには些か力不足だと思われる。
粘り強さに長ける“傷モノ達”や機動力を重視しているパラドゥアでは柔軟な用兵は可能でも、主戦力として使うには不安が残るのだ。
故に戦力的には申し分なく、訓練された兵を率いる為に戦術性に富むギ・ヂーの軍を投入する。
「パラドゥアの騎獣兵はギ・ヂーの左右を固めよ」
「我らが槍の穂先に懸けて!」
若き族長ハールーが、天に向かって穂先を掲げる。
「ギ・ギー、ラーシュカ、ギ・ガーは後詰めとして、俺の指示を待て」
些か不満げなラーシュカだが、俺の指示には従うようだった。
「そう不満そうな顔をするな。後詰めは戦の局面を決める大事な戦力だ。期待しているぞ」
「……ならば仕方あるまい」
ラーシュカは腕を組んで頷くと去っていく。
さて、戦の幕を開けようか。
◆◆◇
熱砂の砂漠の各所から湧いてくる蟻人に、ギ・グーは舌打ちして視線を転じる。
「ファンファン殿、未だか!?」
「焦るのは良くないぞギ・グー殿。ファンファンも急いでいる」
先程から奇襲に次ぐ奇襲を受けているが、その原因は蟻人達が地下に造った無数の出入り口だ。一見すると何の変哲もない場所から突如として襲い掛かってくる蟻人達の攻撃に、ギ・グーは苦戦していた。
今ファンファンが行っているのは、その出入り口の特定だった。地面に鼻を付け、蟻人の出てくる場所を特定する。まるで噴水か鉄砲水のように突然湧き出す蟻人達。それを躱す為、ファンファンに次に蟻が出て来るであろう穴を探らせていたのだ。
土の中の動静を知ることに関しては、ファンファンは“最硬爪”と呼ばれる土鱗の一族で最高の巧者であった。
「来るぞ。右と後ろから5匹だ。距離は右が20歩の位置、後ろが10歩だ」
きっかり10秒後に彼女の予告通りの場所から蟻人達が飛び出してくる。しかし、それと同時に振り下ろされる斧や槍で血祭りにあげられた。
だがそれでも、ファンファン一人では限界がある。遅々として進まぬ進軍速度。だが、闇雲に犠牲を出すよりはマシだと自分自身を納得させて、ギ・グーは先を急ごうとする。
「む、いかん。大群だ」
ファンファンの声の意味するところを悟った瞬間、ギ・グーは舌打ちと共に声を張り上げた。
「敵襲だ! 全方位警戒!」
ギ・グーの下で育ったグー・ナガ、グー・ビグ、グー・タフら三兄弟が、慌てて声を上げる。
「警戒! けイカい!」
「下かラ来るぞ! 下カら!」
「武器ヲ構えロ!」
「後ろと左に、それぞれ50だ」
ファンファンの報告に、ギ・グーは再度舌打ちする。
「ぐ、誘い込まれたか!?」
デューク級であるギ・グー・ベルべナは頭の中で計算する。このまま戦闘を続ければ、王から預かった領地の兵達をここで磨り潰すことになりかねない。森を出たゴブリン達の疲労はかなり大きい。
遮る物のない陽光が容赦なく体力を奪い、熱せられた地面は足の裏を焼く。飲み水を確保するのも難しく、このままいけば遠くない未来に全滅する。
南の領域は豊かだが、決して無尽蔵に兵を吐き出すことは出来ない。育てる為には時間が必要だし、三兄弟のようにモノになるのはその内の一握りだ。
だが、王から受けた使命がある。
蟻どもを従えるか、或いは殲滅するか。どちらも果たせずに王に失敗を報告するのか。やるしかないと覚悟を決めて、手にした長剣を抜き放つ。
「出てきたなら、殲滅の好機だ! 奴らを殺して王への手土産にしてくれる!」
地面を踏み鳴らし、味方を鼓舞する。
「む、後ろから更に400」
「何!?」
地面にへばりつく様にして動かなかったファンファンの言葉に、ギ・グーが思わず聞き返す。
「400……おのれっ!」
ギ・グーは憎き敵を睨む。勝てないならば退くしかない。だがそれには、立ち塞がる400もの敵を蹴散らして後退するしかないのだ。
「続け、後ろの敵を突破するぞ!」
せめて自身が先頭に立って道を切り開くしかないと、ギ・グーは配下達の前に出る。
「む、だが……」
ファンファンの言葉に嘘はなく、朦々と土煙を上げて迫りくる大群の姿。だが、どうも様子がおかしい。蟻人はそもそも土煙を上げて移動する必要がないのではなかったか。
陽炎に揺らめく大群の陰に目を凝らしていると、次第にその姿が見えてくる。
「あれはっ!」
「味方のようだな」
落ち着いたファンファンの声に思わず目を細めて、ギ・グーは彼女を睨む。
「それならそうと最初から言えばよかろう!」
「数を言っただけだ。敵だとは言っていない。それに……地面の上のことはファンファン苦手だ」
「紛らわしい!」
舌打ちすると、ギ・グーは援軍の姿に目を凝らす。統一された長さの槍に簡易ながらも鎧を纏って整然と進むのは、恐らくギ・ヂーの軍だ。
「ギ・ヂー・ユーブが援軍に来たぞ! 貴様ら恥ずかしい姿を見せるなよ!」
咆哮と共に敵に切り込むギ・グーに続いて、南方ゴブリンらが蟻人に襲い掛かる。前後からの挟撃によって瞬く間に蟻人を殲滅すると、ギ・ヂーとギ・グーは互いの無事を喜んだ。
「ご無事で何よりです。ギ・グー殿」
「すまぬ、助かった。だがこの軍勢は些か多いな」
ギ・ヂー率いる軍だけでなく、左右にはパラドゥアゴブリンの姿も見える。ゴブリンの中で群れとして騎獣を操るのはパラドゥアゴブリンしかいない。その為、彼らはゴブリンの中でも非常に目立つ存在であった。
「我が君が南のキラーアント討伐の意志を示されました」
「何!?」
「先頃ギ・ジー・アルシル殿からギ・グー殿苦戦との報告があり、我が君は大事な部下を失うわけにはいかぬと仰せになり……」
「……恥じ入るばかりだな。王に謝罪せねばならん。可能なら案内を頼む」
ギ・ヂーは頷いて、ギ・グーに王の場所を教える。
「王の御意志では、一旦森まで戦線を退けるとのことです。宜しいでしょうか?」
「やむを得ないだろうな」
一旦敵を蹴散らしたゴブリン側だったが、砂漠の気候は想像以上に彼らの体力を奪っていた。南方ゴブリンを森で休養させ、その後に戦線に投入する。
ゴブリンの王の考えに、ギ・グーは唯頭を下げた。
「ファンファンも行こう」
「咎められるのは俺一人で構わん」
いつの間にか後ろに付いて来ていたファンファンに、振り返りもせずギ・グーは言う。
「暑いのは飽きた。そろそろ森の中で涼みたいのだ」
「……好きにしろ」
隠すつもりもない本音に呆れながら、ギ・グーはファンファンの同行を許した。
その後、土鱗の集落から援軍を呼び、戦線は大きく動き出す。
ゴブリンの王が“釣り”と評した囮部隊による蟻人の誘引戦術によって、地面に出てきた蟻人を数に勝るゴブリン勢が徹底して叩いていった。
◆◆◇
ファンファンら土鱗の一族の者達を使って探り出した蟻塚への道。砂漠の中に立つそれは、遠目から見れば只の岩山と大差がない。穴の開いた巨大な岩山のような外見の蟻塚は、魔窟と言って良いものだった。
入り口の狭さと通行の不便さから大多数での侵入は難しく、選りすぐった強者を前面に押し出しての進軍に切り替える。
一番乗り気であったラーシュカを先頭に、汚名を雪ぐ機会を欲したギ・グー・ベルべナ、偵察要員に暗殺のギ・ジー・アルシル。俺の護衛の任務は譲れぬと言い張るギ・ガー・ラークスを始めとする“傷モノ”達。そして嫌がるファンファンを無理矢理引き摺った俺自身を中核として、総勢50程の勢力で蟻塚の中へと侵攻していった。
外を守るのはギ・ヂー・ユーブに任せ、ハールーらをその指揮下に置く。土鱗の一族の者達に協力させ、引き続き釣りをさせながら敵の戦力の分散を図る。
蟻塚の中は思っていたよりも広く、明るかった。
獲物を運び込む為であろう広い通路。そして時折頭上から入る陽光のお陰で、光源が確保されていた。迫り来る蟻人達をラーシュカが難なく捻じ伏せていく。
張り切り過ぎて、蟻塚を壊さなければいいが……。
階層を降りるたびに蟻人の数が増えていくが、それに伴って兵隊蟻とでも言うべき者達が混じってくる。硬い甲殻と強力な顎の力を保持した兵隊蟻人だったが、それも難なくラーシュカの力で捻じ伏せられていく。
汚名を雪ぐ機会を欲するギ・グー・ベルべナ以下南方ゴブリンの精鋭達も、ラーシュカと先を争うようにして兵隊蟻人を駆逐していく。
そして10の階層を降った所で、蟻人の女王を捕えることに成功する。
否応なく女王蟻を叩き潰そうとしたラーシュカを止めたのはファンファンだった。
彼女の周りを守っていた兵隊蟻を駆逐しその身柄を抑えると、ファンファンが女王蟻の前に立つ。
俺にはただ鳴いているようにしか聞こえなかったが、ファンファンは彼らの言葉が分かるようだった。特殊な鳴き声を上げて会話するファンファンと女王蟻の様子を見守っていると、ファンファンが俺を呼ぶ。
「王様、餌次第で蟻さん従うそうだ。後ファンファンにも便宜を図ってくれると更に蟻さん従うそうだ」
露骨な嘘が見えているような気がするが、褒美は取らさねばなるまい。元々蟻人の殲滅よりは、彼らの力を利用したいという意図での侵攻だったのだ。
「そうか。で、便宜を図ってもらいたいファンファンは何を望む?」
「え、良いのか? 王様太っ腹だな! ではユーシカの持っている袋を取り上げて──」
「却下だ」
「狡いぞ王様。便宜を図ると言ったではないか。嘘は駄目だとファンファンは思うのだ」
それは便宜を図るのではなく、嫌がらせだ。
「では、妖精族から優先的に紙を貰いたいのだ」
「ほう……構わぬが、何に使うのだ?」
「最近本を書いているのだ。ファンファンは文字も絵も上手なのだ」
「成程……分かった。フェイを通して話しておこう」
「宜しく頼むぞ、王様!」
引き続き女王蟻と話をするファンファン。彼女にその場を任せて、引き上げの準備をする。ノーブル級以上に率いられたゴブリンの軍の連携は、まだまだ課題が多い。
今回は敵が弱かった為に表面化しなかったが、今後はそれらの課題をギ・ヂーらにも考えさせていくべきだろうな……。
──人間との再戦まであと、57日
◇◆◆◇◇◆◆◇
ラーシュカのレベルが上がります。
76⇒81
ギ・グー・ベルべナのレベルが上がります。
1⇒20
◇◆◆◇◇◆◆◇
次回更新は29日を予定。