シルフ統一戦争Ⅲ
【種族】ゴブリン
【レベル】54
【階級】キング・統べる者
【保有スキル】《混沌の子鬼の支配者》《叛逆の魂》《天地を喰らう咆哮》《剣技A−》《覇道の主》《王者の魂》《王者の心得Ⅲ》《神々の眷属》《王は死線で踊る》《一つ目蛇の魔眼》《魔力操作》《猛る覇者の魂》《三度の詠唱》《戦人の直感》《冥府の女神の祝福》《導かれし者》
【加護】冥府の女神
【属性】闇、死
【従属魔】ハイ・コボルト《ハス》(Lv77)灰色狼(Lv20)灰色狼(Lv1)オークキング《ブイ》(Lv82)
【状態】《一つ目蛇の祝福》《双頭の蛇の守護》
「感謝する。本当にだ」
シェーングの森に向かったフェルビー率いる先遣隊は、予想された集落の分裂に付け入る形で、シェーングの森へと侵攻した。
プエルの策を採用したフェルビーの指揮によって、シェーングの森のシューレ派を掃討するや、瞬く間にその支配をシルバの手に取り戻した。
「伝令!」
フェルビーに感謝を伝えるシルバ達の下に、息を切らせて走ってきた伝令が報せを齎す。
シンフォルの森陥落。
「まさか、ここまで早く? いや、各集落が混乱している今なら有り得るのか」
フェルビーの呟きに頷きながら、プエルは細い顎に手をやって考え込む。
「シルバ殿……確かシェーングには、青銀鉄の武具が豊富にありましたよね?」
戸惑いながらも頷くシルバを確認すると、プエルはフェルビーに視線を転じる。
「恐らく彼らの速さは重装備を着けない故のもの。あちらが速度を重視するのであれば、こちらは万全の準備をして迎え撃てば良いと思われます」
「ナッシュ・ジラド殿は間に合わないか……」
悔しそうに歪むフェルビーの表情に、氷のように冷たくプエルは言葉を続ける。
「シルバ殿、シンフォルアの名の下に、青銀鉄の防具と玉鋼鉄の武器の支度をお願いします」
「集落の混乱を鎮めてくれたのだ。出来る限りの支援をしよう」
頷くシルバの様子に、プエルは微笑みを向けて、フェルビーと共に歩み去る。
彼らの戦いは未だ始まったばかりだった。
プエルにしても、望まぬ戦いなど早く終わってくれた方が良い。
英明の誉れ高いシューレが何故ゴブリンと手を組んだのか、疑問は残る。プエルの知るゴブリンとは知性に乏しく、腕力にものを言わせて作物を荒らし、他の種族の女を攫って行く魔物だった。それが大挙して押し寄せたからといって、妖精族が負けるとは思えない。
何よりも、妖精族の集落には迷いの結界が存在する。それを無視して、ゴブリン達が侵入してくるのは非常に難しい筈だった。
であるならば、何かしらの理由がある筈なのだ。
シューレ・フォルニはこれを好機として、妖精族を統べるつもりなのか。或いは英明と呼ばれるその名は嘘偽りでしかなく、野心ばかり大きな族長だったのか。
人間には多くいた手合いだが、シューレもその類なのか。だが、ゴブリンの力を利用し、各集落に自身の共鳴者を作る手腕は本物だった。事実、シンフォルアの森でも彼らが決起するまで、全くその存在を知らなかったのだ。
分からない。
では、シューレ・フォルニに妖精族を裏切る理由があるとでもいうのか。いや、ならばフォルニ全体が従うことなど有り得ない。況してや各集落に共鳴者を作ることなど不可能だ。
英明の呼び名が嘘ではないとしたら、シューレにゴブリンを利用してでも、成し遂げたいことがあると……。
亜人達に関することだろうか? 一部は南と西にも住んでいるが、確か彼らの多くは東に住んでいる筈だ。いや、亜人が主で妖精族が従であるならその可能性もあるが、実際は逆。妖精族の立場は亜人達よりも上だ。
ならば、怨恨? 若しくは、追い詰められて……?
何に?
人間の勢力はまだ遥かに東にある。ゴブリン達がそれほど強いと?
「情報が足りませんね」
溜息をつきつつ、フェルビーとプエルは歩く。彼らの指揮下には今200もの妖精族の戦士達が集まっているのだ。彼らを無為に死なせることだけは避けねばならなかった。
だが、最悪を想定して動かねばならない。
「フェルビー、提案があります」
並んで歩くフェルビーを見上げて、プエルが打診する。その案を聞いたフェルビーは、深く頷くと彼女の案を受け入れた。
◆◆◇
プエルとフェルビーがシェーングの森を解放している頃、シューレ率いるフォルニ・ゴブリン連合軍は次の軍事行動に移ろうとしていた。
占領したシンフォルの森にてゴブリンの王と会談を持ったシューレは、軍を二つに分けることを提案する。つまり、シェーングの森に向かう組とジラドの森へ向かう組である。
この時点でシューレの下には、二つの集落は未だ混乱中であるという情報しかない。プリエナの捜索に人員を裂かねばならなかったのと、本拠地であるフォルニの森との連絡にも気を遣わねばならなかった為である。
況して、占領して直ぐのシンフォルの森の動揺を抑えながらという極めて困難なことを行いながらの軍事行動だ。プエルとフェルビー率いるシンフォルアの軍がシェーングの森を解放したとの情報を得られなかったとしても、彼の不手際ではないだろう。
ゴブリン側に妖精族の動揺を抑えることが出来ない以上、この政治的な仕事をするのは必然的にシューレに回ってくる。双方の仕事の両立は、シューレが思う以上の重圧を彼に強いていた。
「今回の作戦の目的はシェーングとジラドの森を奪取することにより、残るシンフォルアに圧力を掛けることだ」
地図を広げるシューレの言葉に、ゴブリンの王が頷きを返す。
「2正面とは思い切ったものだな」
太い顎に拳を当てながら考え込むゴブリンの王に、シューレは頷く。
「我らには時間がない。各地の同志からの連絡も徐々に劣勢を伝えてきている。早急に手を打たねばならない」
シューレの中に焦りがなかったと言えば嘘になる。自身の為に犠牲を強いた同志の為に、彼は何としてもその犠牲に報いたかった。
「……良かろう。確かに集落が混乱している今が攻め時なのは間違いない」
ゴブリンの王が同意を示したのは、彼なりの計算の結果である。妖精族に立ち直る機会を与える前に強烈な一撃を与えたいという計算。どの種族もそうだが、ゴブリンというのは最底辺の種族として認識されている。
亜人、妖精族、魔物、そして人間。世界に広く分布する彼ら中の共通の認識として、ゴブリンは弱く野蛮で信用することなど決して出来ない種族だと思われているのだ。
その認識にはゴブリンの王をしても否定できない部分も確かにある。だが、一つの国を築くことを目標に掲げるゴブリンの王にとって、その認識は非常に危険なものだ。
弱いものは淘汰される。
王が生まれてから直ぐに突き付けられた弱肉強食の掟は個人に止まらず、組織においてもその絶対性を強いていた。
弱き国、侮られる国は搾取され滅ぼされる。
同盟を組むに値しないと思われた国に手を差し伸べる奇特な国など存在する筈がない。その厳しさは個人での関係よりも更に冷徹なものがある。
故に、ゴブリンの王は多少強引にでも各種族に己達の力を見せつける必要があるのだ。そのためには少数で妖精族を打ち破り、自身をより強大に見せることが出来れば効果的ではある。
「ゴブリンの王を中心として、ジラドの森を攻略してもらいたい。フェイを同伴させ、彼を案内とすればいいだろう。私はこのまま南下してシェーングの森へ向かう」
それぞれの兵数を決めて、一通りの打ち合わせを終える。
「そういえば、君が鍛工の小人に頼んでいた一品が出来上がったそうだ。シュナリアが近々こちらに運んでくると連絡があった。親方ダンブル・ダビエ・ダビデも随分ご満悦だったらしい。久しぶりに血の湧く仕事だと言っていたな」
その報せに、難しそうに眉を顰めていたゴブリンの王が愁眉を開く。
「おお、できたのか!」
無邪気に喜ぶゴブリンの王に、シューレも笑みを見せる。
「ジラドの森を攻略し終えた頃にはこちらに届くだろう。楽しみにしていると良い」
「手に馴染む武器は戦場では何よりも貴重だからな。嬉しい限りだ」
ゴブリンの王に酒杯を勧めて、妖精族独特の清水酒を注ぐ。
「何にせよ、次の目標を攻略し終えたならシェーングの森で再会しよう。武運を祈る」
「ふむ……神になど祈る趣味はないが、シューレ・フォルニの道先にも幸運を」
青銀鉄製のコップを打ち鳴らし、乾杯すると二人はそれぞれの目的地に向かって出発した。
◆◆◇
ナッシュ・ジラドの支配する囁きの森の入り口は、固く閉ざされていた。
普段なら俺達ゴブリンが容易に侵入できないであろう妖精族の森の結界は、無造作に開け放たれている状態だった。
森の集落の内部で、シューレの同志が手を回しているのだろうか。静まり返ったその入り口には、争いの後と思わしき破壊の後が痛々しく残っている。
耳に痛いほどの静寂。まるで森全体が息を殺しているかのような静まり返った静寂の中にジラドの森はあった。
「さて、どうするかな」
声に出して確認してみる。俺の手勢は100を超えた程度だ。殆どはゴブリンを中心とした歩兵に、シューレに忠誠を誓う妖精族の射手が30程。シューレの副官であるフェイが彼らの纏め役となって俺の傍らにいる。
その他にゴブリンの中では、呪術師ギ・ザー・ザークエンド、獰猛なる腕のギ・バーらを率いている。今回、氏族出身のガンラのル・ロウ、ガイドガのダーシュカ、パラドゥアのハールーらは、シューレ側に付いてもらっている。彼らを纏めるのは見開く瞳のギ・ヂーに任せた。
今後の成長を願っての試金石といったところだが、俺の期待にギ・ヂーが応えられるかは未知数だ。人間であるシュメアと妖精族のセレナは俺の傍にいる。特に人間であるシュメアは妖精族、ゴブリンともども良い感情を持たれていない為に、俺の傍の方が安心だろう。
まぁ、良い感情を持たれない程度で済んでいること自体が彼女の適応性の高さと人当たりの良さを証明しているが。
相変わらずシュメアにべったりとくっついたセレナも、シュメアの後ろに隠れつつ弓などを準備している。
「一気に攻めたら如何です? 見た所、未だ混乱からは立ち直っていない様子です」
フェイの言葉に頷きながらも、俺は周囲を観察する。
どうも怪しいのだ。
確かに静まり返って入る。だが、どこか違和感が拭えない。
木々の間から見える狭い空を仰ぐ。青い空に、白い雲が浮かび鳥の一羽も見ることがない。
「フェイ……風の妖精族に姿を隠す類の魔法はあるのか?」
魔法と聞いて聞き耳を立てていたギ・ザーが乗り出す。
「あるには、ありますが……」
周囲を見渡すと、部下の一人に指示をする。俺が何を言いたいのか察して行動に移す優秀さは、流石にシューレの下で秘書を務めるだけのことはある。
「旦那、良くない気がするよ……何というか、こう言葉にするのはあれなんだけど」
セレナを庇いながら、シュメアは兜を被り直す。
俺も同感だった。だが進まねばどうしようもないのも事実。
「ギ・バー。3匹一組を率いて、偵察の妖精族を護衛しろ。左はギ・ザー、右は俺がやろう。後ろの警戒はフェイだ」
空の上から見れば紡錘型の縦に長い陣形になりながら、警戒をしつつ前に進む。森の中に入り込んで少し歩くと、周囲の景観が変わる。
木々の間隔は狭まり、鬱蒼と茂る木々の枝が視界を遮る。繁殖した蔦や背の低いシダ類が足元を埋め尽くす。
「王、前ニ!」
ギ・バーの声に前を見る。太い木々の幹の間から姿を現したのは幽鬼と見紛うばかりの亜人の姿。牙の一族だった。だがその身体は傷付き、体の所々には出血の跡が窺える。それでも奴らが敵対する者だということは、その悲壮な表情と手にした武器を構える様子から判断できた。
「亜人だと?」
フェイの疑問の声に、俺は即断で声を上げる。
「戦闘準備! 油断するな!」
「フェイ殿、後ろにも!」
悲鳴に近い報告に、俺とフェイが後ろを見れば牛人の一族までもいる。彼らも同じように体には傷跡があり、その表情は悲壮を通り越して虚ろですらある。だが、大斧を構えた姿は堂に入っている。決して侮っていい戦力ではない。
「オオオォォオオオ!」
遠吠えに似た咆哮を上げて、牙の一族と牛人の一族が無造作に俺達に襲い掛かってくる。数は立ち塞がる牙が50に、後ろを遮断する牛人が40といったところか。
何を考えている?
「槍兵隊前に出ろ! 奴らの突進を許すな!」
俺は指示を下しながら最前線に出る。牛人に向き合うと、腰から長剣を抜く。
「フェイ、警戒を厳しくしろ。妖精族は全て警戒に使っても構わん!」
前で交戦しているギ・バー達は3匹一組を使って互角以上に亜人と殺り合っている。
「ギ・ザー、前方の支援だ。打ち破り次第こちらにも頼むぞ」
「応。任された!」
嬉々として、指揮下の祭祀達に命令を下し魔法の詠唱を始めさせるギ・ザー。
「ギ・ドーを中心として、右から回り込む牙の一族に攻撃を集中させろ!」
呪術師ギ・ザーの指示に従って風術師ギ・ドー達らが一塊となって、前方のゴブリン達を援護する。ギ・バーを中心とする前方で戦うゴブリン達にとって、それは攻勢に転じるだけの好機を作り出していた。
「進メ!」
獰猛なる腕のギ・バーの檄に応えて3匹一組のゴブリン達が次々と亜人の体に刃を突き立てる。
牙の一族の亜人が振り下ろす刃を1匹が受け止め、残る2匹が同時に刃を振るう。または槍の穂先を揃えて体ごとぶつかる。
前方での戦いは徐々に有利になってきた。だが、それを遮るように天から矢が降り注ぐ。
「距離を詰めろ!」
亜人との混戦状態に持ち込めば、奴らも射撃を躊躇う筈だ。
「ギ、ガ!?」
その判断から指示を飛ばすが、それが却って裏目に出てしまった。
悲鳴に気が付いて視線を向ければ、亜人諸共矢の雨はゴブリン達を撃ち貫く。
不味いな。
俺の目の前の戦いは、ギ・ザー達祭祀の援護を受けられない分不利だった。
「旦那、こりゃ不味いよっ!?」
シュメアが牛人の大斧を躱して、敵の足に槍先を突き刺す。だが悲鳴を上げながらも怯まない牛人の突撃に、慌てて地面を転がり攻撃を避けていた。
「「「天恵の風よ!」」」
俺の後ろで複数の声が重なる。中央に位置するように固まっていた妖精族の集団から吹き上がる風が、天を覆う。
見上げるばかりの竜巻が頭上を荒れ狂う。
その上に降り注ぐ矢が目標を射られず、明後日の方向へ飛んで行っていた。
「ゴブリンの王。貴方の判断は正しかった。襲撃です」
左右の森の中から姿を現したのは妖精族の戦士達。それを守るように亜人が陣形を変えつつある。
「……今の魔法、あと何度できる?」
牛人と対峙しながらフェイに問いかける。
「敵の攻撃次第ですが、5度ならば」
見れば一瞬の後には、天に吹き荒れる風はすっかり消えていた。広範囲で威力も高そうだが、効果時間は短いというわけか。しかも使用には複数の術者を必要とする。使い方を間違えると戦力が発揮できなくなるな。
「ならば再度の攻撃が来る前に、目の前の敵を突破すればいい!」
打ち鳴らす剣戟を越えて、俺の剣が牛人を切り裂く。突き刺した剣を引き抜くと同時に、左右から迫る斧を打ち払う。
「グルウゥォオオオア!」
咆哮を上げて素手で牛人を殴り飛ばすと、殴り飛ばした間合いを詰めるべく突進。目の前に立ち塞がる牛人達からの攻撃を長剣で弾き、或いは見切って攻撃を加える。
「王、上から!」
「我が身は不可侵にて!」
後ろからの悲鳴に、咄嗟にシールドを発動。
俺の周囲に降り注ぐ矢の雨が、シールドを突き破り肌を裂き肉に食い込む。
「我が心は風に乗る」
空気が揺れる。現れたのは小さな竜巻が8つ。俺の左右を駆け抜けて周りの牛人を吹き飛ばし、降り注ぐ矢の軌道を逸らす。
「王よ。油断するな!」
油断していたわけではないが、援護は有り難い。見ればギ・ザーの指揮する祭祀達は、前方の戦いをほぼ制しつつあった。
ギ・ザーの援護の下に牛人を突破し、妖精族の戦士に迫る。
「化け物風情が!」
妖精族の戦士の中で鎧が一層立派な者が前に出る。コイツが妖精族の戦士を束ねているのか?
黒い炎を纏わせた長剣で敵の刃と切り結ぶ。だが刃が触れるたびに、黒い炎が弾かれるのはどういうことだ。玉鋼鉄か青銀鉄の特殊な効果だとでもいうのか。
腕力の差で俺が押してはいるが、早めに決着をつけなければ刃ごと断ち切られるかもしれん。なにせ相手が防御に回るだけで、切り付ける俺の長剣が刃毀れしてしまうのだ。
だが、敵もさるもの。戦士を纏めているだけあって実力が高い。防御に専念することで致命傷を避け続けている。普通なら恐慌に駆られて打ちかかってくるところだが……。
埒が明かん!
だが、離れるのは危険だ。奴らの得意はあくまで矢による遠距離戦。ならば近付くしかない。
「ぬぅっ!?」
打ち払われる剣をそのまま投げ捨てると、相手の懐に飛び込む。この至近距離なら、例え刃を受けても致命傷にはならない。
剣を振りかぶる妖精族の戦士に俺は手を延ばす。
打ち下ろされる一撃は不十分な力と間合いだった筈。剣の軌道は遠く、決して断ち切られるようなものではない。
「ぐっ!?」
だが予想を遥かに超える重みと、肌に食い込む痛みに思わず膝が笑う。
一瞬だけ止まった突撃の勢い。
「グルゥゥォオオァアォオア!」
咆哮を上げながら前に出る。
巧者ならここで距離を取るところだろうが、目の前の妖精族は恐慌に見舞われたのか、再び剣を振り上げる。
痛みを無視して、足に力を込める。
振り下ろす相手の腕を抑え込み、握り潰す。悲鳴を上げる相手を無視して剣を奪い取ると、周囲に居た妖精族に向けた。
さあ、これで武器は互角だ。
じりりと下がる妖精族に剣を向けたまま、前に出る。
「退けっ!」
追撃を、と叫ぼうとして周囲の状況が目に入ってくる。未だ優位に戦いを進めてはいたが、亜人諸共
射撃に晒されてゴブリンにも少なからず被害が出ている。
妖精族の防御魔法も、全ての射撃を無効化する程ではないらしい。
これから先の戦いを考えれば、補充の難しいゴブリン達を失うわけにはいかない。今の俺には戦慣れした戦士は喉から手が出る程欲しいものであり、そして失うに惜しいものだからだ。
逃げて行く妖精族を見送ると、残敵の掃討に取り掛かった。
──人間との再戦まであと310日。
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レベルが上がります。
54⇒55
◆◆◇◇◆◆◇◇
仕事はいまだに忙しいながら、少しずつ更新いたします。
次の更新は25日