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ゴブリンの王国  作者: 春野隠者
王の帰還
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襲撃

【種族】ゴブリン

【レベル】99

【階級】ノーブル・群れの主

【保有スキル】《群れの統率者》 《反逆の意志》 《威圧の咆哮》 《剣技C+》 《強欲》 《孤高の魂》 《王者の心得Ⅰ》 《青蛇の眼》《死線に踊る》《赤蛇の眼》

【加護】冥府の女神(アルテーシア)

【属性】闇、死



 オークの群れの襲撃。

 周辺に住み着いたオークを始末したことで油断していた。

 群れて移動するオークの脅威は、俺が考えていた以上に深刻だったらしい。

 集落を襲ったのは、その数6匹。

 俺を守って逃げたギ・グーを始めとする一部のゴブリンを除いては、散り散りに逃げてしまい、どこに居るかも分からないそうだ。

 集落へ向かう中、ギ・グーの話を聞きながら情報を纏める。

 蜘蛛との死闘の疲労で眠っていたとは言え、運がない。いや、限界の戦いをするには、未だ油断ならない状況だと言うことだろう。

 眠っている間に殺されていた可能性もあったのだ。手下が自分達でオークに対処出来るようになるまで、無理な戦闘は控えるべきだろう。

 俺が対処出来る範囲での出来事だった幸運に感謝すべきだ。

 従えるのは10匹のゴブリンとギ・ガー。そして、女剣士を救い出したいらしいレシア。

 この数で真正面から打ち合うなど、無謀としか言いようがない。

「ギ・グー」


 小細工が必要だ。元集落のリーダーであるギ・グーを呼ぶ。

「先行して、オークを狩猟地域へ引っ張っていけ」

「はイ」

 オークの行動パターンを思い出す。奴らは、ゴブリンにしてもそうだが、欲望に忠実だ。欲しい物を奪ったなら腹を満たし、その後で欲望を遂げる筈。

 ならば、未だにあの集落に留まっている可能性は高い。

「罠を使えば時間を稼げる筈だ。オークを無理に狩ろうとするなよ」

「時間ヲ、かセぐ」

「そうだ。逃げ回ればそれでいい」

 群れのリーダーが率先してゴブリンを追っていく……などということは、先ず無い。

 オークの群れの中でも下っ端……つまり、頭の弱い者や実力で劣る者がギ・グー達を追う筈だ。

 そうやって分断すれば、オークの群れとて勝てないことは無い。

 ギ・グーが無言で頭を下げると、ゴブリン達を率いて走り出す。

「グルウウゥ!」

 猛る声を上げると、ゴブリンを4匹連れて集落へ向かって走っていった。

「他は石を集めて、北の入り口に隠れていろ!」

 残ったゴブリン達に指示をすると、ギ・ガーとレシアに声を掛けた。

「俺達は南門だ」

 鋼鉄の大剣を担ぎ直すと、俺は自分自身に宣言するように言った。

「奪い返すぞ! 全てをな!」

 北から吹き抜ける風が、戦の予感に梢を揺らしていた。


◇◆◇


 所々朽ちた柵に囲まれたゴブリンの集落では、オーク達が食事の真っ最中だった。

 数は3匹。ギ・グー達が上手く敵を引き離したらしい。

 もし引き離しに失敗していたら、レシアとギ・ガーを囮として使うつもりだった。その為に南門まで走ってきたが、杞憂だったようだ。

 これなら、後はあの3匹に集中すればいい。

 長槍を肩に担ぎ、首には牙を連ねたような首飾りをしたオーク。明らかに他のオークとは一線を画する装い。その体躯に目を凝らせば、ぼんやりと脳裏に浮かぶ文字の羅列。

 【スキル】《赤蛇の眼》が発動。


 【種族】オーク

 【レベル】67

 【階級】リーダー・群れの主

 【保有スキル】《怒声》《威圧の咆哮》《悪食》《突進》

 【加護】なし


 あれは夢じゃなかったらしい……。

 胸の中に入り込んだ一つ目の赤蛇が、【スキル】として機能しているらしかった。

 改めて、自身の【スキル】を確認する。


 【スキル】《赤蛇の眼》

 ──相手のレベルが自身よりも低い場合にのみ、相手のステータスを読み取る。


 【レベル】ときたか。

 人数差なら分かり易かったが、【レベル】が必要となると、単純に階級が上がったからといって使い勝手が良くなる訳ではない。

 運良く現在の俺の【レベル】が99だったから読み取れているが、階級が上がった直後などは殆ど読み取れないと考えて良い。

 使い所を間違えないようにしなければ。

 だが、それとは別に、今はこの力がありがたい。

 敵の戦力が判明すれば、何にも増して作戦を立て易い。

 長槍を持っているオーク・リーダーを除けば、他は普通のオークだった。

 俺一人でも対処出来ないことはない、が……。

「ギ・ガー、レシア。中央を駆け抜けて北の門まで走れ」

「仰せノマまに」

 レシアを確認するギ・ガー。レシアを見れば、こちらの言葉に頷いていた。

 不審はあるのだろうが、今は俺の言葉に従うしかない筈だ。

「行け!」

 オークがこちらに背を向けた瞬間、二人を走らせる。

 同時に俺は食事に夢中なオークに向かって走る。

 座り込んで食事をしているオーク3匹。

 後10歩。オーク達は未だこちらに気が付いていない。

 異様に鼻が効くオークの特性を鑑みて、態々南門から進入した甲斐があったというものだ。

 後7歩。

 その距離まで来た時、目に入る光景。

 死した俺の手下の屍を喰らうオークと、死んだように動かない女剣士の姿。

 ──ぎりぃ。

 知らずに奥歯を噛み締めていた。

「ブギュァアァ!」

 後4歩。

 やっと気付いたオーク共が、怒声を上げる。

 だが、もう遅い。

 そこは既に俺の射程圏内。肩に担いだ鋼鉄の大剣(アイアン・セカンド)を大上段に振りかぶり、オークの頭に降り下ろした。

 大剣の重みに加えて、加速する遠心力まで加えた一撃は、容易に取り巻きの頭を叩き割る。

 返す刀で中央に座っていたリーダーを狙うが、流石に長槍を盾にされ、距離を取られてしまった。

「プギュュァアアァ! ギュアア!」

 何やら怒り狂っているが、生憎と怒りの嵩ならこっちも負けてない。

 ──良くもやってくれたな!

「グルゥゥアアァ!」

 威圧の咆哮に取り巻きオークの一匹が怯む。

 一匹は俺よりも格下と考えて良い。だが──。

 思考を中断させるオーク・リーダーの攻撃。俺の大剣の二倍はあろうかという長射程から繰り出される横薙ぎの一撃が頭上を通り過ぎる。

 射程が長いなら、間合いの内側へ──!

 槍が俺の頭上を通り過ぎた瞬間、身を縮めてオーク・リーダーに肉薄する。

「プギュァアア!」

 四足(よつあし)の獣のように、体を地面に擦り付けるようにして這い進み、オーク・リーダーの頭を狙うべく大剣を背に隠すように持った。

 オーク・リーダーが豚に相応しい醜悪な笑みを見せた瞬間、俺の背筋が凍り付いた。

 視界の隅から僅かに見えた物に確認もせず、反射的に反対側に飛ぶ。

 大腿部に走る熱が攻撃を受けたのだと知らせてくるが、それを確認する間もなく頭上から長槍が降ってくる。

 転がって何とかそれを躱すと、背を向けて北門へ走り出す。

 もう少し相手の戦力を削っておきたかったが、無理をしても始まらない。

「プギュァアァ!」

 背後から聞こえる怒りの声。血を見て猛ったオークは、最早生半可なことでは止まらないだろう。

 頭に血が昇ったオークを連れて、俺は北門へ向かった。


◇◆◆


 集落の北門は、そこから直ぐに道が森に閉ざされている。

 人が住まなくなった集落から、山中へ向かう者が居なくなった為だ。自然の侵食を受けた山道は半ば以上が閉ざされ、足元には草木が茂っていた。

 左右には道を圧迫するように藪が這い出ており、小さな草木が道を覆う。

 周囲に林立する木々に挟まれた狭い道で、俺とオーク2匹は対峙していた。

 既にゴブリン達の配置は終わり、後は投石で牽制させながら、俺がオークを仕留めればそれで終わる。

 だが、そう簡単に勝たせてくれる程、敵も甘くは無かった。

 周囲に林立する木々が邪魔をして満足に槍を振るえないと考えていたが、オーク・リーダーは俺の想像の上をいった。

 小さな木々など薙ぎ倒しながら頭上で長槍を旋回させると、遠心力を利用した一撃を難なく繰り出してくる。

 大剣を両手で構えて全力で防御に回わらなければ、弾き飛ばされてしまう恐るべき威力。

 不意打ちで奇襲を掛けるならこちらを狙うべきだったと、後悔が過る。

 そして、その隙を突いて仕掛けてくる取り巻きのオークの一撃。

 手にした長剣を繰り出し、槍の間合いの中に俺を入らせないよう上手く立ち回って居る。

 ──豚の癖に、連携なんぞしやがって!

 焦れば焦る程、相手のペースに嵌っていく。

 小さいながらも無数に負った傷は間断なく血を流し、俺の体力を削り取っていく。

「グ!?」

 取り巻きオークの長剣を避けた直後、襲い来る長槍の一撃に、俺は吹き飛ばされた。

 取り巻きのオークが、ニヤけた顔で長剣を振りかぶったのが見え──。



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