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ゴブリンの王国  作者: 春野隠者
楽園は遠く
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死者に花束を

しばらくは死人も出ないし流血もない展開が続きます。


【種族】ゴブリン

【レベル】36

【階級】キング・統べる者

【保有スキル】《混沌の子鬼の支配者》《叛逆の魂》《天地を喰らう咆哮》《剣技A−》《覇道の主》《王者の魂》《王者の心得Ⅲ》《神々の眷属》《王は死線で踊る》《一つ目蛇の魔眼》《魔力操作》《猛る覇者の魂》《三度の詠唱》《直感》《冥府の女神の祝福》

【加護】冥府の女神(アルテーシア)

【属性】闇、死

【従属魔】ハイ・コボルト《ハス》(Lv77)灰色狼ガストラ(Lv20)灰色狼シンシア(Lv20)オークキング《ブイ》(Lv82)

【状態】《一つ目蛇の祝福》《双頭の蛇の守護》





 火をかけた集落の跡に陣取り、とりあえずの指示をして俺は深淵の砦まで戻ることにした。一旦集落から逃れた老ゴブリンを始めとした非戦闘員のゴブリンを集落で休ませる。

 今すぐにでも攻めてくるということはないだろうが、人間側の勢力の伸張が気になる。当面向き合うことになる西方領主は不可侵を誓ったが、それがいつまでも効力を発揮されるとは思えなかった。

 一刻も早く戦力の復興を成し遂げ、更なる拡充を図らねばならない。

 だがその前に、今回階級を上げた者達を確認せねばならない。各人の力を知っておくことが今後の方針に及ぼす影響もあるのだろうから。

 まずは、ギ・ガーだ。


【個体名】ギ・ガー・ラークス

【種族】ゴブリン

【レベル】1

【階級】ナイト・ガーディアン

【保有スキル】《槍技B+》《威圧の咆哮》《雑食》《必殺の一撃》《王の信奉者》《投槍》《武士の魂》《不屈の魂》《閃き》《獣上槍》《守護者の心得》

【加護】なし

【属性】なし

【状態異常】欠けた足を義足で補うことにより、戦力30%減

【愛騎】ハクオウ


 階級に限っていえば、今まで皆デュークになっていた筈が、ナイトというモノになっている。発現条件は不明だしサンプルが足りない。他のゴブリンの進化状況を確認してみないと、何とも言えないが……。

 新しいスキルとして目ぼしいものは、《守護者の心得》だろうか。

 《守護者の心得》──互いに名前を名乗り戦った場合、スキルの成功率アップ

 名前を名乗った尋常な勝負なら、ということだろうか? まぁ何にせよ強化されていることは良いことだ。


【個体名】ギ・ジー

【種族】ゴブリン

【レベル】3

【階級】ノーブル

【保有スキル】《投擲》《威圧の咆哮》《槍技C-》《暗殺》《剣技C+》《猛犬の鼻》《蝙蝠の耳》

【加護】なし

【属性】なし


 新たにノーブル級となったギ・ジー。思えばオークの流入の前からレア級となっていたのだから、いつ階級を上げてもおかしくはなかった。ギ・ギーもノーブル級へと進化を遂げていたのだし……さて、スキルだ。ずっと偵察を任務として任せていた為にそれに特化したスキルが多いようだ。

 《暗殺》──最初の一撃に限り、音もなく相手の背後に忍び寄り攻撃を加えられます。

 《猛犬の鼻》──視界のない状態でも敵味方の判別が可能になります。

 《蝙蝠の耳》──森の中で行動する限りにおいて、1階級差までの気配を探知可能です。

 ギ・ギーの使役する魔獣や、パラドゥアの騎獣らと組み合わせて使えば効果を発揮しそうではある。


【ギ・ズー】

【種族】ゴブリン

【レベル】1

【階級】ノーブル

【保有スキル】《威圧の咆哮》《投擲》《槍技B-》《必殺の一撃》《狂い獅子》《食い千切り》

【加護】狂神(ズ・オール)

【属性】なし


 ギ・ザー達を第一世代とするなら、第二世代で最初のノーブル級到達ということになる。

 《狂犬》のスキルが《狂い獅子》へと進化と遂げている。他は《食い千切り》のスキルを獲得しているようだった。ノーブル級になったことで狂神の精神侵略に耐える力が備わってくれることを祈るのみだ。

 《狂い獅子》──狂化により戦闘力が上昇。筋力、俊敏性、防御力上昇。

 《食い千切り》──強靭な顎の力で獲物を引き裂きます。


 ギの集落の中でレアからノーブルに進化を遂げたのはこれだけだった。次に今回の襲撃を生き延びた中から、レアへと進化を遂げたゴブリンが何匹かいる。


【種族】ゴブリン

【レベル】1

【階級】レア

【保有スキル】《投擲》《威圧の咆哮》《槍技C+》《剣技C+》《死地への嗅覚》《獰猛なる腕》《人食い蛇》

【加護】冥府の眷属神(ヴェリド)

【属性】死


 真の黒(ヴェリド)め。何のつもりだ、余計な事をしてくれるな!

 ──何を言う。弟よ、貴様の野望のために力を貸してやっているのだ。

 右腕の蛇の声が聞こえる。

 ボロボロになりながら争っていた為だろうか、中々優秀なゴブリンのようだった。隠し切れない人間への憎悪が瞳に宿っていることを除けば、だが。余計なものを授けてくれる。

 《死地への嗅覚》──命の危機を感じると戦闘力がアップ。筋力上昇。

 《獰猛なる腕》──二つの武器を操ることができます。ただしスキルを使用した場合は、一段階技量が下がります。

 《人食い蛇》──人間と戦う限りにおいて、戦闘力アップ。腕力、俊敏性が上昇。

 ──弟よ、勝利の祝いだ。上手く使え。

 その憎悪すらも利用しろというのか。頭の中だけで罵詈雑言をぶつけ、目の前のゴブリンを見下ろす。

「ギ・バーの名前を与える」

「ありガたク」


【種族】ゴブリン

【レベル】1

【階級】ドルイド

【保有スキル】《水術操作》《魔素操作》《深慮》《知への探求者》《死地への嗅覚》

【加護】水神

【属性】水


 今は亡きギ・ゾーと同様に水を操る術を持ったドルイド級のゴブリンだった。《死地への嗅覚》は、まぁギ・バーと同じだとしても《知の探究者》か。ギ・ザーの薫陶篤きといったところなのか。何にせよ人間との覇権を争うには兵を指揮できる者が必要になってくる。その期待に応えられるようなら、歓迎すべきスキルなのだろう。

 《知への探求者》──知恵の神の恩恵を受けて、知能の成長速度が増加します。

 《深慮》──物事を深く考えるようになります。その恩恵により、魔素を少ない力で操ることが可能になります。

 跪くゴブリンに名前を与える。

「ギ・ビーとする」

「ご恩に報いるよう、誠心誠意尽くさせて頂きます」


【種族】ゴブリン

【レベル】1

【階級】レア

【保有スキル】《威圧の咆哮》《斧技C+》《悪食》《獣の心》《死地への嗅覚》《獣士》《格闘C+》

【加護】なし

【属性】なし


 続いて連れて来られたのは獣士のスキルを持ったゴブリンだった。思えば今まで引見したレア級ゴブリン達はギの集落に残りあの激しい戦を生き延びたのだ。それらを率いていた水術師ギ・ゾー、獣士ギ・デー、槍使いギ・ダーの影響を受けていても何ら不思議ではない。

 初めて見るスキルは《格闘》だろうか。剣技や斧技と同じCランクがついているようだが……。

 《格闘C+》──素手での戦闘に補正があります。敵に対して致命傷を与えやすくなります。

 という程度のものだ。格闘がどの程度影響を及ぼすのかは実際に使ってみなければ分からない。これからじっくりと調べるしかあるまい。

「ギ・ブーの名を与える」

「ありがタク、王ヨ」


【種族】ゴブリン

【レベル】1

【階級】レア

【保有スキル】《投擲》《威圧の咆哮》《噛み千切り》《剣技C+》《斧技C+》《槍技C+》《死地への嗅覚》《人食い蛇》

【加護】冥府の眷属神(ヴェリド)

【属性】死

【状態】片腕を失ったために、戦力30%減


 そしてもう一匹。四肢を欠損したままゴブリン・レアに進化を遂げたゴブリンがいる。《人食い蛇》のスキルは人間と戦う上で貴重な戦力として期待できる。だが、やはりその瞳に映る憎悪の影は人間を心の底から憎んでいるようだった。

 片腕を失ったのだから仕方のないことなのかもしれないが、これは俺が人間を支配した時の障害になりはしないだろうか。ギ・バーと同様に、このゴブリンの運用にも細心の注意が必要となりそうだ。

「ギ・ベーの名を与えよう」

「この身尽きテも、人間ドもに復讐ヲ」

 片腕のギ・ベーが器用に頭を下げる。

 そして最後に残った一匹。氏族のラ・ギルミのステータスを確認する。


【個体名】ラ・ギルミ

【種族】ゴブリン

【レベル】2

【階級】ノーブル・初めに射る者(ガディエータ)

【保有スキル】《弓技A-》《統率B+》《遺志を継ぐ者》《3連射》《森の住人》《精霊の囁き》《百里を見る者》《射殺す鏃》《英雄の素質》《影縫い》

【加護】弓神(ザ・ルーガ)

【属性】なし


 姿形は、ノーブル級ゴブリンよりはドルイド級に近い容姿をしている。つまり人間に近いのだ。青い皮膚に、腕が腰の下まで長く伸びている。ローブなどを被ってしまえば、人間と遜色ないのではないだろうか。弓神の加護も健在のようだった。

 《百里を見る者》──弓の命中率と威力が上昇します。

 《英雄の素質》──統率に影響を与えます。氏族だけでなく他のゴブリンに対しても魅了効果。

 《影縫い》──敵の影を縫い止めることにより、一時的に動きを封じます。1階級差まで有効です。

 《影縫い》とは、また便利なスキルだ。1階級差という事は、デュークまでは影縫いの獲物となってしまうということだろう。集落間の力関係に微妙な変化を齎すかもしれないな。ラーシュカ辺りが騒がなければいいが……。

 これで引見を終えると、集落のゴブリンの数を数え動けるものを連れて、戦いに散った者達の為の墓穴を掘る。

 今この集落で戦えるものは殆どがレア級に進化してしまった。ノーマルで生き延びているのは体を負傷して満足に戦えない者や、幼生、メス、そして老ゴブリンだった。

 死したゴブリンの屍を拾ってきて集落の一角に埋める。俺を筆頭に、ナイト級のギ・ガー、ノーブル級、レア級のゴブリン達がそれぞれ仲間の屍を拾い集めてくる。

 人間の侵攻を抑えながら、集落のゴブリンの数を増やさねばならない。メスは一定数を確保しているが、これからの扱いには更に慎重さを加えねばならないだろう。

 彼女らが居なければ、いつか王国を守る者は全て死に絶える。何者も死という運命からは逃れられない。勿論俺を含めてだ。

 穴を掘っただけの簡単な墓に、屍を入れると土を被せて木の苗木を植える。

「死した勇敢なる者に!」

 胸に拳を当てて、頭を下げる。ノーマル級やレア級の中には俺の動作の意味が分からない者もいるようだったが、ナイト・ノーブル級のゴブリン達は厳粛として俺に続いた。

 ギ・ダーよ! ギ・ゾーよ! ギ・デーよ!

 真の戦士たちよ!

 いずれ、全てのものが死に絶える。

 だからこそ俺はこの世界を手に入れる。

 我らが生きた証しを、この美しき世界に刻み付けるのだ。



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