第2話 いか男くんからのご相談〜みかんちゃん 後半
「まず、いか男くんには厳しい話からせねばならんな。
残念だが、今のいか男くんのままでは、みかんちゃんから一人前の男として認めてもらえることはけして無い。
それが真実なのだ。」
「ええっ、それじゃ、いか男くんの恋は儚く散ってしまうの、、?」
「ガ~ン、やっぱりお漏らしですかあ?」
「リスナーさん、お漏らしなどささいなこと。
この先は、あえていか男と呼ばせてもらおう。
みかんちゃんは、そんないか男でも長い間見守ってきてくれた。優しく素晴らしいお嬢さんだ。
小学校1年生で、お漏らしした男の子を心配してくれる、なかなかできる事ではない。
しかし、今やいか男も高校1年生、優しさに甘えてはいけない時期にきたのだ。
弱さをさらけ出し続けてモテるのは、ごく一部のイケメンだけじゃ。
だが、みかんちゃんはそんな男には興味も無いだろう。
みかんちゃんに、いか男が一人前の男として認めてもらえるには、いか男が今まで受け取った以上の優しさを持つ男になるしかないのだ。
いか男は、たくさんみかんちゃんに優しくしてもらった、嬉しい、かわいいから好き、仲良くなりたい、それだけじゃ。
みかんちゃんに優しくしてもらったから、俺もそんな人に優くできる人になりたい。
みかんちゃんにしてもらったようにみんなを助けたい、そう日々努力するしかないのだ。
みかんちゃんは、本当の強さを知る女性だろう。
そんな彼女には、見栄や虚勢、はったりは通用せん。
まだ、無理してなんとかジャパンに行く必要はない。
学校の中で、外で、みかんちゃんのように、困った人に優しくできる男になることが全ての始まりじゃ。
さすれば、自ずと道は開けるだろう。」
「でも華ちゃん。電車に乗れないのはどうにかしたいよね。」
「電車が怖いのなんて、おかしくも何ともない。
あえて言わないだけで、みんなそうなのだ。
電車でトイレに行きたくなったら大変だと、心配する方が普通じゃ。
わしの知り合いはダンディーな紳士だが、お腹が弱いので会社までの全ての駅のトイレの場所を降りて見て確認している。
さらには各駅停車しか乗らん。
トイレが不安で、毎日朝5時の空いている始発に乗らないと会社にいけない人もいる。
腹が痛くてもうすぐ駅と思った時、事故や故障で長時間停車のアナウンスがあった時の絶望感たるや。
わしは、そうした状況で恐ろしい悲劇を味わった男を知っているぞ。
誰なのかは想像に任せるがな。
そんな過酷でサバイバルな場所、それが大都市のトイレの無い電車の現実なのだ。
外国人観光客が日本の電車は素晴らしいとか言うが、それはたまに乗る空いた電車のこと。
本当の満員電車の恐怖を彼らは知らないのだ。
数分毎に電車が時間通りに来る都会がある一方、地方では1時間、2時間に一本なんてよくある話。
しまいには廃線が続出しておる。
おかしいと思わんか?
鉄道で働く人達が日々がんばっているのは、素晴らしいこと。
これは、鉄道会社の問題ではなく、都市、国家デザインの問題なのだ。
センスの無い者が、人より金優先で都市や国家をデザインした結果、人が溢れかえる都市と人より熊や鹿の方が多い田舎の桁違いの格差を生み出している。
鉄道初心者のいか男が、悩むのは当然なのだ。」
「いか男くん、みかんちゃんにもらった優しさをみんなに返すのだ。家族、友人、町の困った人、そしてみかんちゃんにもな。
見返りなど求めてはならん。
そうしていけば、いつかみかんちゃんも認めてくれるだろう。
いか男、最近いいとこあるじゃないっと。
ふん、お漏らしのいか男のくせに、どうして私、いか男のことこんなに気になるの、って具合になるやもしれぬ。
ただ、それには努力と時間が必要だ。
今のいか男には、その結論を求めるのはまだまだ早い。
時間は余るほどある。
いか男くん、応援しておるぞ。」
「でも、どうして電車トイレ地獄みたいな、重要な問題がほとんど取り上げられないのかしら。」
「今の日本では、おかしいことをおかしいと言う者が、何故かおかしな人と言われる。
病気やストレスで排泄に問題を抱える人、高齢者はどんどん増えている。
喫煙人口は減り続けているのに、何故肺がんは増えているのだ。
妙な力が働いているような気がするのは、わしだけではあるまい。
いか男くんの悩みは、おかしくも何ともない。
まだそうした力に侵されていない少年の、純粋な気持ちじゃ。
これから、ゆっくり自分に合った解決方法を探していくのがよいだろう。」
「はーい。いか男くん。
お悩みの参考になったかな。
華ちゃんも私もいか男くんを全力応援してますよ。
がんばって下さいね。
華子と夏子のお悩み相談室でした。
よいお年を!
風邪ひかないようにね!」
「すまん。今日はちょっと熱くなりすぎたな。
いか男くん、分かってくれただろうか。」
「きっと、伝わってると思う。
だって、たこ焼好きなたこ美さんの弟だもの。」
「そうだな、たこ焼好きなら大丈夫だな。」
「うんうん、、えっ、たこ焼って、マジっすか!」
「ふふふ、お前もいつかわかるだろう。
たこ焼の真の価値がな。」
「そうね、きっといつか分かるよ、たこ焼の真実が。
ただそれが今じゃないだけ。
がんばってね!春にいちゃん。」
〜ははははは〜
春二郎は、
たこ焼って、意味、真実、、、。
ぶつぶつつぶやきながら、駅前のたこ焼屋に向かう二人の後を追うのだった。




