第6話 いちごちゃんからのご相談〜いちごの不安な気持ち 後半その2
「と言ったものの、これを解決するのはチョモランマを海パンとサンダルで登るが如く、極めて厳しいのが現実だろう。」
「それって、ほとんど不可能じゃない。
絶望的ってこと?」
「そう悲しいが絶望的だ。
何故なら、世界の正義は一つではないからだ。
世界にはいくつもの正義が存在し、それぞれが自分の正義を信じ思想の王国を作っている。
王国は時には帝国となり、さらに、様々な利権も絡んで問題をより複雑化させている。
異なる正義を心から信じている者同士が、話し合いで問題を解決することは極めて難しいものだ。
戦争を回避するには、お互いが譲歩し合いながら、どこかで妥協点を見つけ折り合いを付けるしかない。
これが、大人のたしなみというものだ。
無用な殺し合いなど、お互いの為にならないことくらいは、普通に想像出来るからな。
ところが、最近、王国の王達は、そういうことは省略し、いきなりぶん殴るのが横行している。
何をそんなに焦っているのか、全く分からん。」
「それじゃ、解決策は無いってこと?」
「解決策になるかは分からんが、ヒントになる事象はある。
即効性については、正直難しいかも知れんが。
それは、日本が創造する、異なる正義を掲げる思想の王国を飛び超え、人々に、同じ感動、共感を呼び起こす力を持つものだ。
そして、それは思想の王国の堅固な壁を容易くすり抜けて行く。」
「何だろう?
日本の、異なる正義を掲げる人でも、世界中の誰もが感動、共感できる、、あっ、分かった!
あれね。」
「えっ、ひょっとして、あれっすか!
ワンコ、マジ、あれ、大好きっす!
大好物っす!はぁ、はぁ〜。」
「そこのワンコが考えてるのは、多分違うと思うがな。
そう、、日本が創り出す世界共通言語、アニメやマンガだ。
こういうと、悲惨な戦争の問題を考えるのに、そんな大衆カルチャーを持ち出して何事か!とか怒られそうだが、アニメやマンガの持つ力は、けして小さなものではない。
自らの思想を死守したい者にとって、アニメやマンガは紛れもなく重大な脅威だ。
排除しようとしても、じわじわと若者の中に浸透していく。
それは、数百年、数千年かけて築き上げた、堅牢な思想の王国を揺るがす力を持っているのだ。
アニメやマンガは、思想の王国に幽閉された者に、人類共通の根源的価値を気づかせる。
愛、勇気、友情、努力、勝利、自由、平和、家族、平等、そんな人間が求める当たり前の価値にな。」
「あの、人気コミック誌のテーマみたいだね。
確かに、今戦争をしている国でも、宗教やイデオロギーに関わらず、熱心なアニメファンとかいるよね。」
「そう、コスプレなどは、もはや人種や宗教も、イデオロギーも超越し、世界中で楽しまれている。
そして、アニメやマンガの普遍性をもたらしているのは、日本と日本人が持つ特異性だ。
ガラパゴスとも揶揄されてきた、日本人の持つ特異性が、アニメやマンガの普遍性を作り出している。
八百万の神、自然のあらゆる物、あらゆる事象、あらゆる場面、そこらかしこに神が存在する。
さらに、クリスマスやバレンタインデーを楽しみながら、神社仏閣を敬う、稀に見る多神教的寛容性が、アニメやマンガの自由な世界観に繋がっている。
そして、インターネットの普及により、世界中に浸透しているのだ。
わしは、アニメやマンガの日本的寛容性の浸透が、戦争を抑止する上で、果たす役割りがあるのではと考えている。
人類共通の根源的、普遍的価値。
これが、世界中に浸透して行くことで、戦争の愚かさを多くの人に気づかせる事が出来るのではとな。」
「でも、アニメやマンガの影響力だけじゃ、戦争を止めさせるような、強い影響力はさすがに無い気がする。」
「そう、それだけでは厳しいだろう。
そこで、わしは、日本があらゆる面でガラパゴス化を追求することを提案したい。
欧米の後を追うのではなく、自ら未踏の道を切り開き、真のガラパゴス国家になるのだ。
古い概念に縛られた思想の王国にただ追従するのは止め、政治、経済、文化、医療、サービス、エンタメ、食、報道、エネルギー、国防、何もかも我が道を追求するのだ。
クリーンな石炭火力発電、水素自動車、戦争には使えないAI、完全な政教分離、自然と共存する生活、薬に頼らない医療など、全てにおいて正しいと信じる独自の道を歩むのだ。
国防が心配なら、レールガンなど、ミサイルへの対応に全力を挙げて取り組む必要があるだろう。
日本にそんなもの撃つだけ無駄と、周囲に思わせるぐらいにな。」
「そんなことしてたら、世界から、おかしな国って爪弾きにされ笑われるかも。」
「そう、笑われてもかまわん。
しかし、戦争の片棒を担ぐよりはずっといい。
日本のお笑いも、アニメやマンガと同じような力を持っているしな。
それに、世界を同じ価値観で統一し、AIを使って厳しい監視社会を作ろうと企む連中への、強烈なアンチテーゼとなるやも知れぬ。」
「世界から、変わった国、変わった人々、まあ、日本だから仕方ないな、と評価される。
ちょっと気になって見に行くと、斬新で、独自性があり、安全で、美しく、寛容で、自由で、楽しい、でも、他の国とはだいぶ変わっている。
そして、いつか、世界の人々が、いいかも、うちの国もああなりたいと思う。
そんな時代が来れば、戦争をすることをバカなことだと、みんなが気づいてくれると思うのだが。
さて、どうかな。」
「うん、いいと思う。」
「ワンコも賛成!」
「はい!いちごちゃん。
ズバリの回答にはならなかったけど、参考にしてくれたら嬉しいです。
これからも、華ちゃんも私、そしてワンコも、いちごちゃんとつくしんぼくんを全力応援してますよ。
二人の幸せを祈っています!」




