表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ナンパ師の社会革命  作者: 肉じゃが男爵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/11

第9話 カレンの誘いと、モテ魔導士の試験


事件の翌朝。

王都セレノアの空は、昨日の混乱が嘘のように澄み渡っていた。


俺はギルド塔の客間で目を覚ます。

柔らかな陽光、漂う香草の匂い。

隣の部屋から、ルゥとミナの元気な声が聞こえてくる。


「おはよ、翔太!」

「もう起きた? 朝ごはん、ミナが用意してくれたんだよ!」

ルゥがパンを両手に持って笑う。


「ありがとな。ミナ、助かる」

「いいって。昨日は命の恩人みたいなもんだし」

ミナが照れくさそうに笑い、少し頬を染めた。


エリナは既に椅子に座り、祈りを終えたところだった。

「今日、ギルドの代表があなたに会いたいそうです。昨日の件で、正式な感謝と……あと、“依頼”があるとか」


「依頼、ね」

俺は思わず口元を緩める。どうせただの報告会じゃない。

昨夜の“共鳴リゾナンス”を見た者なら、俺に何かを求めるのは当然だ。


ギルド塔・上層階。

磨かれた黒曜石の床に、金の紋章が浮かんでいる。

中央に立つのは――あの女魔導士、カレン。


昨日と違い、今日は淡いグレーのローブをまとっていた。

彼女の冷たい美貌は変わらないが、どこか穏やかな気配をまとっている。


「来たわね。守川翔太」

「昨日は世話になったな。塔も綺麗になってるじゃないか」

「あなたのおかげよ。……それで、本題だけど」


カレンは軽く指を鳴らす。

周囲の空間に淡い光が満ち、金色の魔法陣が浮かび上がった。


「ギルド本部は、あなたを“仮登録候補”として認めたわ」

「仮、ってことは試験があるんだな?」

「ええ。“モテ魔導士”としての実力を証明してもらう」


ルゥが首をかしげた。

「モテ魔導士って、ほんとにそんな肩書きあるの?」

カレンが小さく笑う。

「正式には“魅力魔導士エンチャント・ソーサラー”。けど、俗称は……そう呼ばれてるわ」


試験の内容は――予想外だった。


「あなたの魔法、“共鳴リゾナンス”。

 あれが本当に人の心に作用するなら……この部屋にいる全員の心を、一時的に“穏やか”にしてみせなさい」


部屋には十数人のギルド員がいた。

中には不機嫌そうな男も、苛立った女魔導士もいる。

つまり、これはただの魔力テストではない。


“空気を読む力”を問われている。


「なるほど。人を惹きつける力の実証試験ってわけか」

「ええ。あなたの言葉と心で、ここを“和ませる”の」

カレンの瞳がまっすぐ俺を射抜く。試すような、期待するような眼差し。


俺は深呼吸して、ゆっくりと場の中心に立った。


「なぁ、みんな。朝から固い顔してるけど、疲れてないか?」

ざわ……と小さなざわめき。

「昨日は大変だっただろ? でも、無事に夜を越えた。それだけで、今日ってちょっと特別じゃないか?」


少しだけ笑みを混ぜる。

人の心を動かすには、“安心”のトーンを先に与えるのが鉄則だ。


「俺の世界じゃさ、“モテる”ってのは人気取りのことじゃない。

 相手を笑顔にできるかどうか――ただ、それだけだった」


俺は掌を掲げ、意識を集中する。

金色の光がふわりと舞い、空気が柔らかく変わっていく。


共鳴リゾナンス】。

相手の感情に共感し、優しさの波動を広げる魔法。


「ほら、少し息を吐いてみな。

 昨日の怒りも、今日の不安も……ちょっとだけ置いていこう」


淡い光が人々を包み込む。

険しかった顔が少しずつ和らぎ、やがて静かな笑みが広がった。


沈黙。

そして、最初に口を開いたのはカレンだった。


「……成功ね」

彼女の声には、わずかな驚きと――敬意が混じっていた。


「あなたの魔法は、“言葉”を核にしている。

 精神干渉系だけど、強制じゃなく“共感”を媒介にしている。……まるで、愛そのもの」


「それ、最高の褒め言葉だな」

俺は笑って手を下ろす。


エリナが優しく微笑む。

「本当に、あなたらしい魔法ですね。

 争いではなく、心を癒やす……“魅力の力”」


ミナは腕を組んでうなずいた。

「うん、確かに。あんたの話、聞いてると落ち着くんだよね」

ルゥも笑顔で言う。

「なんか、胸のもやもやがなくなったよ!」


カレンが一歩、俺の前に進み出た。

「正式にあなたを“魅力魔導士”としてギルドに登録するわ。

 ただし――条件が一つ」


「条件?」

「これから行く“カスティア山脈”の調査に同行して。

 あそこには、古代の“共鳴石”がある。あなたの力に、何か関係があるかもしれない」


「共鳴石……」

俺の胸が高鳴る。自分の魔法の起源に関わるかもしれない。


「わかった。行こう。――俺のモテ修行の続きだ」


ルゥが元気よく拳を上げる。

「わーい! また冒険だね!」

エリナは微笑んで肩をすくめた。

「ほんとに、落ち着く日がありませんね」

ミナが笑いながら荷物をまとめる。

「ま、翔太がいると退屈しないからいいけどね」


カレンがわずかに笑みを見せ、静かに呟いた。

「あなたの“モテ”が、この国を変えるかもしれないわね」


「それ、悪くない褒め言葉だ」


俺は肩をすくめながらも、心の奥で確信していた。

――モテるほど、世界は救える。


それが、この世界の真理なんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ