第11話 共鳴魔法・初陣! 魅力は刃となる
洞窟の奥から、四足の魔物が唸りを上げて姿を現した。
狼に似ているが、体格は倍近く、背に黒い棘がいくつも並んでいる。
「っ……“棘狼”ですね!」
エリナがすぐに警戒態勢に入る。
「うわ、来た。絶対強い系じゃん、あれ」
ミナが荷物を背負ったまま後ずさる。
ルゥは炎の紋章が刻まれた腕を押さえつつ、表情を引き締めた。
「魔力、ザラついてる。普通の狼じゃないね。気をつけて」
カレンは眉を寄せ、周囲をすばやく見渡す。
「共鳴石に吸い寄せられたのね……数は八体。厄介よ」
洞窟の空気が張り詰めた。
俺は歩み出て、胸の奥に残る金色の余韻を感じる。
(……来いよ。試してやる)
◆ “魅力指数”の上昇が、力になる
「翔太さん、魔力が……かなり増えてます!」
エリナの声は驚きと安堵が混じっていた。
「マジか。やっぱ俺、いまイケてる雰囲気出てる?」
「はい。以前と比べて、かなり……!」
ミナが目を細める。
「どことなく“頼りがい”っぽくなってるよ、アンタ。ちょっとだけだけど」
「そこ“ちょっとだけ”を強調すんのやめない?」
「事実でしょ?」
するとルゥが隣で腕を組んだ。
「うん……さっきより、光の揺れが安定してる。
……強くなってるよ、翔太」
その目は幼くはない。
素直で、まっすぐで、信頼の色が宿っていた。
「よっしゃ、信頼評価いただきました!」
魔力が一段階はね上がる気配がした。
◆ 初の“共鳴魔法”発動
棘狼が一斉に飛びかかってくる。
俺は息を吸い――
掌を突き出した。
(ナンパは“最初の3秒”で勝負を決める。
相手をひるませ、注意を奪う。
それが俺の十八番だ)
「――共鳴魔法!」
黄金の光が弾け、洞窟内に柔らかな衝撃が走る。
飛びかかっていた棘狼が、一瞬で動きを止めた。
「止まった……!?」
ミナが驚く。
カレンが目を細め、分析する。
「精神の反応域を一瞬空白にした……攻撃魔法として完成度が高いわね」
「いや、なんとなく出てきただけなんだけどな!」
動きが止まった今が好機。
◆ “好印象操作”の応用攻撃
(警戒心を解く視線の角度。
一歩踏み込む“位置取り”。
相手の攻撃性を中和する“空気づくり”。
全部、応用してやる)
俺は踏み込み、手のひらを前に走らせた。
「――共鳴魔法!」
柔らかな金光が広がり、棘狼たちの殺気がふっと消えていく。
次々とその場に崩れ、眠るように倒れ込む。
「す、すごい……無力化してる……!」
エリナが息をのむ。
「魅了魔法なのに、ここまで強く……あなた、やはり異質ね」
カレンの声に興奮が滲む。
ルゥは肩の力を抜きながら、少し笑った。
「……やるじゃない。
こんな魔法、見たことないよ」
その言葉に胸が熱くなった。
「まあな。モテ力ってやつは万能なんだよ」
◆ 奥から“もうひとつ”の気配
沈黙が戻った洞窟に、重い空気が流れた。
カレンが杖を構え、険しい表情を浮かべる。
「まだよ……一体、強いのがいる」
「マジか……!」
ミナが顔をしかめる。
「いや、もう十分でしょ!? どんだけ呼び寄せてんのよ!」
エリナは震える声で呟いた。
「この気配……棘狼とは別種です」
ルゥが洞窟の奥をにらむ。
その瞳は揺れていない。
「来るよ。覚悟して」
影がぬっと姿を現した。
巨大な黒い獣。
角が歪み、目は血のように赤い。
「……“黒角獣”。
この辺りの主よ」
カレンが低く告げた。
その巨体は、俺をまっすぐ見据えている。
「……俺の魔力を狙ってるな」
「翔太さん、無茶だけは……!」
エリナが心配そうに一歩近づく。
俺は逆に、前へ出た。
(ビビってねぇよ。
守りたい仲間がいるからな)
拳を握る。
「よし。モテ力見せてやるか」
黒角獣が咆哮した。




