034 白光の「許し」、黒雷のあとで
魔法少女に変身したセーラに、兵たちは一斉に凍りついた。
聖女皇として人族の希望と讃えられていた彼女が、今まさに禁忌とされる『魔女』として降臨したのだ。
その姿に兵士たちは声を失い、その場に膝をつく。呆然としながら、彼女が魔女に突き進んでいく背中を見つめた。
――――――――――――
セーラはアイオスが閉じ込められた球体に駆け寄ると、拳を振り上げ、反魔族粒子を拳に纏い、振り下ろした。
バキッ、と音を立てて拳が当たると、漆黒の球体は粉々に砕け散り、アイオスを解放した。
アイオスはセーラを見た瞬間、周囲を見渡して愕然とする。
多くの兵士たちが見守る中、彼女は魔法少女に変身した。それは戦いが終わったあと、セーラが教会に糾弾され、裁かれる――
――嫌でもアイオスは悟る。
「おい、なぜ逃げなかった。俺は逃げろと言ったはずだ。それに、なんだその格好は……。こんな大勢の前で、どうするつもりだ!」
顔を歪めてアイオスが責めると、セーラはどこか気まずそうな顔で淡々と答える。
「……逃げようとは思ったんですよ。でも、それこそ周りに見られてました。逃げたら逃げたで、教会から処罰されそうだったので。それに最後まで、好き勝手に生きてやろうと決めていました。
何より私の約束を守ってくれたアイオス殿下を見殺しにするのは、ちょっと、……あれかな、と思いまして」
その言葉に納得できず、アイオスは彼女を睨みつける。
――なぜ逃げなかったのか、なぜ言うことを聞かなかったのか。
そんな批判が滲む眼差しに、セーラは視線をそらし、ばつが悪そうに笑みを浮かべた。
そして、静かに右手をかざし、傷だらけのアイオスに聖魔法を施すと、清らかな光が彼を癒した。
セーラはアイオスを見て頷くと、魔女へ向き直り、手を出さず待っていたことに礼を述べた。
魔女はただ、魔法を拳で打ち砕いたセーラを警戒していただけだ。それでも彼女は感謝していた。
やがて強化魔法をかけたセーラは、閃光のように魔女へ突進した。大鎌が振り下ろされるよりも早く、拳を魔女の鳩尾にめり込ませた。
魔女は後方へ吹き飛ばされるが、すぐに左手を突き出して魔法を発動。黒い閃光が迸る。
セーラは避けることなく、拳で閃光を叩き落とすと、瞬時に魔女の背後へと回り込む。いまだ宙に舞う魔女を蹴り、上空へ飛ばした。
空高く舞う魔女はセーラを睨み、大鎌を振り下ろす。その一撃は届く距離ではなかった。だが、切っ先は空間に吸い込まれると、セーラの背後に出現した。
それを見透かしていたかのように彼女は半身となり、魔女の奇襲を回避すると、臆することなく刃を掴み、右手を天に高く掲げた。
「ブラックサンダー!!」
刹那、空が裂けて漆黒の雷がセーラの右手に落ちる。それは彼女の体を伝って、大鎌で繋がっている魔女の体内へ流れ込んだ。
凶悪な電流が内側から焼き尽くした。魔女は白目を剥き、黒い煙が口から上がる。彼女は力尽き、大鎌を離し、どさりと地面に落ちた。
もはや、魔女に反撃する力はなかった。反魔族粒子を多量に含んだ電流によって臓器は焼かれ、瀕死の状態だった。
誰の目にも、勝敗は決したかのように見えた。
――そのときだった。
魔女の左手に刻まれた紋章が突然、柔らかな白光を放ち始めた。
白い光はゆっくりと彼女の全身を包み込み、穏やかな気配が満ちていく。
そして、それは崩れかけていた魔女を――『許す』かのように、優しく抱いていた。
光から管理者の気配が滲み、かすかに声が響いた。
『……セーラ、この子を救ってくれて、ありがとう』
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