023 号砲は鳴り、神界は降りる
なぜか急に沈んだ表情を見せるアイオス殿下に、何と声をかけるべきか考える。
だが、そもそも彼がなぜ落ち込んでいるのか分からない。だから言葉も見つからない。
――何か傷んだものでも食べたのだろうか。
仕方なく聖魔法で殿下の腹痛を治してあげようと手をかざした――そのとき、魔族が進軍を開始した。
目の前に迫る軍勢。これまでの戦争とは異なり、空を飛ぶ者と地を這いずる者――多種多様な魔族で構成されていた。
慌てて腹痛で苦しむアイオス殿下に回復魔法をかけ、目で出陣の号令を訴える。
視線の意図に気づいた彼は、すぐに音声拡張の魔道具を握り、全軍へ突撃を命じる。兵たちは大声で応じ、一斉に前へと押し出した。
さっきまで沈んでいた殿下が、急に覇気のこもった大声で命令を下す姿を見て、魔法が効いたのだと分かり、安堵の息を吐く。
そして、もう腹痛はないだろうが、念のために一言釘を刺しておく。
「……アイオス殿下、貴方は大国の皇太子です。あまり、戦争の前に食い意地を張るのは、いかがなものかと」
「すまん、ちょっと何を言っているのか分からん」
どうやら殿下には言葉の意味が通じなかったらしい。
もしくは十九歳の成人が、傷んだものを食べて腹痛を起こしたなどという失態をごまかしているのかもしれない。
――まあ、私としては腹痛さえ治まり、ちゃんと指揮を執ってくれれば、それで問題ない。
あえてそのあたりを深掘りする気にもならない。というか、そもそもそんなことに付き合っている暇はないし、面倒くさい。
「おい、何か失礼なことを考えていないか?」
「……いいえ、何も」
色々と問われそうな気配を感じ取った私は、さっさと特級の聖魔法を発動することにする。
「神々の領域」
進軍する兵たちの前方を見据え、戦場となる場所を見定めると、その一帯を神々が住まう神界へと書き換える。
その瞬間、景色は一変する。
女神たちが天を舞い、天使たちが祝福の歌を奏で、聖獣と神獣が光をまとうようにして並び立つ。
中央の金色の玉座には最高闘神アポロが鎮座し、魔族の群れに鋭い視線を投げかけていた。
まさに伝説のオンパレードとでも言うべき荘厳な光景が広がっていた。
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