020 聖女皇、裁判に立つ
「信じてください! 私は魔女ではありません!!」
もはや日常と化した魔女裁判。今日もまた一人の女性が、いわれなき罪によって裁かれようとしていた。
セーラが魔女の刻印を刻まれてから、すでに三年が過ぎている。その間に魔女の疑いをかけられ、裁判を受けた女性は、すでに百人を超えていた。
「お待ちください、裁判長! その女性は魔女ではありません!」
「また君か、セーラさん。しかし、その額にある刻印がなによりの証拠じゃないか」
法廷で身体を拘束され、首を垂れる女性の前にセーラが立ちはだかり、魔女ではないと訴える。
だが、裁判長を務める大司祭ジークは、つまらなそうに彼女を一瞥すると、女性の額を指差し、冷たく訴えを退けた。
「その女に刻まれた刻印は、治癒魔法や清浄魔法でも消すことができなかったんだ。それに、その顔は忘れようがない。魔王ドラキュラとの戦いの中で、僕が命を懸けて刻印したんだから!」
ジークは三年前、魔族との戦争のさなか、教会からの密命を受け、聖遺物<創造主の神判>を用いて魔女の捕獲を任されていた。
しかし、セーラの魔力はあまりにも強大で、ジークが全魔力を注ぎ込んでも、刻印を刻むのがやっとだった。
それまで教会が把握していた魔女の情報は、容姿だけだったため、多くの冤罪を生む原因となっていた。
そのため魔女の捜査と捕獲は困難を極めていた。
だが、ようやく確実な証拠である「刻印」を得た教会は、世界中の国々に協力を呼びかけ、本格的な捕縛活動を開始した。
その結果、数多くの女性たちが捕らえられ、裁判にかけられた。
しかも、その全員が出世や褒賞を目当てに捕縛した穢れた聖職者たちの犠牲者にすぎなかった。
彼らは証拠である刻印を偽造し、罪なき女性たちを魔女に仕立て上げて連日、裁判所に送り込んだ。
「そうですか、確かに、彼女の額にある刻印は特別なもののようですね」
「君もそう思うなら、引っ込んでもらおうか、聖女皇セーラ様」
彼は皮肉と嫉妬を込めてその称号を口にする。
セーラはこの三年間、あらゆる魔族との戦争に参加し、目覚ましい戦果を挙げてきた。
もはや『大聖女』の地位さえ彼女にはふさわしくないとされ、伝説上の称号にすぎなかった『聖女皇』の位が正式に与えられたのである。
その地位は教皇に次ぐ、教会内で実質第二位の権威を持つものだった。
本来ならジークのような発言は到底許されるものではない。
だが、ここは彼の管轄する裁判所であり、二人はかつての同級生という間柄もあって、かろうじて黙認されていた。
「いいえ、聖女皇として、罪なき者を見過ごすことはできません!」
ジークから「職務の妨げだ」として退場を促されるセーラだったが、彼の言葉に首を横に振って、魔法を発動する。
「最光神の裁断」
セーラが天に向かって祈りを捧げると、突如、魔女の疑いをかけられた女性に神々しい光の柱が降り注ぐ。
彼女の魔法の前では、名ばかりの聖職者たちが施した偽の刻印は無意味だった。術式は反転する。
光は拷問で負った女性の傷を癒し、額に刻まれた刻印をきれいに消し去った。その光景を目の当たりにした傍聴人たちは、驚きと敬意を込めて口々に呟く。
「またセーラ様が奇跡を起こされ、罪なき者を救ってくださった」
彼らは次々に膝をつき、神ではなく、目の前の『聖女皇』セーラに祈りを捧げた。
ジークは自分に背を向け首を垂れる群衆を見やる。その瞬間、彼の目が細まった。
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