015 聖母神の慈雨
不死王の先兵たちに蹂躙される世界連合軍。私は先の大戦を上回る広範囲の聖魔法・聖母神の慈雨を発動し、癒しの雨を降らせた。
次の瞬間、ゾンビやグールは一掃され、味方の騎士たちには聖属性の加護が与えられた。
その効果によって戦況は一変して、連合軍は魔族を押し返していく。
余裕が生まれた騎士たちは、「傷を癒して聖なる力を与えてくれた」と私に感謝を伝えてきた。
だが、実際には反魔族粒子をばら撒いただけで、治癒効果はほとんどない。
もちろん、わざわざ訂正するつもりもないので、笑顔で軽くお辞儀をして、そのままアイオス殿下がいる後方部隊へと下がることにした。
「大した人気者だな、魔女殿」
「何を言ってるんですか、『タキ○ード仮面』様」
殿下の首に下がるロザリオを見つめながら、夢にまで見た『イケメン助っ人』を手に入れた喜びに、つい満面の笑みを浮かべてしまう。
すると、殿下は露骨に嫌そうな顔でこちらを睨んだ。慌てて表情を戻す。
あのロザリオは、前の大戦で討伐したデスドラゴンの魔核を万能魔法で作り上げた力作だ。
――正直、あれほど完璧に変身するとは思わなかった。
魔王の魔核は、万能魔法と相性がよかった。私の魔力に抵抗なく馴染み、複数の魔法を付与することができた。
前世で学んだマテリアル工学が役に立った。けれど、管理者は大きな変化を嫌い、チートになるほどの知識は残してくれなかった。
それでも記憶は残っている。だから私はこの世界の常識に縛られず、様々なことに挑戦することができた。
夢だった『魔法少女』にもなれたのだから、もうこれ以上望むのは罰当たりというものだ。
「おい、セーラ。俺を『タキ○ード仮面』と呼ぶのはやめろ。意味はよく分からんが、どうにも嫌な予感がする」
「いやです、私がリスペクトするもうひとつのアニメに出てくる大好きなキャラなんで、それはできません」
「……いや、本当に何を言っているのか全然分からん」
混乱する殿下を見て、これ以上意味不明な言葉を出すのは控えて口を閉ざすと、ずっと心の中で引っかかっている問題について考える。
(このまま『プリ○ュア』でマックスなハートのまま突き進むべきか。それとも、せっかく手に入れた『イケメン助っ人』を活かし、『セーラームー〇』で「月に代わっておしおき」した方がいいのか……)
――究極の選択に悩んでいると、前線から多くの悲鳴が届く。
振り返り、遠くを見やる。そこには屈強なアンデッドが並ぶ本隊を引き連れて突撃を仕掛ける不死王ドラキュラの姿があった。




