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21)溢れる願い

やっとエブァンの登場。

お待たせしました。


光を反射して宝石のように輝く銀髪、雪のように白い艶やか肌。

ヨモギを抱き上げた人物は一見冷たく見える造形を崩し、こちらが恥ずかしくなるほどの優しげな笑顔を浮かべる。


……嘘。

だって、エブァンは事後処理に追われてお城から出られないはず。

メラから詳しく話を聞いたことで、候爵の位を持つ貴族を失脚させた代償は大きいのは容易く想像できる。


それでも様子を見に来てくれた。


胸がかっと熱くなり、押さえきれない感情のせいで叫びたくなる。

思考は停止し、心臓が暴れ、身体が熱を持つ。

涙腺が緩むのを必死に食い止めるために指の先が真っ白になるほど窓の縁を握りしめた。


嬉しい。

様子を見に来てくれたことが。

忙しい中会いに来てくれたことが。


そしてなにより――やっと、会えたことが。


アマンダを起こさないよう音をたてないように注意して慎重に外に出る。

春になって久しいとはいえ、さすがに夜は少し肌寒い。


「チズ!!」


ドアを開けると待ち構えていたエブァン強く抱き締められた。

子供特有の高い体温が、肌寒さを忘れさせてくれる。

一瞬背中に手を回すのを躊躇ったが、抱き締めたい衝動に抗えず、思うがままエブァンを抱き締め返す。

苦しいほど抱しめる腕の感触が心地いい。


――このまま時が止まってしまえばいいのに。


肩からくぐもった声で「無事でよかった」という呟きが聞こえた。

エブァンにも随分心配をかけてしまったらしい。


嬉しくて高揚しそうになった気持ちを、ふんわりと香るムスクの爽やかさが急激に冷ます。

平民には縁がない香水の香り。

私とエブァンの立場を思うと辛くて泣きたくなる。

エブァンに抱き締められて幸せなのに、胸が張り裂けそう。


「守れなくてごめん。危ないめにあわせたくはなかった」


ミリクから前にも聞いた台詞にくすりと笑みがもれた。

元を正せば私に原因があるのに皆、優しすぎる。


「心配してくれてありがとう、忙しいのに会いにきてくれて嬉しかった」

「チズがいなくなってすごく心配した。あの時、無理矢理にでも王宮に連れていけばよかったと何回も後悔した。そしたら、こんな思いはしないですんだのに……」

「そんなこと言わないで。今回は色々あって、心配させて悪かったけど誘拐されてよかったと思っているの」


背中に回していた手をエブァンと私の間に割り込ませて目をまっすぐと見つめる。

誘拐されてからあった事、思った事。包み隠さずすべてエブァンに伝えた。

エブァンは最初、眉をよせて厳しい顔をしていたが、段々と優しい表情に戻っていく。


エブァンは私より年下だけど、育ちのせいなのか時々年上かと錯覚するほどの包容力を感じる。

だから私はエブァンに甘えすぎるのかもしれない。

今もそうだ。


「私、今までずるずると逃げてきたけどアマンダとの関係を清算しようと思うの。今まで怖くてできなかったけど私はサラじゃない、私は私だって痛感したから。それに私はもう一人じゃないもの」


エブァンはとろけそうな笑みで私を甘やかす。


「うん、よく決心したね。これからチズが辛いときには私を頼ってほしい。私にチズを支えさせてほしい。辛いことも悲しいことも私と共有させてほしい。もうこれ以上チズが辛い目に会わないように私が守るから」


いたわるような目で見つめられ、頬にそっと手を添えられた。


「よく、頑張ったね」


嬉しさに気持ちがはちきれそうになって耐えていた涙が頬をすべり落ちた。

エブァンには涙を見せてばっかり。

エブァンの前では必死に作り上げた虚勢をあっさりと剥ぎ取られる。

これ以上泣きたくなくて、ぐっと目尻に力を入れて涙を止めようと試みる。

乱暴に涙を拭ってくしゃくしゃな顔のまま今出来る精一杯の笑顔をつくった。


「ありがとう」


エブァンは安心したのか腕の力を緩めてまともに直視できない笑顔のまま頷いた。

ふと、まだ抱き締められていたことに今更思い立って腰に回されている腕をやんわりと外そうとすると、表情を一転させて少年のような無邪気な表情でにやりと口角を上げた。


「そういえば前、チズに奇跡を見せてあげるって言ったよね?」


突然のことに目が点になりつつもかろうじて返事をした。


「……うん」


エブァンの手が鎖骨に触れて、前にされたことが頭を過ぎり顔に熱が集中する。


……そういえばキスマークつけられたのよね


「チズがとらわれている間に19歳になったんだ。もうそろそろ隠れて暮らすにも限界がきてるし、妃も迎えないといけない」


辛うじて頷いて、心臓をぎゅっとつかまれたように苦しくなった胸を押さえた。


――大丈夫、きっとこの気持ちは忘れられる。

アマンダとのことが決着がついたら私は元の世界に帰るってきめたもの。

元々私とエブァンがどうにかなることはないもの。大丈夫。


「私もチズに見習って、先送りにしてきた問題に向き合おう思う」


意を決して顔を上げようとすると、エブァンの手で目を覆い隠され、腰を引き寄せる力が強くなった。

胸の辺りに髪の感触とエブァンの肌の感触。

そしていくらも経ってないうちに鎖骨にチクリと虫にさされたような痛みがする。


え、なに!?どうなっているの??


目をふさがれているのでエブァンの様子が分からない。

訳も変わらずパニックになっているうちに浮遊感がして堪らず目を覆っている手を引き剥がした。


文句を言うためにエブァンを睨みつけようとして思考と身体が完全に停止した。


目鼻立ちがくっきりした顔には少年のような柔らかい線は一切なく、シャープなラインを描きだしていた。

サラサラの銀髪や雪のように白い肌は変わっていないが、影ができるほど長い睫毛に縁取られている切れ長のグレーの目、絶妙といっていいほど低すぎず、高すぎない鼻筋の通った鼻など、パーツの美しさは神様が創った最高傑作のよう。


私を抱き締めている人外の美貌をもつ青年は誰ですかー!?




甘々目指したんですけど糖度はどうでしょうか??

これから千鶴ちゃん大変だと思います。

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