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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第三章

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95.夜陰

 ヴィラレス砦上空。


 青い竜が上空で旋回していた。


 青竜の総体が青白く輝いた。


 直後、空に巨大な魔法陣が出現。

 魔法陣が青白く輝いた瞬間、魔法陣から雷が放たれた。


 雷は、ヴィラレス砦に落ちた。

 天を裂くほどの轟音。

 激しい雷鳴。閃光、稲光。


 ヴィラレス砦は、混乱に陥った。

 兵士たちが慌てて建物から飛び出し、何事かと騒ぎ立てる。


 落雷は一度だけでは終わらなかった。

 空に輝く巨大な魔法陣から、断続的に雷が放たれる。


 雷は建物を破壊し、地面を抉り、兵士たちを吹き飛ばした。


 阿鼻叫喚。兵士たちは恐慌状態に陥る。


 青竜は機を見逃さなかった。


 青竜は急降下を開始。

 両翼を広げ、地面に向かって落下を始めた。


「竜だ!」


 兵士たちは青竜の姿を視認した。

 武器を握り迎撃の構えを取る者もいたが、ほとんどの者は唖然と空を見上げるか、逃げるかだった。


 青竜は地面スレスレまで降下し、両翼を勢いよく羽ばたかせた。

 暴風が発生し、近くにいた兵士たちを吹き飛ばす。


 青竜に向かって魔術や矢が飛ぶが、青竜の硬い鱗はそれらを全て弾いた。


 青竜はヴィラレス砦に甚大な被害をもたらした。

 勇気ある兵士は青竜と戦う覚悟を決めていたが、次の瞬間、その気勢が削がれた。


 青竜は空へと上昇を開始。

 翼を激しく動かし、あっというまに大空へと消えていった。


 兵士たちは呆気に取られる。


 嵐のように現れ、嵐のように去っていった青竜。

 その様は、生物というよりは災害。

 あれこそまさしく最強の生物。


 青竜が去ったあと、上級兵は素早く指示を出した。

 まずは被害の確認。怪我人と死者を正確に割り出さなければならない。

 それと同時に、副司令官に指示を仰ぐ必要がある。

 いずれにしても、青竜の再来に備えた防御陣の構築は必要だろう。


 兵士たちは慌ただしく動き出した。


 ヴィラレス砦は混乱の最中にあった。

 それゆえ、気付くものはいなかった。

 青竜の背中から二人の男が飛び降りていたことに。


 アルゴとザムエルは地面に降り立ち、気配を抑えて行動した。

 闇に紛れ、目的地へと目指す。


 ヴィラレス砦は中央に司令部が配置されており、その司令部を囲うように四つの建物が存在する。

 東西南北に配置されたその建物は、兵舎と訓練所を合わせた造りになっていた。


 アルゴとザムエルが目指すのは、西側の兵舎だ。

 その兵舎の地下に、罪人が囚われている。

 この情報も黎明の剣によってもたらされた情報だった。


 夜陰に乗じて砦内を駆ける。

 アルゴとザムエルは黒い外套を纏い、闇に溶け込んでいた。

 この時点では、アルゴとザムエルのことを気にする者はいなかった。



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 西側兵舎の一階は、訓練場になっていた。

 仕切りが一切取り除かれた広い空間だった。


 アルゴとザムエルは一階奥の扉を開けて、地下へと下りた。

 地下へと続く階段を下りる途中、兵士と鉢合わせた。


 兵士は声を上げる。


「何だ、お前たちは!」


 アルゴは素早く動いた。

 兵士の懐に潜り込み、鳩尾に右拳を叩き込む。

 その後、間髪入れず顎先にも一発。


「うッ……」


 兵士は意識を失い倒れ込んだ。


「行きましょう!」


 そう言ってアルゴは駆け、ザムエルはそのあとに続く。


 地下へと辿り着き、アルゴは周辺を確認。

 地下はしんと静まり返っていた。

 見張りはいない。青竜が暴れたお陰で、大半の兵士は持ち場を離れているようだ。


 地下には牢屋が幾つも並んでいた。

 牢屋を一つ一つ確認。


「おい! あんたら、ここから出してくれ!」


 見知らぬ囚人に声をかけられたが、それを無視。

 少し気の毒には思うが、こちらに余裕はない。


 そして見つけた。

 ザムエルが声を上げた。


「ランドルフ!」


 牢屋の中に巨体の姿があった。

 ランドルフ・オグエン。巨漢の魔族だ。


 ランドルフは、両腕に枷を嵌められていた。

 その枷には鎖が付いており、鎖の先は天井に繋がっていた。

 ランドルフは、両腕を天井から吊るされた状態で眠っていた。

 全身傷だらけだった。おそらく酷い拷問を受けたのだろう。


「うん?」


 ランドルフが目覚めた。


「お、おお! ザムエル! アルゴ!」


「ランドルフ! 脱出しますよ! 自分で動けますか!?」


「動ける……が、この枷をなんとかしなければならん。この枷が俺の魔力を抑え込んでいて力が出せんのだ。お前ら、鍵は持っているのか?」


「それなら問題ありません。アルゴ殿」


「はい」


 呼吸を整えて集中を開始。

 その後アルゴは魔剣を抜いた。

 素早く魔剣を振る。


 一太刀で檻を切断。

 続いて、魔剣を二度振る。


 ランドルフの両腕に嵌められた枷は、あっけなく切断された。


 自由になったランドルフは、信じられないといった表情をしていた。


「アルゴ、お前……本当に人間か?」


「時間がありません。ランドルフさん、リューディアさんとチェルシーさんの居場所は分かりますか?」


「あ、ああ……その二人なら、中央にある司令部にいる。という情報を兵士から聞いた」


「司令部……ですか」


 アルゴはザムエルと目を合わせた。


 ザムエルは言う。


「ここまで来て諦めるという選択肢はありません。行きましょう!」


「はい!」


 三人は走り出した。

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