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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第二章

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36.小間物屋

 小間物屋ダマンヤートは、主に魔物の皮やツノなどを加工した商品が売られていた。

 革の小物入れや、ツノを装飾した飾り。骨や目玉を乾燥させてすり潰した肥料などだ。


 ダマンヤートは目立たない場所に存在し、どこか人を寄せ付けない雰囲気があるが、意外なことにそれなりに繁盛していた。


 客足が途絶えない。

 しかし、フエルコは客に笑顔を見せることもなく、愛想を振りまくこともない。

 客に何か訊かれれば答えはするが、それ以外は帳簿とにらめっこをして過ごしている。

 もしかすると、フエルコのその無関心な態度が、寧ろ心地良さを作り出しているのかもしれない。


 メガラはカウンターの奥にある業務室から、こっそりと店内の様子を覗いていた。


「ほう、なかなかの賑わいではないか」


 と独り言を言って考える。

 なるほど、フエルコはゴロツキどもにとっては格好のカモだな。

 それなりに稼いでいて、脅しやすい気弱なフエルコ。

 目を付けられるのには理由があるというわけだ。

 だが、だからといってゴロツキどもの正当性は微塵も存在しない。


 ゴロツキどもの理屈は、どう考えても道理に合わない。

 何の権利があってみかじめ料を寄越せと言うのか。


「ゴロツキどもめ」


 と、いつの間にか熱くなっていることに気が付いた。


「いかんいかん。熱くなるな」


 熱くなってもろくなことがない。第一、自分のことですらないのだ。


「おーい、メガラ。こっちこっち」


 部屋の奥からアルゴの声が聞こえた。


「どうした?」


「これこれ」


 そう言ってアルゴは、服の内側から包み紙を取り出した。

 包み紙には、小さな焼き菓子が幾つか入っていた。

 昨日別の商店で購入した焼き菓子だった。


「一緒に食べよう」


 アルゴはニッコリと笑い、テーブルの上に包み紙を広げた。

 これからゴロツキどもとやり合おうというのに、アルゴは暢気だった。


 メガラはそれを見て脱力した。

 怒りの感情は完全に消え、笑いが込み上げてくる。


 メガラは吹き出しそうになるのを我慢し、あくまで冷静に返した。


「頂こう」



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 夕暮れとなり、本日のダマンヤートの営業は終了した。


 集金係は営業後にやってくる。

 鋭い目つきをした若者だった。


 その若者は、店内に入るなりフエルコに向かってぶっきらぼうに言った。


「おい、今月分を寄越せ」


 フエルコは従順だった。


「は、はい」


 と言って子袋を差し出した。

 若者は子袋に入ったルグを数え「よし、いいだろう」と言って店内から出ようとする。


「ま、待ってください」


 わずかに震えながらフエルコが声をかけた。

 若者は不機嫌な顔をフエルコに向けた。


「なんだ?」


「え、ええ。実はですね、そちらさん方のお仲間になりたいって者が居まして……」


「はあ? 仲間だと?」


「え、ええ」


 フエルコは業務室に向かって呼びかけた。


「お、おーい! アルゴくん、リューディアさん!」


 名を呼ばれ、アルゴとリューディアは奥の部屋から姿を現した。

 二人が現れたことを確認し、フエルコは若者に言う。


「この二人なんですが……どうでしょうか?」


 若者はアルゴとリューディアをじっくりと眺めた。

 そして、しかめっ面を崩さずに言う。


「お前ら余所者だな? どういうつもりか知らねえけどな、舐めてると殺すぞ」


「そ、そんな! 決してそんなつもりでは!」


 フエルコが慌てて弁解した。

 表情が更に険しくなる若者の様子を見て、フエルコが弁解を続けようとした時だった。

 リューディアが動いた。


 リューディアは弾けるような笑みで、若者の両手を握った。 


「だめかしら? 確かに私たちは余所者だけど、きっと役に立つと思うわ。もし使えなかったら、すぐに追い出して貰っても構わない。だから、ね?」


 美しいエルフに笑顔を向けられて、冷たく突き放せる男はそうはいない。


「あ……ああ」


 若者は赤くなった顔をそむけた。


「わ、分かった。けどよお、俺には判断できねえ。アニキの元まで案内するからついてこい」


 そう言って若者は歩き出した。


「ありがと」


 若者の背に向かって、リューディアが礼を述べた。

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