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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第一章

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28/250

28.尋問

 アルゴは場所を変えていた。

 アルゴは現在、人通りのほとんどない路地裏に居る。

 理由は目立つから。どうしたって人の目を引く。


「―――ぐぶッ!」


 言葉として意味を持たない声が聞こえた。

 その声を放ったのは、狂獣ヴァルナー・ルウ。


 ヴァルナーは既に戦意を喪失している。

 ヴァルナーの顔は大きく腫れあがり、牙の何本かが折れ、鼻と口から血を流している。


 アルゴは馬乗りの状態で、ヴァルナーを殴り続ける。

 冷たい目で、感情の薄い相貌で、拳を振るい続ける。


 アルゴの拳がヴァルナーの顔面に炸裂。

 鼻血が飛び散り、ヴァルナーは呻き声を上げた。


「ま、まっへ―――」


 ヴァルナーの懇願を無視し、アルゴは殴る。


「ぐぶッ!」


 また妙な呻き声が聞こえたが、構わず殴る。


「げぶッ!」


 少し呻き声が変わったなと思いながら、また殴る。


「くふぅ……」


 ヴァルナーの口から漏れたのは、もはや声ではなく息。

 声を上げることすら難しい状態だった。

 それでもアルゴは容赦しなかった。右拳を振り上げた。

 拳の側部がヴァルナーの顔面に命中する直前、少女の声が響いた。 


「そこまで!」


 アルゴはピタッと拳を止めた。

 拳が止まったことを確認し、メガラは言う。


「アルゴよ、そこまでだ。それ以上は殺してしまうぞ」


「ああ、そっか。ごめんメガラ」


 メガラはヴァルナーに近付き、腰を下ろした。


「ヴァルナーよ、真実を話せ。真実を話せば見逃してやろう」


 ヴァルナーは、ここぞとばかりに大声を上げた。


「わ、わがっだ! はなず、はなずがら、もう!」


「ふむ、よい心がけだ。では訊くぞ。商人ホアキンを殺したか?」


「ぞ、ぞれば……」


「どうした? 答えないのか? ならばアルゴよ―――」


「ま、まっべぐれ! はなず!」


「では話せ」


「ご、ごろじでない! ほんどうだ!」


「ほう。ではその水晶のペンダントは何だ? 殺して奪ったのではないのか?」


「ちがう! ご、ごろじでない! げど……」


「けど?」


「ご、ごうもんじた……。キミだじのいばじょをぎぎだすだめに……」


「ふむ。聞き取りずらいな。我らの居場所を聞き出すために、ホアキンを拷問した?」


「ぞ、ぞう」


「で、ホアキンは我らの居場所を吐いた。更に、命を助けてもらう見返りに水晶のペンダントをお前に差し出した?」


「ち、ちがう。がれは、はかなかっだ。キミだじのことをざいごまではがながっだ……」 


「ホアキンは我らのことを吐かなかった。そう言っているのだな?」


「ぞ、ぞう。じんだとおもっでいだごえいのおどごがいぎをふきがえしたんだ。そのおどごがキミだじのごどをはいだ」


「殺したと思っていた護衛の男が息を吹き返し、我らの居場所を吐いた」


「ぞ、ぞう。ぞれでほあぎんざんはいっだ。このべんだんどをあげるがら、キミだじにはでをだざないでぐれっで」


「ホアキンは水晶のペンダントを差し出す見返りに、我らには手を出さぬように約束を取り付けた。そうだな?」


「ぞ、ぞう」


「だがお前は、水晶のペンダントを受け取っておきながら我らを襲った」


「……」


「そうだな?」


「ぞ……ぞう」


「ホアキンはどこにいる?」


「ごごがらせいなんほうごう、りごるむらがらみでみなみのへいげんじたいにいる……とおもう」


「ここから西南方向。リコル村から見て南の平原地帯か」


「ぞ……ぞう」


「そうか。情報感謝する。―――ところで」


「うぅ?」


「お前の息は臭くて敵わん。その口を閉じていろ」


 そう言ってメガラは、思いっきりヴァルナーを殴りつけた。


「がッ……」


 その呻きを最後に、ヴァルナーから反応が消失。

 だが死んではいない。気絶しただけだ。


「殺しはしないさ。真実を話せば見逃すと約束したからな。余は約束は守る。お前と違ってな」


 メガラは立ち上がり、アルゴに宣言する。


「すぐに向かうぞ。リコル村南の平原地帯だ!」


「ホアキンさんを探しに?」


「そうだ」


「で、でも……たぶんもう……」


「アルゴよ、そういう問題ではないのだ。ホアキンは余に忠義を示した。ならば余は、その忠義に報いなければならん」


「……分かった」

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