237.二人の術者
土人形の耐久年数は五年。
つまりメガラの寿命は、あと五年ということになる。
しかし、その問題は解決された。
二人の天才術者が土人形の製作と改良に手を貸したからだ。
その結果、土人形の耐久年数は約五十年となった。
この結果に、まだ短いと思う者も居るかもしれない。
だが当の本人は十分満足していた。
「これをお前たちに言うことになる日が来るとはな。だが、確かにお前たちは余の恩人だ。ありがとう、ガブリエル・フリーニ。そして、マグヌス・アストライアよ」
プラタイトの港にて、メガラは二人に感謝を告げた。
「感謝する必要はないわ。私はあの牢獄から出られると聞いてやったまで。全部自分のためなのだから」
「ああ、そうだったな」
メガラはそう答えてマグヌスに目を移す。
マグヌスは言う。
「メガラ・エウクレイア。私に理由を訊かれても答えられん。私自身理解……できていないのだからな」
「そうか……」
と答えて、メガラは息を吸い込んで声を上げた。
「ガブリエル・フリーニ、並びにマグヌス・アストライア。お前たちは世界に破壊と混乱を巻き散らした大罪人だ。厳正なる審議の結果、お前たちには流刑の罰が与えられる」
その発言をここに集った多くの兵士たちが聞いていた。
ガブリエルとマグヌスが暴れ出さぬよう、警備は厳重である。
だが二人の顔からは、そのような思惑は少しも感じられない。
「最後に何か言いたいことはあるか?」
そのメガラの発言に、ガブリエルは答える。
「最後に、あの子と少し会話してもいいかしら?」
ガブリエルはそう言って、メガラの後ろ側へと目を向けた。
「よかろう。アルゴ! こちらへ!」
アルゴは前へと出て、ガブリエルの元へ近づいた。
「ガブリエルさん、これを言うのは変かもしれませんが……お気をつけて」
「フフッ。本当に変ね。罪人に掛ける言葉ではないわね」
「はい。それでも、あなたは俺に協力してくれた。ですから、あなたに感謝を。ありがとうござました」
「ええ……少し複雑だけど、私も言うわ。私との約束を守ってくれて感謝しているわ。ありがとう」
「いえ……」
「最後に言っておくわ。戦争は終わり、大陸に平和が訪れた。だけど、それは仮初の平和よ。本当に大変なのはこれから。だから、頑張りなさい」
「はい、頑張ります」
その言葉にガブリエルは微笑み、メガラに顔を向けた。
「私から言うことはもうないわ」
「承知した。マグヌス・アストライア、お前は何かあるか?」
「いいや」
「よかろう。では最後に余から言っておこう。お前たちは余にとって敵だが、余は心から惜しいと思っているよ。お前たちが味方だったのなら、どれだけよかったことか。ガブリエル・フリーニ、そしてマグヌス・アストライアよ。敵ながらあっぱれであった」
メガラはそう言ったのち、右手を挙げて兵士たちに指示を出した。
兵士たちはその指示に従い、ガブリエルとマグヌスを連行する。
ガブリエルとマグヌスは、待機していた二頭のワイバーンにそれぞれ乗せられた。
ワイバーンの騎兵はワイバーンに指示を出す。
二頭のワイバーンが空へと上昇。
それに続くように、周囲で待機していたニ十体のワイバーンが空へと上昇を開始。
合計二十二体のワイバーンが港から飛び立っていった。
空を見上げながら、アルゴは言う。
「行っちゃったね」
「ああ。アルゴよ、ガブリエルに言われた通り気を引き締めろ。新しき時代にはお前の力が必要不可欠だ。余と共に、時代を切り開くのだ」
アルゴは跪いた。
「我が盟主様。どこまでもお供いたします」




