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少年は魔族の少女と旅をする  作者: ヨシ
第七章

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235.残り寿命

 ついに最奥に辿り着いた。

 最奥もまた四角形の広間となっていた。

 だが地面は石ではなく土だった。


「この土です。これが創始の土ですぞ」


「ふーむ。特別特徴のない土と言うか……余にはただの土に見えるな」


「いえいえいえ。これは魔力を多く含んだ特別な土。これなら、問題なくレディ・メガラの器を造れそうですぞ」


「そうか……ならいい。ロノヴェ、よろしく頼む」


「はい、承りました」 


 土を見つめながらリューディアは言う。


「いまさらだけど、訊いていいかしら? ロノヴェ老」


「いいですぞ、レディ・リューディア」


「その土で造られた体は……どれぐらいもつのかしら?」


「土の体の耐久年数のことですな。つまり、レディ・メガラの寿命を知りたいと?」


 リューディアはメガラに視線を向けた。


 メガラは口を開いた。


「それは余も知りたいと思っていたことだ。だがその前に待て。前提条件として、魂の入れ替えは一度しかできないのだったな?」


「そうです。魂にも耐久度というものがありましてな。魂の入れ替えは魂に負荷が掛かる。普通は一度が限界でしょう。それをレディ・メガラは既に一度なされている。ですので、次が最後となるでしょうな」


 それを聞いてアルゴは尋ねる。


「それを……もう一度やって大丈夫なの? 考えたくないけど、もう一度魂が負荷に耐えきれるとは限らないんじゃ……」


「その点ならば問題ありません。レディ・メガラは魂の強度が尋常ではない。ですから、次も耐えられます。それは保証しますよ」


「そっか……」


 アルゴの肩に手を置いて、メガラは言う。


「聞かせてくれ、ロノヴェ。余はどれぐらい生きられる?」


「申し訳ありません、レディ・メガラ。最初にそれを伝えるべきでした。吾輩、好奇心に突き動かされてそれを伝え忘れておりました。そうですな……適合性や環境にも左右されるゆえ断言はできませんが……長くて八年……いや、五年といったところでしょうか」


「五年……」


 それを聞いてアルゴは声を上げる。


「ま、待ってくれ! それは短すぎる! もう少し何とか……何とかならないの!?」


「申し訳ありません。本来の吾輩ならともかく、この身でそれ以上は……」


「諦めないでくれ! 俺にできることならなんでもするから!」


「アルゴ、よいのだ」


 メガラは首を振って続ける。


「余はあの戦で一度死んだ身。本来、余がこうして生きてること自体が奇跡なのだ。だというのに、レイネシアに体を返した上で、あと五年も生きられると言う。これ以上を望むのなら、それは傲慢というものだろう」


「……」


「そんな顔をするな。逆に考えろ。あと五年もあるのだぞ? 余とお前が旅をした時間はもっと短かったはずだ。それなのに世界はあの時と大きく変わった。その短い時間で……余とお前で、世界を変えたのだ。であれば、五年はむしろ長すぎるぐらだと思わないか?」


「そう……なのかな……」


「そうだ。だから顔を上げろ。前を向け。お前はこれからも進み続けろ」


「……うん。分かった」


「いい子だ」


 お互いを思い合う二人の様子に、ロノヴェは別の姿を垣間見る。

 それは、金髪の皇帝と銀髪の美女の姿だった。

 その姿が幻影のようにだぶって見えた。そして、次の瞬間には消えた。


「諦めるのは……まだ早い……」


 独り言がロノヴェの口から漏れ、それにアルゴが反応した。


「ロノヴェ? どうかしたの?」


「サー・アルゴ、そしてレディ・メガラ。まだ諦めるのは早いかもしれません」


「え? それはつまり……なにか手があるってこと?」


「吾輩一人でなんとかしようするから無理なのです。ですが、この世界には居るではありませんか。神代を生きた凄腕の術者たちが」


 ロノヴェはそう言って、フクロウの瞳をメガラに向けた。

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